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借金大王

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第一章

               借金大王
 ふざけるな、俺はそいつに面と向かって言ってやった。
「何考えてるんだ」
「何って?」
「俺は働いてな」
 そしてとだ、俺はそいつにさらに言ってやった。
「汗水流して朝から晩までそうしてな」
「金稼いでか」
「やってるんだぞ、皆そうだぞ」
「そうだよな」
「普通はそうなんだよ」
「岩城は違うけれどな」
「岩城は洒落になってないだろ」
 ダチの一人だ、酒飲んだ未成年の馬鹿ガキが運転している無免許の車に跳ねられて足に深刻な障害を受けて今は障害者年金と生活保護で生きている。
「というかお前岩城からもだよな」
「ちょっとな」
「ちょっとじゃねえぞ」
 俺は目を剥いて怒って言ってやった。
「あのな、あいつはな」
「障害者年金とか」
「生活保護でな」
 仕事が出来なくなったからだ、それまではしっかり働いていた。
「暮らしてるんだぞ、そんな奴からも借りるか」
「大した金額じゃねえさ」
「一万とか二万でもな」
「大した額じゃないだろ」
「額の問題じゃねえんだぞ」
 内心ぶん殴ってやろうかと思いながら言ってやった。
「本当にな」
「そうなんだな」
「そうだよ、働きたくてもな」
 例えそうであってもだ。
「働けなくて苦しんでいる奴がいてな」
「それが岩城でか」
「結婚とかも諦めてな」
 俺はもう一人でさっさと死ぬのが一番だと言いながら暮らしている、そして何とか自分で出来ることを探している。
「生きてるんだぞ」
「女もか」
「お前また女いるだろ」
「ああ、いい女が出来てな」
 悪びれずへらへらして言ってきやがった。
「それでな」
「そうだよな」
「そいつの部屋に入ってな」
「暮らしてるんだな」
「これがいい奴でな」
 ヒモそれも屑の中の屑の顔での言葉だった。
「俺に毎日二万な」
「金用意してくれてるのかよ」
「ホステスで稼いでてな」
「一日二万か」
「住民税とか食費とか全部面倒見てくれてな」
 最早完全にヒモだった、しかも悪びれていない。
「色々尽くしてくれてるんだよ」
「それはよかったな」
「そうだよな」
「で、それで何だ?」
 俺は自分の額に血管が浮き出ていることを自覚しながら言ってやった。
「俺の前に来て」
「ああ、ちょっとな」
「金貸せってか」
「今日競馬ですってな」
 ギャンブルだった、こいつの趣味は競馬に競輪に麻雀に酒に煙草に女だ。まともな趣味が一つもない。
「それでな」
「飲み代なくなったか」
「ああ、それでな」
「俺に金借りてか」
「飲みに行くんだよ、これから」
「他の奴のところに行ったか?」
「今日はお前が最初だよ」
 俺にへらへらとして言ってくれた。 
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