戦国異伝供書
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第六十八話 上洛に向けてその四
「何か当家にとってな」
「真田家はですか」
「あの家はですか」
「殿としましては」
「何か感じられましたか」
「うむ、争えば嫌なものを感じる」
それでというのだ。
「戦えばな」
「その時はですか」
「当家にとって嫌な敵となる」
「そう思われますか」
「あの家は家自体が忍でもあるというな」
武士であるだけでなく、というのだ。
「武芸に采配、知略にな」
「そこに忍術ですか」
「それも加わっているので」
「それで、ですか」
「あの家とことを構えると」
「厄介ですか」
「特に源次郎殿か」
幸村のことにだ、元康はまだ会っていないがまるで因縁の相手を前にした時の様に剣呑な顔になって話した。
「その真田家きっての武勇の持ち主で忍の術も凄いというな」
「それでだけではありませぬ」
服部が元康に行ってきた。
「あの御仁の家臣には十勇士がいますが」
「十勇士とな」
「全て一騎当千の猛者達であり優れた忍達であり」
そしてとだ、服部はさらに話した。
「源次郎殿に絶対の忠誠を誓っている」
「そうした者達は」
「源次郎殿とはただの主従でなく」
その十勇士達のことを話すのだった。
「義兄弟であり友であるのです」
「十一人全員がか」
「左様です、死ぬ時と場は同じだと誓い合ったまでの」
「それだけの絆があるか」
「それだけにこの十一人は」
「真田家の中でもか」
「気を付けるべきかと」
こう話すがここでだった。
雪斎もだ、こう言ってきた。
「拙僧も真田家のことは知っておる」
「和上もですか」
「うむ、武田家には二十四将という優れた家臣の方々がおられるが」
元康に対して話した。
「その中に入っておられる御仁もいて、そして別に源次郎殿とな」
「十勇士もいますか」
「真田家は武田家の忍でもありな」
「源次郎殿はその中でもですか」
「まだ若いがその武勇と知略は天下一品」
そこまでの者だというのだ。
「そして十勇士達もな」
「半蔵の言う通りにですか」
「一騎当千の者ばかりでな」
「武田家と何かあれば」
「ご当主の武田殿、二十四将と共にな」
「武田家の大きな力ですか」
「うむ、だから武田家と戦うなら」
その時はというのだ。
「源次郎殿と十勇士もな」
「注意すべきですか」
「存分にな、あとじゃ」
雪斎は元康にこうも話した。
「上洛の時は二万五千の兵が出陣するが」
「今川家のほぼ全軍ですな」
「うむ、しかし当家は実質百六十万石あるな」
「そう言われていますな」
「それなら四万の兵を用意出来る」
「では」
「一万五千の兵をあえて用意して」
そうしてというのだ。
「その兵達でな」
「留守を守りますか」
「そうなれば若し敗れ」
上洛する二万五千の兵がというのだ。
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