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NARUTO日向ネジ短篇

作者:風亜
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【その在り方】

 
前書き
 アニメBORUTO138話を元にしていますが、内容は大分異なります。 

 
「……ねぇねぇ、たしかもうすぐヒアシおじいちゃんの誕生日だったよね?」

 日向家の居間でヒマワリは母のヒナタと叔母のハナビと談笑していた。

「あら、覚えていたのヒマワリ?」

「うん、去年おじいちゃんのお誕生日会できなかったし、今年はできるかなぁって」

「孫娘が誕生日会しようって言ったのに、父上は去年断ったものね。今年も……多分そうなるんじゃないかしら」

「どうしてかなぁ、おじいちゃん誕生日いやなのかな」


 ヒマワリの疑問にハナビが答える。

「嫌って事ではないと思うわ。ただ……父上だけの誕生日じゃないからね。──もう亡くなっているとはいえ、双子の弟のヒザシ叔父上の誕生日でもあるから、安易にそういうのは控えてるんじゃないかしら」

「そっか……わたしとお兄ちゃんのもう一人のおじいちゃん、ヒザシおじいちゃんの誕生日でもあるんだね」


 ヒマワリの言葉にどこか申し訳なさそうに目を伏せるヒナタ。

「ええ、そうね……ボルトとヒマワリにとっては、大叔父さんね」

「それにネジおじさんの、お父さんなんだよね」

「そうよ。……私が産まれる前に亡くなられたから私はお会いした事はないけれど、里や一族の為に命を賭した立派な方だったと聴いているわ」

 そう言ってハナビは湯呑みの中の茶をじっと見つめた。


「お母さんは、ヒザシおじいちゃんに会ったことあるの?」

 ヒマワリの問いに、ヒナタは一瞬言葉に詰まる。

「お会いした事は……、あると思うわ。ただ……申し訳ない話だけど、よくは覚えていないの」

「そうなんだ……」

「仕方ないわよ、姉様はその当時三歳になったばかりだそうだし……」

 ハナビはフォローを入れたつもりだが、それ以上は言葉にならなかった。

「ネジおじさんとお母さんは、ひとつ違いなんだよね」

「えぇ……、ネジ兄さんが四つの時に、お父上のヒザシ様が、亡くなられて───」

 ヒナタもそれ以上言葉が続かずに俯く。


「えっと……おじいちゃん、今何してるんだっけ」

「父上なら、道場の方で瞑想していると思うわ」

「……わたし、おじいちゃんのとこ行ってくるね」

 ヒマワリは母のヒナタと叔母のハナビから離れ、祖父のヒアシの元へ向かった。



 ……祖父は坐禅を組んで眼を閉ざし瞑想しており、気軽に話し掛けられる様子ではなかった為、道場入り口で覗き見るような姿勢のままどうしていいか分からず祖父を見つめていたが、その視線に気づいてかヒアシの方から孫娘に声を掛ける。

「どうしたんだいヒマワリ、おじいちゃんに何か用かな?」

「あ、うん。えっとね……」

 若干気後れしつつヒマワリは祖父の元に近寄る。

「おじいちゃん、もうすぐお誕生日でしょ? 誕生日会できないかなぁって」

「はは……、気持ちは嬉しいがそこまでする歳でもないし、わしだけの誕生日ではないからなぁ」

「じゃあ、ヒザシおじいちゃんの分まで一緒にお祝いすればいいんじゃないかな」

「ふむ……、それもそうかもしれんが、既に亡くなっている弟の誕生日を祝うというのも違う気がしてな……」

 ヒアシはふと目を伏せる。


「ヒザシおじいちゃんって……どんな人だった?」

「──家族想いの優しく、強い弟だったよ。わしなどよりずっとな。わしの身代わりとなって、死なせてしまったようなものだ。その息子のネジも……大戦で死なせてしまった。弟の息子は、死なせてはならなかったのに」

 独りごちするように呟くヒアシ。

「ネジおじさん、わたしとお兄ちゃんのお父さんとお母さんを守って死んじゃったんだよね」

「うむ……大切な仲間を、その身を挺して庇った。わしは……私は、弟も甥も守れなかった。日向当主として、一族の仲間として……私が死ぬべきだったというのに。せめてネジだけは……、死なせずに大戦後に分家の出ながら次期当主に据える事で、我が弟のヒザシに報いたかったのだが」

 ヒマワリは祖父の独りごちのような話に対して何と言っていいか分からず黙って聴いている。

「宗家の白眼を守る為という名目で分家に強いた呪印制度……今でこそ廃止されているとはいえ、未だ額には死してしか消えぬ呪印の跡を残した分家の者達が居る。その者達の“生きる自由”は既に保障されているが、その中にネジも居るべきだった。ヒザシが本当に守りたかった、生きて欲しいと願った息子のネジ自身が“自由の死の選択”ではなく“生きる自由”こそ、意味があったのだ。……その意味を奪ってしまったのは他でもない、我が宗家だ。だからこそ、私は弟のヒザシや甥のネジの分まで生きねばならぬ。──過去の後暗い業を、背負いながらな」


「……ヒアシおじいちゃんは、幸せじゃいけないの?」

「いや……、孫二人に恵まれて十分幸せは分けてもらっておるよ。それ以上は、望まぬよ」

 ふと微笑したヒアシは、ヒマワリの頭を優しく撫ぜた。



《終》



 
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