クリスマスの姪
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第七章
「正確に言うと博多でラーメンと鶏と明太子でね」
「おうどんともつ鍋もですね」
「そうしたものの街でね」
「クリスマスはですか」
「そんなハイカラなのないよ、鳥は鶏以外もあるけれど」
「鷹ですね」
七穂もその鳥が何かはわかった。
「ホークスですね」
「球団もあるけれどあそこもクリスマスとはね」
「縁がないですか」
「巨大戦力で他チームを圧倒する」
俗に金満球団だの代正義球団だの言われている、プロレスのヒーローやヒールで言うとヒールだろうか。
「そんなチームでね」
「クリスマスとはですね」
「こっちも無縁だからね」
野球の方もというのだ。
「サンタクロースじゃないよ」
「だからですか」
「福岡よりも」
金吾は自分の姪に笑って話した。
「九州でクリスマスだと長崎とかハウステンボスかな」
「あっ、ハウステンボスですか」
「あそこかな」
こう言うのだった。
「やっぱり」
「そうですか、ですが私今凄く楽しいです」
「満足しているんだ」
「心から」
そうだとだ、七穂は金吾に満面の笑みで答えた。
「福岡のクリスマス最高ですね」
「七穂ちゃんがそう言うならね」
ならとだ、金吾も言うことはなくこう返した。
「僕もいいよ」
「そうですか」
「じゃあ今日は楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
「明日はガメ煮食べて」
七穂を可愛がっている頼子はまた彼女に話した。
「もう一回ラーメン食べる?」
「明日もですか」
「それで満足してね」
「そうしてですか」
「佐賀に帰ってね」
「それでは」
「まさかこんなに満足してくれるなんて」
ワインを飲みつつだ、金吾はつぶやく様に言った、
「思わなかったよ、けれど喜んでくれるなら」
「それならですか」
「僕はいいよ、じゃあね」
「はい、今日も明日もですね」
「帰るまでね」
まさにその時までとだ、その姪に話した。
「楽しんでね、それで銀二にも宜しくね」
「お父さんにもですね」
「言っておいてね」
「わかりました」
七穂は金吾ににこりと笑って応えた、そうして七面鳥を食べた。そうしてまた笑顔になるのだった。福岡のクリスマスの夜の中で。
クリスマスの姪 完
2019・11・28
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