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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep43オラシオン・ハルディン~War in a Line of defense~

“オラシオン・ハルディン”の中央にそびえたつ、“女帝の洗礼”。その管制ルームの中央に位置する球状のAIコアは、淡々と全ての防衛砲塔、“騎士の洗礼”や砲台“アインヘリヤル”を操作し、管理局の艦隊へと砲撃を撃ち続ける。
そんな管制ルームにこだまするのは、傍受されている両勢力の通信。特に激しいのは、空で戦う“アギラス”と航空部隊の通信だった。

『忘れるな。生き残ることが、勝つことだぞ!』

『大丈夫だ。俺たちには心強い味方が、特務六課がついてる!』

『オメガ隊、シグマ隊、アルファ隊に負傷者32! 医療専用艦(インヴォーク)へ搬送!!』

『オスカ一尉が墜とされた!? 誰か、指揮を引き継いでくれ!』

≪ハハハ。墜ちるのは怖いか、人間?≫

≪我らとのドッグファイトで勝てるつもりなのか? 人間風情が、我らの餌食となれ≫

魚座部隊(ピスシス)12、双子座部隊(ヘーミニス)3・5・10が撃墜された≫

『見たか、この野郎!!』

『管理局を甘く見るなよ!!』

≪うろたえるな。単なる偶然の差だ。勝敗の先送りにすぎん≫

『くそっ、こんな規模の空戦はJS事件以来だ!』

≪なんてことだ! あの2体のデカイ怪物に、すでに5機以上墜とされたぞ!≫

『俺たちは世界の平和のために飛んで戦っているんだ! 邪魔をするな!』

≪お前たちの言うその平和の下、あらゆる世界で今も血が流れている≫

≪それを食い止めようとしているのは我々も同じだった≫

≪だがお前たちが俺たちを裏切った≫

≪ゆえに、こうして血で血を洗うバカな戦争が始まった≫

『なら、どうして始めから管理局と手を取り合わなかった!?』

≪組織内部で醜い争いをしている管理局に、誰が協力を求めるか?≫

≪理想だけでは血は止められんし、争いも無くならない≫

≪こうなってしまった以上、どちらかが完全に滅ぶまで戦うしかないのだよ、人間≫

≪理想だけで空を飛ぶと死ぬぞ、青二才≫

≪どこまで我ら(アギラス)とやりあえるか、空戦で確かめさせてもらうぞ≫

『バカ野郎どもが・・・!』

『俺たちの飛び方を貫けばいい、それが俺たちの勝利へと繋がるのだから』

熾烈を極める空戦。両勢力に被害が続出していた。地上もまた激しい戦いを繰り広げている様子が通信から窺えた。

≪管理局所属艦1隻の撃沈を確認。引き続き、騎士の洗礼及びアインヘリヤルによる砲撃を続行≫

“女帝の洗礼”の管制システムが戦況を告げる。管理局のL級艦船“シャノン”が、“騎士の洗礼”の一撃によって“アドゥベルテンシアの回廊”に沈んでしまっていた。
戦場となっている“アドゥベルテンシアの回廊”で続いている管理局・“テスタメント”、二大勢力の戦争。

≪管理局所属大型艦、さらに一隻の撃沈成功≫

戦況は“特務六課”と協力者たちの力によって、徐々に管理局側へと傾きつつあるが、“テスタメント”側もまた、ただでは負けていなかった。今度は大型のXL級艦“センチュリオン”が煙を立てながら沈んでいく。

≪チャージ完了。照準、時空管理局支局。照準座標調整・・・クリア。砲撃術式効果を物理破壊に設定開始・・・クリア。砲撃準備完了。洗礼の一撃・・・発射≫

放たれる次元跳躍砲。目標は次元空間内にある管理局支局。上空へと一直線に向かい次元跳躍しようというところに、洗礼の一撃へと迫る3発の特大砲撃。
衝突。洗礼の一撃の射線がわずか数度といえど本来の軌道から逸れてしまい、次元跳躍することなく天へと消えていった。
管制システムにエラーが発生する。不発に終わることなどなかったために、演算システムに異常が生じていた。

≪全システムを強制再起動。チャージを再開。目標は同じく時空管理局支局に設定。次弾の射線を変更。直上に砲撃を掃射、妨害を受けないように次元転移させる≫

管制システムは再び次元跳躍砲、洗礼の一撃を放つためにエネルギーをチャージし始める。

†††Sideキャロ†††

「ホントにシャルさんの言うとおり上手くいっちゃった・・・」

わたしはフリードの上で、“女帝の洗礼”の次元跳躍砲の軌道を逸らすことに成功したことにビックリする。地上に降ろしたエリオ君の代わりにフリードに乗ることになったルーちゃんも驚いているみたい。

『キャロ、ルーテシア、ありがとう!』

そんなわたし達の元にシャルさんから通信が入る。シャルさんの言う作戦。それはついさっき、わたしとルーちゃんに言い渡されたもので、ヴォルテールと白天王の全力砲撃を次元跳躍砲にぶつけて相殺するというものだ。相殺は出来なかったけど、軌道を逸らして次元跳躍だけは防げることに成功した。

「あ、はい。でも相殺は出来なかったんですけど・・・」

『あー、いいよいいよ。次元跳躍さえ防げればいいんだから。キャロ、ルーテシア。ヴォルテールと白天王はこのまま女帝の洗礼の砲撃の妨害をお願い。それと、余裕があれば艦隊を狙ってる砲撃も相殺、もしくは軌道を逸らすようにお願い』

「「了解です!」」

通信が切れる。シャルさん達は今“スキーズブラズニル”の殲滅を行っているはずだけど、それにしてはすごく余裕そうだった。やっぱりエースクラスの魔導師、すごいとしか言いようがない。
わたしとルーちゃんは頷き合って、早速ヴォルテールと白天王に指示を出す。狙いは、今現在、管理局の艦隊を狙う砲撃群。

「「撃てぇぇぇぇぇぇッ!!」」

一直線に向かうヴォルテールと白天王の3発の砲撃は、艦隊に向かっていく砲撃の内2発を相殺した。これはいける。ルーちゃんはわたしに振り返って「わたし達、もしかして英雄・・・?」と少し興奮気味に微笑みかけてきた。

「そうかも・・・!」

何となくわたしはそう答えた。英雄になるつもりもないし呼ばれたいわけでもない。だけど、仲間を助けることで英雄になるのなら、わたしは英雄になろう。

≪おのれ、六課の竜召喚士!≫

≪六課の魔導師は生かして帰すな。確実に仕留めろ≫

そんなわたし達の乗るフリードに、また“アギラス”が後方から迫りくる。彼らの通信が聞こえる。わたし達を撃墜、殺すのだと。わたしはルーちゃんに「掴って!」と告げ、フリードに迎撃に移るようにお願いする。
フリードは一鳴きして大きく反転、こっちに向かってくる“アギラス”3機の真正面から突撃する。

「「いけぇぇぇぇッ!!」」

――シューティング・レイ――

――トーデス・ドルヒ――

“アギラス”の弱点、エアインテークへと射撃魔法を撃つ。だけど、わたし達の攻撃はエアインテークを外れて、AMFによって掻き消された。高速ですれ違う。反転速度はフリードの方が遥かに上。

「フリード! ブラストレイ!」

今さらこっちに機首を向けた“アギラス”に指を差して、フリードに火炎砲を撃たせる。“アギラス”3機は回避行動を執るけど、その内の1機が避けきれずに呑み込まれた。他の2機はそのままわたし達へと向かってきて、砲撃に呑まれた“アギラス”も爆炎を突き破って姿を現した。
3機の前面にヨツンヘイムの魔法陣が展開される。わたしとルーちゃんも、もう1度射撃魔法をスタンバイ。

≪≪≪消えろ!!≫≫≫

「ウイングシューター!」「パンツァー・ウム・ライセン!」

そして向こうが砲撃を撃つより早く高速射撃魔法を撃つ。わたしの高速シューターは、1機のエアインテークの両方を撃ち抜いた。“アギラス”は≪バカな・・・!≫っていう驚愕の声と一緒に爆散した。
そしてルーちゃんも、ティアさんの使うヴァリアブルシュートと同じAMFを貫通することが出来る多重弾殻射撃魔法で、残りの2機のエアインテークを破壊、その内の1機も爆散した。そしてもう1機、エアインテークから火を噴いているにも関わらず、そのまま突っ込んできた。

≪これで勝ったと思うな! 勝負はまだついていな――≫

――紫光掃破(ハーツイーズ・ドライヴ)――

「わたしが居る限り、2人には手を出させないよ・・・!」

苦戦を強いられていた航空隊の支援から戻ってきたレヴィちゃんの一撃で、最後の1機も爆散した。
レヴィちゃんはフリードに「ちょっとごめんね」と一言断りを入れてから背中に降り立った。

「ルーテシア、キャロ、ケガない? 大丈夫だった?」

わたしとルーちゃんに心配の声を掛けてくれた。もちろん無傷なわたし達は「大丈夫」って答える。レヴィちゃんはわたし達の身体を見回して「良かったぁ」って安堵の息を吐いた。

「それなら、今度はみんなでひと暴れしようか・・・!」

†††Sideキャロ⇒スバル†††

目の前で何隻もの“スキーズブラズニル”が沈んでいく光景に、あたし達地上班と地上部隊は唖然。

「やっぱりすごい・・・」

あたしたち全員の思っていることを代表して口にしたのは、さっき合流したエリオ。
ギン姉たちはもちろん、お母さんとティーダさんさえも“スキーズブラズニル”が簡単に撃沈されたことに驚いてる。

「最後の1隻が沈むぞー!」

「すげえ・・・」

「あれが、特務六課のエース・・・!」

そして最後の1隻が、あたし達と“オラシオン・ハルディン”の間に落ちていく様に、地上部隊のみんなが歓声を上げた。
そんなあたし達地上班は、“テスタメント”の地上戦力の“ガジェット”と、武装した構成員たちとの戦闘を地上部隊に任せて、後方をついて歩いている。
“オラシオン・ハルディン”攻略の一端を担っているために、地上部隊の前線隊長さんから魔力と体力を温存するように言われたからだ。
それに、“ヴォルフラム”であたしたち“六課”の全体指揮を執る八神部隊長からも通信でそうするように指示を出されてる。

「六課って、なんていうか凄過ぎっスねぇ」

“ライディングボード”の上に胡坐をかいて座るウェンディが、沈んでいく“スキーズブラズニル”から脱出したシャルさん達を仰ぎ見てそう呟いた。

「六課って言うよりも、なのはさん達やシャルさんがすごいんだと思うけど・・・」

「そうね、あたし達には無理だわ・・・単独であんなの墜とすなんて・・・」

あたしとティアはそれに対してそう返して、ちょっぴり落ち込む。
「今の二人の実力なら十分に墜とせると思うけど」

「僕もそう思うなぁ。あの崩壊の感じからして、スキーズブラズニルのコアを直接叩いたと思う」

「だからあんなにも綺麗に崩れていくんだから」

でもそれに反論するのがお母さんとティーダさん。お母さんはあたしを、ティーダさんはティアの頭をポンポンと叩いた。するとウェンディが「あたしもやってほしいっス!」と、また騒がしくなる。
お母さんは「はいはい♪」と嬉しいそうにウェンディの頭を優しく叩いた。ギン姉たちも声には出さないけど、顔には出しているのがあたしにでも判って、お母さんは1人ずつポンポンと頭を叩いた。

「え~っと、ティアナ、僕もやろうか・・・?」

「・・・あ、その・・・いいです」

ティアとティーダさんはそんな感じで。ティアも恥ずかしがらずにやってもらえばいいのになぁ、なんて。
戦時下なのにこんな揺るんだ空気で居るあたし達は、直後、途轍もない殺気を感じとって無意識に身構えた。目の前に居る地上部隊が一斉に道を開けた。というよりは無意識に飛び退いた感じだ。

「あ・・・!」

ずっと前方、あたしの視界に入る3つの人影。“オラシオン・ハルディン”の入り口に佇んでいるのは、漆黒の炎を身に纏うカルド隊だった。

「ヴォルケンリッターはどこだ?」

†††Sideスバル⇒シャルロッテ†††

『シグナム、ヴィータ! カルド隊が姿を現した! 近くにスバル達と地上部隊が居る! 至急、撃破に移って!』

「「了解!!」」

“ヴォルフラム”のはやてから緊迫した通信が入った。シグナムとヴィータは「了解!」と答えて、“オラシオン・ハルディン”へと視線を向けた。私となのはとフェイトも同様に視線を向ける。ここからでもハッキリと判るほどに闇色の炎が揺らいでいるのが見える。

「急ぐぞ、ヴィータ! カルド隊をオラシオン・ハルディンから遠ざける!」

シグナムはヴィータにそう言い、“レヴァンティン”のカートリッジを1発ロード。ヴィータもまた、“アイゼン”のカートリッジを1発ロードした。

「判ってる! リイン、アギト、行くぞ!!」

『はいです! いつでも!』

『シグナム、姉御、あたしもいつでもいいぜ!』

2人は最後に私たちに振り向いて、「女帝の洗礼は任せたぞ」と告げた。私たちは「任せておいて」と返し、急降下していく2人を見送った。

「スバル、ティアナ、エリオ。カルド隊はシグナム達に任せて、地上部隊と協力して施設制圧をお願い」

地上班にそう通信を入れ、『了解しました!』との返答を受け取ったと同時に、なのはとフェイトを見回して3人で頷き合う。
すでに管理局の艦隊に損害が出ている今、これ以上“オラシオン・ハルディン”を放っておくわけにはいかない。すぐさま出来うる限りの破壊工作ために、一直線に“アインヘリヤル”へと向かう。だけど私たちの前に立ちはだかる白コートの姿が1つ。

「ディアマンテ・・・!」

アルトワルドに跨り、砲撃を撃ち続ける1基の“アインヘリヤル”の上に立つディアマンテ。

「なのは、フェイト。悪いけど、地上班と協力して施設制圧、頼める・・・?」

ディアマンテから視線を逸らさず、なのはとフェイトにそう告げる。正直、セレスとルシルとの戦いを控えた2人に、これ以上の負担はかけたくはない。
下手に疲労していたら勝てない相手だから。だけど、それを承知で2人は「任せて」と即答してくれた。そして戦場を空としたシグナム達と入れ替わるようにして、なのはとフェイトは地上の施設破壊に向かった。
私は、上空を目指すシグナムとヴィータ、カルド隊とすれ違う。一瞬だけ目が合った。シグナムとヴィータの目に込められた思い、“負けるな”。確かに私は受け取った。だから、サクッと終わらせてやる。覚悟してよね。

「ディアマンテ、さっさと終わらせてもらうから」

“トロイメライ”を待機モードにして、代わりに“キルシュブリューテ”を携える。脇を通り過ぎていく砲撃群。そのいくつかを切り裂いて無力化しつつ、一直線にディアマンテに向かう。

「大人しくしていればいいものを・・・!」

その言葉と同時に、“女帝の洗礼”から次元跳躍砲が真上に向けて放たれた。視界が白銀に染まって、視力を潰されないように左手で顔を覆う。にしても、さすがにアレはヴィルテールと白天王であってもどうにもならない。

「何に向けて砲撃を撃った!?」

ディアマンテへ怒鳴るように問い質す。

「管理局支局だ。データを回収し終えた順に破壊すると言っただろう? 六課の連中にも、そのような連絡が入っているんじゃないのか?」

それが当然とでも言うように答えた。支局。本局に比べれば小さいとの話だけど、避難が済んでいなければ・・・。

「なんてことを・・・!」

――風牙真空刃(レーレ)――

真空の刃を放ちつつディアマンテに接近する。対するディアマンテは、アルトワルドのスピードによって簡単に回避。真空刃はさっきまでディアマンテが乗っていた“アインヘリヤル”に直撃、真っ二つに寸断した。

――我が往くは天の覇道――

今度は向こうの攻撃(ターン)。雷そのものとなって突撃してきた。疾い。だけどまだ見切れる速さだ。

「っ・・・こんのぉぉーーーーッ!!」

――光牙聖覇刃(フンケルン・フルートヴェレ)――

だから私は行く手を遮るように前方に向けて、真紅の光の波をディアマンテに叩きてやった。その隙に、私がこの3千年の間に手に入れた力を解放する。真紅の両翼ルビーン・フリューゲルをピンと張るように伸ばす。
両翼の付け根から新たな翼を背中から生成。私の周囲に、魔力で出来た真紅の無数の羽根が舞う。
私の背から生えるのは、ルシルの剣翼アンピエルを基にして作り上げた私の新しい翼。

「空戦形態、フォイアロートフェーニクス、顕現」

ルシルの剣翼アンピエルや空戦形態ヘルモーズの術式はすでに熟知している。だからこそ私も扱うことが出来るようになった。
この、私の背から伸びる8枚の細長いひし形の紅翼による、ルシルと同じ空戦形態を。
私が放った光波も消え、アルトワルドに跨ったディアマンテが姿を見せる。私は“キルシュブリューテ”の剣先をディアマンテに向け、一言。

「大人しくするのはお前の方よ」

「それはこちらのセリフだよ、シャルロッテ・フライハイト」

ディアマンテはそう言うと“女帝の洗礼”へと向かっていく。私もアルトワルドに跨っているあいつを追いかけるために飛行を開始。
“アインヘリヤル”から“女帝の洗礼”までの直線距離、約6kmを全力で飛行。こっちも本気で飛んでいるのに、それでも前方のアルトワルドとの距離12mで拮抗。フォイアロートフェーニクスを使えなかったら戦いにならなかった。

(騎士の洗礼・・・。よぉし・・・!)

“騎士の洗礼”の外壁スレスレを飛ぶと同時に、“キルシュブリューテ”を“騎士の洗礼”の外壁に突き立てる。
刃は割りと簡単に外壁を突き貫けた。イケる。解放してなくても神器なら余裕で外壁を破壊できる。外壁を切断することで生じる激しい火花をまき散らす“キルシュブリューテ”、その剣先から、私の扱える雷撃系上位の魔術を“騎士の洗礼”の内部に放つ。

雷牙(ブリッツ)・・・神葬刃(エアモルドゥング)!」

刃を抜いてそのまま止まらずに飛行を続行。後方から爆発音、大気を揺るがすほどの震動が周囲に広がる。すると、ここ“オラシオン・ハルディン”内に、どこから流れているのか判らないけど通信がこだまする。

≪騎士の洗礼Ⅷが沈黙。Ⅷ番基の砲撃掃射システムに異常発生。砲撃掃射システムの再起動は不可、断念。Ⅷ番基を破棄≫

デバイスのような声。データにあった管制システムのものだと判った。何はともあれ、“騎士の洗礼”の1基を陥落させてやった。

「やってくれたな!!」

ディアマンテが上半身を捻ってこっちに向く。フードは脱げていて素顔を晒している。
そんなアイツの左手の指、その間に白銀に輝く雷のナイフらしきものが4本。ディアマンテはスナップを利かせてそれを投げつけてきた。

――追従する破滅の銀雷花――

私はロール機動でやり過ごした。直感。すぐに頭だけを動かして後方を見る。するとナイフがすぐそこまで迫っていた。誘導操作弾のようなものだと判断。ならば、と、回避でなく迎撃に移るのみ。

――ロイヒテン・プファイル――

私は飛行速度を緩めないで、射撃魔法を13発と放つ。対象を視認している状態で放てばオートで追尾する機能を持つ、私がなのはのディバインシューターを基にした、最初に会得した魔法。
魔術じゃないのが少し心配だけど、神秘のある私の魔力で構成されているのだからきっと大丈夫。後方から連続して起こる爆発。迎撃は成功のようだ。そう思った瞬間、再度直感が働く。

――我が心は拒絶する(ゼーリッシュ・ヴィーター・シュタント)――

今度はちゃんと身体ごと振り返ってシールドを張った。直後、視界いっぱいに花のように広がる白銀の雷光。

「炸裂弾・・・っ!!」

あまりの轟音と閃光に耳を塞いで目を閉じる。視覚が一時的に最悪なレベルにまでマヒしてしまうことだけは防がないと・・・。そうでないと、ディアマンテに殺される。

『全ての剣士の頂点に立った最強の騎士、剣神シャルロッテと戦えるとはな』

「(念話!?)がはっ・・・!?」

お腹に鈍い衝撃。白い世界、視界にうっすら映るのはアルトワルドの頭・・・? 突進をお腹にまともに食らったのか・・・?
浮く感覚、次に背中に奔る鈍い痛み。咽る。背中から地面に落ちたようだ。仰向けでいると視覚が徐々に戻り始める。
最初に見えたのはアルトワルドの前脚。踏み潰されると判断する前にすでに身体は動いて、転がるようにして避けた。すぐさま立ち上がって閃駆で距離を取る。

(ディアマンテが何か喋ってる・・・?)

聴覚がやられた。口は動いているけど声は聞こえない。でも、他の感覚が生きている以上は・・・

「何言ってるのか知らないけどさ、私はまだ戦える・・・!」

――閃駆――

†††Sideシャルロッテ⇒はやて†††

“ヴォルフラム”のブリッジに入る緊急通信。内容は、“女帝の洗礼”の次元跳躍砲によって、管理局支局の3分の1以上が破壊されたというものやった。
半壊の被害。支局はもう何もせんでも次元空間に沈んで、壊れて消えていくことになる。唯一の救いは、支局に居る局員たちの避難は終えていたことや。

「これ以上は撃たせられへんな・・・」

“女帝の洗礼”による次元跳躍砲はもう撃たせるわけにはいかん。それに“騎士の洗礼”と“アインヘリヤル”による艦隊への砲撃。アレらにもすでに私ら艦隊は損害を被っとる。

「キャロ、レヴィ、そしてルールー! 3人もオラシオン・ハルディンの攻略へ向かって!」

“アギラス”掃討を担当する3人に向けて通信を入れる。

『え? あの、でもそうすると、アギラスへの戦力が・・・』

「アギラスは航空部隊の底力で何とかなる! それに、私も空に上がることにした。神秘の無い私でも、アギラスくらいは墜とせるからな」

それに管理局の援軍は、まだまだここ“オムニシエンス”に向かっとる。
私たちと“テスタメント”の大きな違いは、その組織の大きさにある。いろんな管理世界からの援軍。そやけど、“テスタメント”にはそんな戦力は無いはず。
確かに“女帝の洗礼”を始めとした兵器による戦力は管理局以上や。でも数では間違いなくこっちの方が上。質で勝てんへんのやったら数で勝つ。
それにもまだ問題はあるけど、1つの敵を前に、管理局内での争いなんてやってられへんし。きっと上手く協力して戦ってるくれるはずや。

「そやから3人とヴォルテールと白天王は、オラシオン・ハルディンの制圧を。これは命令や」

『『『り、了解です!!』』』

私は艦長席から立ち上がって、ブリッジのスタッフ達を見回す。スタッフ達は私の勝手に対して肯定を示すために頷いてくれた。私は頭を下げて「ありがとう、行ってきます」と告げて、ブリッジを後にした。 
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