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学校のお庭番

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第六章

「これからも頑張っていくな」
「そうしてね、あとね」
「何だ?」
「このお饅頭いいわね」 
 従妹は彼が持って来てくれたそれの話もした。
「随分と」
「ああ、いいだろ」
 諸星も笑顔で応えた。
「この饅頭は」
「何処で買ってきたの?」
「山月堂だよ」
「ああ、あそこね」
「あそこの和菓子はどれも美味いけれどな」
「そのお饅頭がなのね」
「これまで食った中で一番美味くてな」
 和菓子のその中でもというのだ。
「それでだよ」
「お土産に買ってきたのね」
「俺も食う為にな」
 諸星もその饅頭を食べつつ話す。
「それでだよ」
「そうなのね」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「学校にいる時もおやつで甘いもの食ってるけれどな」
「このお饅頭にしても」
「最近女房に言われるんだよな」
 ここで諸星はぼやいた顔で話した。
「甘いものには気をつけろってな」
「ああ、甘いものはね」
「糖尿病があるだろ」
「それね」
「だからな」
 それでというのだ。
「言われるんだよ」
「少しずつにして食べ過ぎないといいでしょ」
 従妹は彼の話を聞いてこう返した。
「そうでしょ」
「それがいいか」
「一個位にして」
 数を少なくしてというのだ。
「そうしてね」
「食べればいいか」
「そう、甘いものは確かに糖尿病になるから」 
 だからだというのだ。
「それでよ」
「数を少なくか」
「そうしていけばいいのよ、長い間このお仕事続けたいでしょ」
「折角働いてるんだからな」
「だったらね」
「ああ、糖尿病にならない為にな」
「そこは気を付けてね」
 こう言ってまた饅頭を手に取ろうとした、だが。
 従妹はここで手を止めて諸星に言った。
「私も気をつけないとね」
「お前もか」
「そう、私も糖尿病になるからね」
「お互いにか」
「気をつけないとね」
「学校のことだけじゃないな」
 諸星は笑って述べた、そうしてだった。
 彼は饅頭を食べるのを止めてお茶を飲んだ、そのうえで従妹に用務員の仕事のことをさらに話したのだった。


学校のお庭番   完


                  2019・12・26 
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