| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

命乞い

<バハラタ東の洞窟>

狭い通路を進むと、通路は丁字に別れており、その左右が頑丈な牢屋になっている。
リュカは早足で進み、片方の牢屋を覗き込む。
中には1人の女性が蹲っているのが見えた。

「貴女がタニアさんですか?貴女の爺さんに頼まれて、助けに来ましたよ。もう安心ですよぉ。………ところで、どうやって開けるの?」
リュカは最大級の優しい口調で話しかける。
「ほ、本当ですか!?お祖父ちゃんが…」
「本当ですよぉ。こんなイケメンが悪人わけないでしょう!」
タニアは合格レベル(リュカ基準)らしく、リュカは優しい笑顔で話し続ける。

「あぁ…良かった…そこの壁にレバーがあります!それで牢屋の戸が開きます!…あの…向こうの牢屋には、大怪我をしたグプタが閉じこめられて居ます!助けて下さい!!」
タニアの話を聞いたアルルが、レバーの位置を確認し、操作して解錠する。

(ガチャッ!!ガラガラガラガラガラ!)
牢屋の戸が開いた途端、タニアは飛び出し反対側の牢屋へ入って行く。
「グプタ!グプタしっかりして!お願い、死なないで!!」
タニアの後を追うように、アルル達も牢屋の中へと入って行く。

其処に居たのはボコボコに殴られたグプタの姿だった!
何もない牢屋の床に置き晒され、手当などはされていない。
顔は殴られて腫れ上がり、腕と足も骨折している。
腹部もかなり殴られた様で、見たところ内臓も幾つか損傷している様だ。

「酷い…」
「グプター!お願いしっかりしてー!!」
タニアがグプタに抱き付き泣き叫ぶ。
「うっ………」
しかし動かされると激痛が走るらしく、タニアに抱き抱えられたグプタは苦痛の声を漏らした。
「タニアさん、退いて下さい!急いで治療しないと…」
ハツキがタニアを押しのけ、グプタの身体をそっと診る。

そして骨折箇所へ手を当てて、グプタに優しく囁く。
「グプタさん聞いて下さい。これより骨折でずれた箇所を、力ずくで元の位置に戻します。かなりの激痛ですが我慢して下さい!」
(ゴリッ!)
言い終わるや力ずくで骨を正常な位置へと押し戻す!

「うっ~~~~~!!!!!」
言葉にならない叫び声でグプタは悲鳴を上げる。
「ベホイミ!」
すかさずハツキはベホイミを唱え、グプタの身体を治癒させてく…
「ベホイミ!ベホイミ!」
ハツキのベホイミでグプタの傷が治癒していくが、怪我の程度が酷い為、思う程効果が現れないでいる!

「ハツキ…ちょっと退いてごらん…」
見かねたリュカが、ハツキに変わりグプタの身体へ手を翳す。
「ベホマ」
グプタの身体が淡く光り、忽ち傷が治癒されて行く!
「リュカさんは『ベホマ』までも使えたんですか!?」
驚きの声を上げるハツキ…

「ん?………まぁ…ね…」
リュカはグプタをゆっくりとタニアの前に立たせる。
「グプタ!」
「タニア!」
互いの無事を喜び抱き合う二人。

「喜んでるとこ悪いけど、早く帰ろうよぉ…僕、こういう湿気ぽい所嫌いなんだ!」
「あぁ、そうだよ!あまり長居すると、他の盗賊共と鉢合わせしちゃうかもしれないぜ!まだ洞窟内には、盗賊団らしき連中が居たからな!」
ウルフが先程、別の場所で見た連中の事を思い出す。

「その中には『カンダタ』は居たか?」
「カンダタ?………奥の方までは見えなかったけど…居なかったと思うよ………何!?この盗賊団ってカンダタ一味なの!?」
リュカの真面目な質問に、ウルフだけでなくアルル達も驚いている。

「…さっき、そんな事を言っていたヤツが居たんだ…あっちの生臭い部屋に…(クスッ)もう何処にも居ないけどね」
リュカの冷たい笑いに、背筋が寒くなるアルル。
「で、では早く退散しましょう!何も今カンダタとやり合う必要は無いわ!」
アルルは慌てて、町へと戻ろうとする。


「な、何だこりゃ!?」
しかし遅かった様で、アルル達は血生臭い部屋でカンダタと鉢合わせをしてしまった!
アルルはグプタとタニアを庇う様に立ち、剣を構える!

「ん!?テメー等…その人質をどうするつもりだ!?」
人質二人を守るアルルに向け、カンダタは殺気を漲らせる。
「バカかお前は!?人質を救出しに来たヤツに向けて『どうするつもりだ!?』は無いだろ!どうするもこうするも、救出するんだよ、バ~カ!!」
必要以上にカンダタを挑発するリュカ。

「げっ!お前は…シャンパニーの塔の…」
リュカを見るなり、急に怯み出すカンダタ…
彼は盗賊ではあるが、武の道を歩んだ者としての実力も持っている。
リュカを一目見た時から、自分との実力差を感じ取っており、シャンパニーの塔では全力で逃げに徹したのだ!

「テメー!ふざけてんじゃねぇーよ!!」
しかし実力のない手下にはリュカの強さを知る術もなく、何時もの様に息巻くのだった。
「人質を返して欲しかったら、金持って来な!!それと、そのガキが俺の腕を切った慰謝料として、その3人の女を置いてきな!そっちでは金を取らねーよ!身体で払ってもらうからよー!!」
腕に不格好な包帯を巻いた男が、リュカの前で下品に笑いながら恫喝している。
「お、おいジェイブ…よせ…」
カンダタがジェイブと呼ばれるこの男を、止めようとした瞬間…
リュカが振るった杖により、ジェイブの頭が吹き飛び、大量の血液が低い天井へ噴き出した!

「ま、待て!待ってくれ…お、俺の降参だ!アンタと戦って勝てるとは思ってない!人質は返す…だ、だから…俺も、子分達も…助けてくれ!…頼む!!」
カンダタは慌てて武器を捨て、リュカに頭を下げて頼み込む。

「う~ん…この間、うっかり逃がしちゃったら、誘拐事件を起こしてるしなぁ…お前等、死んだ方が良くない?」
優しい口調、優しい笑顔で近付くリュカ…
「ち、違うんだ!俺達、足を洗う為に最後の仕事として誘拐をしたんだ!」
「はぁ?矛盾しない?」

「き、聞いてくれ!俺達の様な人間が、真っ当に生きるのは難しいんだ!だが纏まった金があれば、悪事をせずに生きて行く方法が見つかるかもしれない!だから、最後に人を殺さないですむ、誘拐を起こしたんだ!その証拠に人質の女には、手を出してないだろ!食事だって与えてたんだ!そりゃ大した物じゃ無いけど…」
「じゃぁ何で、グプタが瀕死の状態だったんだよ!」
リュカがグプタを指差し、問いつめる。

「はぁ?そんなヤツ知らねーよ!誰だよそいつ!?」
本気でキョトンとしているカンダタに、そっと手下の一人が耳打ちする。
「…親分…実は…ジェイブが…」
どうやらグプタの件は、カンダタが出かけている間に起きた様で、本当に知らなかった様だ!

真っ青になるカンダタ。
「ほ、本当に知らなかった!本当なんだ!!俺が居る時なら、そんなに酷い事はさせなかった!ジェイブは短気なんだ!本当だ!許してくれよ!!」
しかしリュカは、もう目の前で微笑んでいる。
カンダタだけではない、他の手下も恐怖で震えている。

「う~ん……………やっぱりダメ!死んだ方が世の為だよ」
「そ、そんな…お願いします!どうか命だけは!!どうか助けて下さい!!」
カンダタは顔を涙と鼻水でグシャグシャにし、リュカに縋る様に助命を乞う。
「お前等は、そんな風に命乞いをした人々を、何人殺してきたんだ?立場が変わっただけだろ…今更後悔するなよ!」
「そ、そんな………」
そしてリュカがゆっくりと杖を振り上げた………



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧