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社長の息子

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第三章

「それと変な遊びもするなってね」
「シンナーとか煙草とかか」
「あと東京だとドラッグマジであるな」
「この山梨はちょっと離れてるけれどな」
「悪い遊びってあるよな」
「それこそ信玄公や柳沢様みたいな」
 武田信玄そして江戸時代に徳川綱吉に仕えた柳沢吉保のことだ、二人共山梨では名君として知られているのだ。
「立派な人になれってね」
「それで会社を継いでか」
「ちゃんと経営してか」
「そうしていけって言われてるんだな」
「うちは八条グループとよくしてもらってるけれど」
 世界屈指の巨大企業グループだ、拠点は神戸にある。
「八条家の人達にもね」
「失礼がない様にか」
「そう言われてるんだな」
「何かと大変なんだな、社長の息子も」
「経営者になるっていうのも」
「そのことは自覚してるよ」
 壮馬自身もというのだ。
「プレッシャーは感じてないしそれは感じるとかえって駄目だとも言われてるけれど」
「それでもか」
「ちゃんとした人になってか」
「ちゃんと勉強しないといけない」
「人も見極められる様にならないといけない」
「そのことは自覚しているんだな」
「僕としてもね、そうしてやっていってるよ」
 こう友人達に話すのだった、そして実際にだった。 
 壮馬は将来会社を継ぐ者として穏やかで確かな人格としっかりとした人の見極め、そして経営学や経済学に山梨県や日本の現状も学んでいった。
 その中でだ、立派な和風の家の中で彼は祖父の哲章に言われていた。白髪は混じっているが髪の毛はふさふさとしていて真ん中で分けている、七十近いが男を感じさせる顔立ちで声は顔立ち以上にそうだ。細い目と太めの眉と逞しい口元以上に声がそれを感じさせる。背は一七二程でしっかりとした背広が似合う体格である。
 その彼がだ、孫と共に立派な部屋でテレビを観つつこんなことを言っていた。
「テレビを観るのも勉強だがな」
「それでもだね」
「出ている人間のことは何でも鵜呑みにするな」
「テレビに出ていてもだね」
「おかしなことを言っている者もだ」
 そうした輩もというのだ。
「多いからな」
「今言ってるだね」
「諸井弓月か」
 作家という肩書の女を見て言うのだった。 
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