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クーぐだ♀ワンライまとめ

作者:秌薊
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第5回 食欲の秋(プニぐだ♀)

 
前書き
旧とこっそり深夜飯する話(1,400文字程度)
※別シリーズの焼きおにぎりではありません
 

 

 明るい時間帯には概ね賑わっているのはずの食堂は、非常灯のみがぼんやりと光っているだけの暗い一画だった。日付はとっくに変わってしまっているのだ、当然のことである。

「よかった、クーが居てくれて。ありがと」
「? いいってことよ」

 一人なら寂しすぎて――きっとすぐに踵を返していただろうから。そんな本音は心の奥に仕舞い込んで、傍らに立つサーヴァントの腕を引く。さあ、お手軽クッキングの時間だ。

「クー、手伝ってくれる?」
「おう。眠気覚ましにやってやるよ」

 冷凍庫から発見した二人分の白米を解凍し、少し熱めになるまで温める合間にツナマヨを作る。手持ち無沙汰にしている彼には、焼き海苔を軽く炙った後、振りかけ用に砕いてもらうよう頼んだ。お菓子などでは満たされないこの空腹を宥めるために選んだのは、ツナマヨ丼である。その名の通り、ごはんの上にツナマヨを乗せるだけ。夜食にはもってこいな一品だ。ビニール袋越しにぱりぱりと千切れていく海苔の音を聞きながら、手早くツナマヨを混ぜ合わせていく。顆粒と液体のダブルだしにするのがポイントだ。

「っし、完成~」
「おー」

 熱々の米を手頃な丼ぶりへ移し替え、しっかりと馴染ませたツナマヨを中心部に乗せ、最後に海苔を散らす。湯気と共に白米と海苔の香りがほんのりと立ち上る。おいしそうに出来上がった。ふんふんと匂いを嗅いでいるランサーを促して、夜食タイムのスタート!

 そうそう、この味だ。塩気と甘みと油分、この組み合わせは最高な上に炙ったおかげで香ばしさがプラスされる海苔もマッチして、しあわせ。三口目を飲み込んでから、ほぼ同じタイミングで食べ始めていた彼を伺う。

「クー、どう?」
「うまい」

 自分とは違い、米の表面全体にツナマヨを伸ばして端からかきこんでいたらしいランサーの持つ器を覗き込めば、残りはもう半分もない。口に合ったのだろう、言葉少なに食べ進めていく様子を目にし、頬が緩む。やっぱり食事は誰かと一緒がいいなあ。

「マスター、それいらねえならくれよ」
「えっ! ダメ、これわたしの」

 僅かな隙に完食した彼が顔を近付けてきて我に返る。慌てて丼ぶりを自分の口元へ引き寄せ、湯気が少なくなった中身を思い切ってかき混ぜた。ちょっと行儀が悪いけど、いいか。胸の内で言い訳しながら、隣の彼を真似てツナマヨ丼を目一杯頬張った。

「はー、おいしかったー」
「ごちそうさん。ところでマスター、」
「満たされ、ん? なに?」

 心地よい食後の感覚に浸っていると、布巾片手に洗い終えた食器を待つサーヴァントの不思議そうな声。曰く――こんな時間に食ったら太るんじゃねえの? と。

「クー……そういうことは思っても言わないものだよ」
「は? いや、しかも米だし」
「いいの! 食欲の秋! 秋はおいしいものがいっぱいなんだから!」

 半眼で睨むも痛いところを突いてくる。流石はランサークラス、などと現実逃避をしつつ水道を止める。彼が拭き終えたものを片付けて撤収すれば、ミッションクリア。

「他にどんな食いもんがあんだ?」
「? あ、さっきの」
「ああ」

 先程強めに主張したことが気になったらしい彼からの質問に頭を捻る。マイルームに戻るまでの道すがら、他愛もない会話だ。思い付いたままに列挙していくと、新たな食欲をが湧きそうになるからいけない。これはまた今度も付き合って責任を取ってもらわなければ。
 密かに考えながらあれやこれやと交わした話は、どういう訳か筒抜けで。翌日にキッチン組だけでなく多方面からの追求が待ち構えていようなどと、知る由は無かったのであった。
 
 
 
 
 
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