ソードアート・オンライン〜Another story〜
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オーディナル・スケール編
第271話 ちゃんと鍛えないと!
前書き
~一言~
大変遅くなり申し訳ございません……。ちょっと今年の3月から病気が見つかり入退院をしておりました。オマケにPCが壊れるという不運。ちょっと今年は最悪な年でした……。。。
何とか、身体も回復してる様なので、不定期とはなりますが、更新再会しようと思います。遅くなってしまい、申し訳ございません。
じーくw
「え、えっと! えへへ。そーだ! キリトさんやリュウキさんたちもユナのライブ、行きますよねっ!」
散々褒められに誉められたシリカは、誤魔化すかの様に話題を変えた。
勿論、その話題は今注目に注目しているユナのライブ。自分自身も当然ながら参加の一択しかないので、好都合と言えば好都合。高確率で話題も逸れるし一石二鳥である。
話題を振られたキリトやリュウキ。とりあえず、この場に来たばかりなリュウキは、少しだけ反応が遅れた為、キリトが先に返事を……と言うより声を出した。
「あ、うん。どうしようかな、って。オレ そこまでファンって訳じゃないし。リュウキはどうだ? ファンだったりするのか?」
「ん……。最近話題のか……。ここの所は別件で忙しかったからな。あまり拝見は出来ていない。オーグマーに関してなら色々と答えられると思うが」
男性陣はどうやらそこまでの熱は持たない様だ。
ユナの熱狂的なファンで男性……と言えば、仲間内で言えばクラインくらいなものだろうか。その歌声は勿論、愛くるしい容姿にも惹かれて、多くの男達の心をわしづかみにして~ と言うキャッチフレーズが ネット内で色々と飛んでいるというのに、この二大鈍感男達は、靡いていない様だった。……其々にパートナーがいるから、と言う理由も勿論大きいと思うが、それはそれで非常に複雑なのがシリカを始めとする女性陣。
「なら、皆で一緒に行きましょうよ! ユナの歌声を前にしたら、きっと心躍りますって! レイナさんも一緒に謡ったらとても素敵だと思いますっ!」
「え? わ、わたし??」
「そうですっ! なので、リュウキさんもキリトさんも一緒に行きましょう!」
物凄く強引なシリカ。いと珍し……だが、これには色々と訳があったりするのも後々の話。
「気が向いたら、かな」
「予定も見ておく。前向きに検討をするよ」
曖昧な返事のキリトとスケジュールを確認しているリュウキ。なんだかんだで、リュウキが行くなら、キリトも参加しそうな気がするので、シリカの強引さに軍配が上がりそうだった。
キリトは、オーグマーをそっと手にした。
目の前に広がるのは紛れもなく現実。……だが、スイッチ1つで、その現実の世界が拡張されていくのが判る。
現実ではありえないまるでダンジョン、洞窟の風景や、ありえない生物……ドラゴン。色々なファンタジー世界がこの場に集っている。
「確かに、面白いガジェットではあると思うな。……でも、オレはフルダイブの方が良いかな」
「……現実じゃ身体を鍛えないといけないから、か?」
「ッ……! 違う違う、あの世界に3年も浸っていたんだぞ?」
ボソリと横で呟くのはリュウキだった。即座に否定するキリトだけど、強ち全部違うとは言い切れなさそうだ。その様子を見ればよく判る。
その答えは ユウキ達が切り出した。
「えっへへ~ ボクたち リーファに聞いたもんね~」
「ですね。キリトさんの事、心配してましたよ? 最近お身体がなまっている、運動不足だ、と。心身ともに健康なのが一番ですよ、キリトさん」
「うぐぐぐっ、す、スグのヤツよけーな事を……」
現辻世界の拡張であるARは当然ながら、仮想世界と違って 無茶な動き等は出来ない。当然身体能力に依存される。手に持つ武器は当然仮想のものだから、重量は感じないから振り回す分には問題ないが、移動速度や高低差を生かした攻撃など、当然ながら出来るのにも限度がある。無茶な事をしようものなら、当然ながら警告音が流れ、中断させられるので、安全装置はばっちりだ。
多少の怪我等の報告はあるが、重傷者は今のところ0.
これも当然だが、そこまでの無茶な事をする者などいないから。
「う……、で でもだな、スグは全国クラスの剣道少女なんだぜ? 並ばそうと思っちゃいないかい?」
「そうでもないよー、キリト君。だって、ほら オーグマーにも体力測定の項目、あるでしょ? 平均的な数値が出るから、それを目安にしてる~ って直葉ちゃんいってたよ」
「あ、それはレイだけじゃなくって、私も聞いたわよ、……キリト~ ひとのカロリーとか、警告してる暇なんて、ないんじゃないのっ!!」
レイナやリズが追撃を入れる連携。なんだかんだで、リズは私怨が入っている様だが、それはそれ、これはこれ、である。
「キリト君も言ってたじゃない。……リュウキ君に負けない様に、って。それって 文武両道を目指すって事じゃないのかな?」
横でにこやかな笑みを零すアスナ。
キリトは、ぐさっ、と剣が突き刺さった気分になった。
直ぐ横で涼しい顔をして、スケジューラーから今後の予定をはじき出しているリュウキを目にする。
この完璧超人の実力は仮想世界では飽き足らず、幻術世界にも進出しているのだから、驚きを通して呆れ果てる。
元々の才は、現実世界で再開してから もう判り切っている事ではあるが、身体面はまた別だ。 体格は殆ど同じなのに、運動神経まで、キリト自身の余裕で超えるとは如何なモノなのか! と嫉妬を向けるキリトだったが、それも一瞬。
リュウキがどうして、頭脳だけに頼らず、身体も強くなろうとしたのか、その理由をキリトも知ってるから
それでもやっぱりやきもちを妬くくらいは許してもらいたい。
「ごほんっ。それは置いといてだな。皆だってわかるだろ? オレ達はずっと違う世界にいたんだから」
「それは、判らない、って言う訳ないじゃない。……でも また戻りたい、なんて言わないでよね?」
「はぁ……。言わないって、そこまではさ」
「なら、リュウキ目指してドーーんと当たって砕ければ良いのよ!」
「いたっ!」
バシッ、とリズに背中を叩かれたキリト。痛みは身体に走るが、横で苦笑している男に負けない様にはっぱをかけられた、と言えば悪い気はしない。
せめて背中くらいは見える位置まで 踏ん張る事にしよう、と過小評価とも言われかねない自己分析と目標をセットして、キリトは姿勢を正すのだった。
「ん。とりあえず、ユナのライブの日は問題なさそうだ」
「ほんとですかっ! じゃ、じゃあ私と一緒に参加を……」
「わたしたち、だよっ! シリカちゃんっ!」
「わ、わかってますって~」
リュウキの手を取ったシリカ。渡すまい、と腕を取るレイナ。
世の男性からは 恨みつらみの籠った視線を、よく知る仲間達からは、またやってる、と言うのんびりとした表情を向けられる。
「はは。ん、そうだ。キリト、仮想世界と言えばアインクラッドだろう?」
「は? まー 確かに。ALOもカーディナルのコピーだし、他の世界もあの種から生まれたんだから、その根源を辿ればあの城が浮かぶよ」
「だな。数日前の事だ。オーディナルスケールに アインクラッドのBOSSモンスターが降臨したらしい」
「ッ!? それ、本当か?」
「ああ、間違いない。ギリギリの参加、見つけた者だけスコアが2、3倍増。色んな好条件有り、更にはランキング制。点を欲するユーザーたちは隠したがる。更に運営側からもクローズされてる案件ときた。……が、100%隠すなんて無理だろ」
指先を動かして、操作し この場の皆限定で見える様に可視化。
皆息をのむ。その姿、忘れる筈もないから。
参加した者もいる。……そして、参加しなくとも初めての層のBOSS。到達、踏破するまでに3000をも超える死傷者を出すまでに至った最初の門番。
「インファング・ザ・コボルドロード……」
「久しい……だろう。良い思い出とは言えないが、あれだけの犠牲を出した世界を再び具現化した。狙いはまだ判らんが、熱狂的なファンもいる事も事実。……オレも複雑とはいえ、な」
苦い顔をするリュウキ。
ファン、とまではいかないが、あの世界で沢山得る者があり、学ぶことがあり、……そして、最愛の人を、大切な友人を得た。人生の岐路だと言っていい世界。世論では色々と物議を醸しだしそうな話題だが、直に首を横には触れない事情がある。
「最初は何かのプロモーションかな? って思ってたのに、本当だったんだ」
「ギリギリまで開示されてなかったしね。更にリュウキのコレも加工とかじゃないんでしょ?」
「ああ。その点は大丈夫だ」
食い入るように見つめる。
そこで手を上げたのはユウキだった。
「ボク、コイツやっつけたい!」
「何言ってるのよ、ユウ。もう倒されちゃってる筈でしょ?」
「あ、そっか……、で、でも VRとARを合わせて、ボクたちも参加できる様になったんだからさ。……あの世界でキリトやリュウキ達も戦ったんでしょ? もう全然違うのは判ってる。でも、少しでもボクは感じてみたいし、一緒に戦いたいんだ」
ユウキの熱意は伝わる。当然、その気持ちはユウキだけでなくリーファやシノンだって持っている。あの世界で共に戦いを経験していないメンバーは大小なりと。
「うぅ~ん、ユウキの気持ちは判るんだけど、さっきも言ったようにギリギリまで情報でないからねぇ。足の無い私達には難しいんだよ、これが」
リズの言葉に ぴくんっっ と反応するのはアスナとレイナ。
「「ふぅ~ん」」
にこっ、と笑いながらキリトを2人で見た。
流石は双子と見紛う程似てると称される姉妹。その振り向くタイミングや笑顔のシンクロ率はヤバいの一言だ。
「移動手段があれば、良いって事かぁ~」
「だね~ 、おねえちゃん~。だいじょーぶだよね~」
この場で交通の移動手段持ちなのはリュウキとキリトの単車。
リュウキは全然問題ない、と構えている様だが、キリトはそうはいかない。
先ほど誤魔化したのだけれど、まだまだ身体が付いていかないのは言うまでもないことで、いきなり、因縁のBOSS戦を一緒にして、散々な目にあった日には、……精神的ダメージが非常にきついからだ。伸ばした手が陽炎だった……なんて、洒落にもならない。
後ずさるキリトだったが、ここで追い打ちをかけるのは この場のメンバーではなく、いないメンバーの筈のクラインだった。
『羨ましすぎるんだよ、こんちくしょーーー!!』
と空から見てる? かの様な見事なタイミングで、キリトとリュウキに『OSのBOSS戦やろうぜー!』 と、メッセージが。
キリト以外の全員(リュウキは除外)の意見と行動が一致。
ぽんっ、とキリトの肩を叩いて皆が笑顔。
「キリト~~」
「キリトさ~~ん」
「「キリトく~~ん」」
「がんばろーー」
「ご一緒させてください」
皆それ以上言ってないんだけど、その顔には、これを機に、運動しましょうね? と大きく言われてる気がした。
「パパ、私がパパ訓練プログラム、しっかりと作成しますっ」
更にいらん世話をやいてくれる出来過ぎな娘の笑顔。
……ここまで言われちゃ、やらない訳にはいかないだろう? と無言なリュウキ。
八方ふさがりである。……が、キリトも男だ。
「わ、わかったよ。行くから」
しっかりと腹はくくった様子だった。
それに、アインクラッドのBOSSモンスターが出現ともなれば、例えオーディナルスケールとは言え、現実拡張とは言え、気にならない筈がないから。
「前回は、告知の30分後に開催した、との事だ。全員参加は難しいかもしれないが、準備はしておく」
そして、我らが勇者様はやはりいう事が男前だな、と深くキリトはため息を吐くのだった。
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