およしになってねティーチャー
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第一章
およしになってねティーチャー
悠木恭介は尖った口に黒く硬い髪を短めに刈った髪型、細い目、浅黒い肌に中学から大学まで相撲部に入っていただけあって下半身がしっかりした体格をしている。とはいっても背は一八〇にぎりぎり届かず力士という位の体格ではない。職業がは校の先生だ。
その彼が神戸の自宅から大阪住吉の実家に帰った時に母に言われた。
「恭介、ちょっとええか??」
「何や」
悠木はその尖った口で母に返した。
「かみさんならおるで」
「何言ってるの、結婚の話やないで」
「おかんずっと五月蠅かったからな」
結婚しろとだ、彼が三十で結婚するまで五月蠅かったのだ。
「それで言うたんや」
「ちゃうわ、そういうのやなくて」
「ほな何や」
「あんた学校の先生やろ」
「それがどないしたんや」
「学校の先生いうたら」
ここから言うのだった。
「セクハラやろ」
「セクハラ?」
「そや、生徒への」
母が言うのはこのことだった。
「それがあるやろ」
「何でわしがセクハラするねん」
悠木は母に怒って言った。
「それ言うたら兄貴の方がやろ」
「セクハラしそうっていうのね」
「そや、兄貴の顔見てみい」
兄の亨のそれをというのだ。
「如何にもスケベそうな顔してるやろ」
「そうかしら」
「そや、あの顔な」
「お百姓さんみたいな顔でしょ、亨は」
「色が黒くて長くて目が小さくてな」
そしてやけに老けた顔をしている。
「もう手拭巻いたららな」
「そのままね」
「麦わら帽子も似合ってな」
「そうよね」
「何でかお百姓さんやなくてゲーム制作しとるが」
兄の仕事はこちらだった。
「兄貴の方がや」
「何言ってるの、あの子はそんなことしないわよ」
絶対にというのだ。
「真面目だから」
「ほなわしは真面目やないんか」
「あんたはやんちゃだったからね」
子供の頃はそうだったというのだ。
「女の子のスカートもよくめくったわね」
「一体何時の話や」
「小学生の時よ」
「子供の頃やろが、そんなんな」
絶対にとだ、悠木は母に言い返した。
「わしがするか」
「しないのね」
「当たり前や、息子に何言うんや」
「お父さんも言うかも知れないわ」
「おとんに言うとけ、そんなん言う暇あったら痛風治せ」
「今はかなりましになったわよ」
「毎日ビール飲んでるからそうなるんや」
痛風になるというのだ。
「ほんまに、足の親指痛いって何や」
「それが痛風よね」
「自分で気ィつけんかい、とにかくわしはや」
「セクハラしないのね」
「絶対にするか」
自分の母親に怒った顔で言い返した。
「ほんまに、何ちゅう母親や」
「そう言うけどや」
「心配かいな」
「ほんまにね」
「その心配は杞憂や」
悠木は言い切った。
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