ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第60話 野生の勝負!トミーロッド、本気の強さ!!
side:リアス
『すまぬ』
「もう書く必要ないでしょう……」
誰かさんのうっかりのせいでセンチュリースープが無いことがカーネルにバレてしまったじゃなの、恐らくもうアイスヘルを離れてしまっているかもしれないわ。
「いやー、本当に悪かった。俺ってばいつも肝心なときに口を滑らせちまうもんだからつい……」
「過ぎたことはしょうがないわ。それよりもずっと気になっていたんだけど貴方は何者なの?」
「ああ、俺の……名は……」
「いや喋っているなら紙に書く必要はないでしょうが!?」
ああもうツッコミばかりしていて疲れるわね……こんなの私のキャラじゃないわ。
「俺の名は鉄平。『食の再生屋』だ」
「再生屋……?」
「うっそッ!?再生屋!?まさかこんなところで再生屋鉄平に会えるなんて!?」
「……ッ!?」
聞いたことのない単語に私達は首をかしげる、でもティナやシンさん達は知っているみたいね。でもシンさん達はどういう訳か険しい表情を浮かべていたわ。
「再生屋っていうのはね、主に希少な食材の保護、絶滅危惧種の繁殖、枯れた土壌の回復などをしているの。美食屋が新たな食を発見する探究者なら彼らは食材が枯渇しないようにする食の緊急隊って所かしら」
「食の再生屋……何だかカッコいいですぅ」
ティナが再生屋について説明してくれたわ。いくら食材が豊富にあるこの世界でも資源である以上限りはある、再生屋というのは美食屋と同じくらい重要な組織という訳ね。アーシアも回復の神器を持っているからか少し憧れた表情を浮かべていた。
「だがその再生屋というのがなぜこの大陸にいるんだ?」
「そうよ、あんな覆面までかぶって怪しいじゃない」
ゼノヴィアとイリナは再生屋の彼がなぜこの大陸に来ているのか質問をしていた。確かにあんな覆面なんてしなくてもいいと思うけど何か正体がバレたらまずいことでもあるのかしら?
「俺はある人物から依頼を受けてここに来た、顔を隠していたのは俺の正体がバレないようにするためさ」
「正体がバレたらマズイんですか?」
「それはそいつが再生屋だからさ」
ルフェイの質問に鉄平さんではなくシンさんが答えた……ってどうして武器を構えているのよ!?
「貴方たち何をしているのよ!」
「悪いなリアスちゃん、だがこいつの目的はきっと俺達だろう」
「えっ?」
「再生屋は違法な食材を取り扱う悪人や猛獣を絶滅するまで乱獲したハンターなどを捕らえる事もあるんだ。グルメヤクザにとっては天敵みたいなもんだ」
「実際俺達の組じゃないがいくつかのヤクザの組織がお前に潰されたこともあったからな」
あっ……そうか、シンさん達も生きるためとはいえ違法な食材を取り扱っているグルメヤクザなんだ。警戒するのは無理もないわ。
「……お前ら、リュウさんの所の組だろ?」
「なっ、何故組長の名を!?」
「俺の師匠がリュウさんと知り合いなんだよ。俺も一回会ったこともある」
「組長と再生屋が……?」
「あの人の組はまだ許容範囲できるレベルだ、俺も正義の味方ぶるつもりはないからやり過ぎない限り手は出さないさ。それに今回の依頼は食材の保護であってお前らは関係ない」
「……」
鉄平さんの言葉にシンさん達は居たたまれないような表情を浮かべた。まあ早とちりで武器を向けちゃったから気まずいわよね。
「……その、すまなかった」
「いいよ別に。気にすんなって」
シンさん達も落ち着いたみたいだしこれで話が進められるわね。
「俺が今回受けた依頼はセンチュリースープ……グルメショーウインドーの状態の確認と場合によってはそれを保護することだ。だが美食屋と再生屋は明確に敵対しているわけじゃないが立場上対立することもある。俺は有名人だからいらぬ警戒をさせない為に正体を隠していたって訳さ」
「なるほど、そういう事だったのね」
確かに彼はかなり強いだろうし一人だけ再生屋がいると知れば良からぬことを考える人物も出るかもしれない、顔を隠していたのはいらぬ争いの種を蒔かないようにするためだったのね。
「ん?ちょっと待て。今センチュリースープの保護をすると言っていたな?ならセンチュリースープの再生をしてくれるというのか?」
「やったじゃない、これでセンチュリースープをゲットできるわ!」
ゼノヴィアの言葉にイリナも嬉しそうに両手を合わせて笑みを浮かべた。再生屋の彼ならグルメショーウインドーを再生させることもできるかもしれないわね。
「期待させておいて済まないがそれは無理だ」
「えっ、どうしてですか?」
「グルメショーウインドーはもう死にかけている。中の食材は枯渇しかけているし再生させようにも中で冷凍保存されている食材はほぼ全てがもうこの世には存在しない絶滅種……いくら俺でも再生させるのは不可能に近い」
「そんな……」
希望を見つけたと思ったが、鉄平さんの言葉に私は再び絶望に落とされた。再生屋の彼でも無理ならやはりスープを手に入れることはできないのかしら……
その時私達がいる子の氷山が大きく揺れたわ、きっとイッセー達が戦っているのね。
「この振動は……」
「きっとイッセー達が戦っているんだろう。彼らが身を削ってまで道を作ってくれたというのに私達はそれに応えることが出来ないなんて……クソッ!」
「……?リアスさん、あれはオーロラじゃない?」
ゼノヴィアは悔しそうに拳を握る、でもイリナは何かを見つけたみたいで私に声をかけてきた……ってオーロラ!?
イリナが指を刺したほうを見てみると、そこには微かにだがオーロラが存在した。
「これは……っ鉄平さん!」
「ああ、もしかしたら今の振動でスープが出てきたのかもしれない。あのオーロラの大きさだと少量だが確かにある!」
「……!」
やった!まだ諦めるのには早かったのね!
「皆、手分けしてスープを探しましょう!イッセー達の頑張りに応えるためにも絶対に!」
『応っ!!』
待っていて、イッセー、皆……!
――――――――――
――――――
―――
side:小猫
イッセー先輩とトミーロッドが戦いを始めました。私と祐斗先輩はその間に倒れている朱乃先輩の元に向かいます。
「朱乃先輩!」
「うっ……うう……」
「良かった、生きているよ」
朱乃先輩は倒れていますが生きていました。でもどうして虫の大群に飲み込まれたのに無事でいられたのでしょうか?
「昆虫たちの様子がおかしいね、動きが鈍くなっている」
「それに何だか良い匂いがします。爽やかで心地の良い匂い……まるで森の中に入ったような錯覚がするくらいです」
「……フォトンチッドですわ」
「朱乃先輩!」
祐斗先輩が朱乃先輩を抱き起すと彼女は弱弱しくも私達に説明をしてくれました。
「フォトンチッドというのは植物が身を守るために発する殺虫殺菌作用のある物質の事ですわ……」
「そうか、虫たちは嫌いな匂いのせいで動きが鈍くなったのか」
「それで朱乃先輩は無事だったんですね。でもどうしてそんな匂いが朱乃先輩からしたんですか?」
「イッセー君のお蔭ですわ。きっとグルメ細胞の力がフォトンチッドを産み出したのだと思います……イッセー君の側にいたわたくしにはその匂いが移っていた。だからこうして生きていられましたの」
「イッセー君が……」
私達は朱乃先輩の話を聞いてトミーロッドと戦うイッセー先輩を見ました。確かに残っていた虫たちもイッセー先輩や私達に近づかなくなっています。
「シャアアッ!」
イッセー先輩は先制して目にも止まらない高速ジャブでトミーロッドを放つます。でもトミーロッドはそれを悠々と回避して先輩の背後に回り込みました。
ガチィィンと金属がぶつかったような音がします、それはトミーロッドが先輩の顔に噛みつこうとして空振りした際に歯と歯がぶつかって起こった音でした。
「何だ、あの牙は!?」
さっきまで見えませんでしたが今のトミーロッドの口には鋭い牙がズラリと並んでいました。先輩は素早くナイフを放ちますが既にトミーロッドは先輩の死角に入り込むと左腕に噛みつきました。
「ぐぅッ!?」
一瞬で先輩の方の肉をはぎ取ると見せつけるようにそれを吐き出しました。
「なんて早さだ、姿がいくつにも重なって見えるなんて!」
「それにあの牙も厄介ですわ。イッセー君の鍛え上げた肉体をいとも簡単に食い千切ってしまった、もし急所に噛みつかれたら一巻の終わりですわね……」
祐斗先輩と朱乃先輩はトミーロッドの実力や隠されていた武器に驚いています。勿論私も驚いています、美食會の副料理長の強さがここまであったなんて……
「ナイフ!」
左腕から放たれたナイフをトミーロッドは軽々と回避します。そして先輩の脇腹の肉を噛み千切ると血を舐めとりながら先輩を挑発しました。
「どうしたんだい?さっきから左腕でしか攻撃してこないけどもしかして右腕は使えなくなっちゃったのかな?」
「……」
トミーロッドの問いに先輩は何も答えずにフライングナイフを放ちました。でもそれも簡単にかわされてしまいます。
「イッセー先輩、さっきブーステッド・釘パンチを右腕で使ったから右腕が使えなくなっちゃっています!」
「拙いね、トミーロッド程の強者を相手するのに片腕だけじゃ不利すぎるよ……!」
トミーロッドは余裕そうに攻撃を回避して地面に着地します。でも一瞬だけ表情を歪めて動きが鈍くなりました。
イッセー先輩はその隙をついてトミーロッドに向かっていきます。動けないのかトミーロッドは攻撃して迎撃しますが先輩はその攻撃を肩でいなしてカウンターのストレートを奴に顔面に打ち込みました。
グラリと仰け反ったトミーロッド、そこに追撃として鋭いフックが脇腹に突き刺さりました。トミーロッドは顔を苦痛で歪めながらも後退して体制を整えます。
「トミーロッドの足が震えている!?」
膝がガクガクと震えており明らかに攻撃が効いています。でもさっきまでは余裕そうだったのに一体どうしたのでしょうか?
更にイッセー先輩の攻撃は続いていきます。先程繰り出した高速ジャブでトミーロッドの顔を何度も殴り腹に抉りこむような一撃を与えました。そのまま追撃しようと奴の顔を殴りますがトミーロッドは回転して攻撃の威力を分散します。
「どうした、お前も動きがおかしいぞ?」
「油断しただけさ」
トミーロッドはそう言いますが明らかに動きに切れがなくなっています。一体どうしたんでしょうか?
「分かったぞ!トミーロッドはさっき受けたブーステッド・釘パンチの影響が身体に出ているんだ!一龍さんからも当たれば各上にすら大きなダメージを与えると言われたあの技……まともに受けてノーダメージなんてあり得ないよ!」
祐斗先輩の言葉に私もそうだと納得しました。いくらトミーロッドが強くてもアレを喰らって全くの無傷なんてあり得ません。イッセー先輩が右腕を犠牲にして放った一撃は決して無駄なんかじゃなかったんです。
「でもアレを受けても戦闘を続行できるトミーロッドはやはり恐ろしいわね……今はイッセー君の方が押していますが戦闘が長引けば消耗しているイッセー君の方が不利ですわ」
先輩は既に虫たちとの戦いで大きく消耗しています。朱乃先輩の言う通りこのままではイッセー先輩が危ないです。
「……いよいよあれを使う時が来たようですね」
「小猫ちゃん、それは……!」
私の言葉に二人は目を見開いて驚きます。
「今がその時です。私達が先輩を助けるにはもうそれしかありません」
「……意外と早く使う機会が来てしまったね」
「でも覚悟はできていますわ」
私達は互いに頷くと異空間から液体の入った小瓶を3つ取り出します。
「これが飲んだものに一時の力を与える『豪水』……見た目は唯の水ですが本当に効果があるのでしょうか?」
「ルフェイちゃんがあれだけ止めたくらいですもの……効果は間違いないはずですわ」
豪水……それは飲んだものに凄まじい力を与える代わりに必ず死ぬという危険な水です。何故私達がそんなものを所持しているのかというと話はジュエルミートを手に入れた後になります。
イッセー先輩すら一度死にかけた強敵ヴァーリ……彼はGTロボを操っていたらしいですが先輩の話では本人の実力を半分も表せていなかったそうです。
それを聞いた私達は驚愕しました。そんな恐ろしいほどの強さを持つ男がこの先敵として現れるかもしれない……そうなったらイッセー先輩はたった一人で挑まなければなりません。
こんなことは考えたくはありませんが、もし先輩がやられてしまったら今度は私達の番です。ヴァーリという男がどんな人物か分からないので楽観視はできませんし、仮に彼が紳士的であっても他の美食會のメンバーがそうである可能性はない。
私達は自分の意志で先輩についていくと決めたので死んでも後悔はありませんが、せめて部長だけでも守れるようにはしておきたいです。
私も祐斗先輩も朱乃先輩もリアス部長に拾ってもらいました。絶望の中にいた私達を助けてくれた彼女を私達は心から慕っています。イッセー先輩と同じくらい大好きなんです。眷属としてリアス部長だけは守りたいと思った私達はどうすればいいか話し合いました。
そこで私達は何か力を得られるような食材がないかルフェイさんに聞きました。イッセー先輩の方が詳しそうですが先輩は優しすぎるからきっと私達には絶対に教えてくれないと思ったからです。
当然ルフェイさんも駄目だと言いました。心当たりはあるがリスクが高すぎると教えてくれませんでした。それでも何度も頼み込んで土下座もしました。遂に折れたルフェイさんは豪水について教えてくれました。
『豪水は飲めば一時は凄まじい力を得ることが出来ますがその後必ず死にます。皆さんは悪魔なのでもしかしたら助かる可能性もあるかもしれません。ですが正直おすすめはできません、だってこれは予想でしかありませんから。悪いことは言いません、そんなものを使わなくても皆さんなら強くなれますよ。だから思い留まってください。もし皆さんに何かあったら師匠やリアスさんは悲しみますよ?』
ルフェイは最後の最後まで私達を止めようとしてくれました。でも私達は折れませんでした。
『……分かりました、なら私も一緒に背負います。もし皆さんに何かあったら私も腹を斬ります!日本の武士がする切腹です!……だからどうか使うのは最後まで思い留まってください、じゃないと私まで死んじゃいますよ?』
ルフェイさんは笑いましたがそれが冗談でないのは彼女が流した涙で分かりました。もし豪水を飲んで私達が死ねば彼女は迷いなく腹を斬るでしょう。
……分かっています、こんなのは私達の自己満足だって事は。誰もこんなことは望んでいないし先輩や部長、他の仲間達を悲しませることになると分かっています。
「でも私は……イッセー先輩に死んでほしくありません……」
「僕だってそうさ、恩も返せてないのにイッセー君を死なせるわけにはいかない」
「わたくしも同じ気持ちですわ」
今もボロボロになりながら必死でトミーロッドと戦っている先輩を見て私達は自分の弱さに苛立ちを感じます。
彼を支えたいのに何もできない、今だって肝心な時は全部任せてしまっている。こんなの対等な関係じゃありません……
「イッセー先輩、リアス部長、皆……勝手な自己満足で愚かな選択をした私達を許してください……!」
イッセー先輩もリアス部長もアーシアさん達もルフェイさんも死なせません。絶対に生き残ると覚悟した私達は3人同時に豪水を飲み干しました。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
すると体から凄まじい力が生まれて体中に駆け巡っていきます。それと同時に腕に痣が出ると想像を絶する痛みも生まれましたが歯を食いしばって何とか耐えます。
そして私達は今まさに食い殺されかけているイッセー先輩の元に向かいました。祐斗先輩が地面から魔剣を召喚してトミーロッドの攻撃を防ぎました。
「なんだ、これは!」
魔剣に阻まれて一旦立ち止まったトミーロッド、そこにいくつもの落雷が落ちて地面に穴を開けます。トミーロッドはそれをかわしましたがその隙に奴の背後から二重の極み……いえ指を開き三重の極みとなった一撃を喰らわせて吹っ飛ばしました。
「皆、その痣はまさか豪水を……!?」
私達の痣を見た先輩は絶句していました。やはり先輩なら豪水の事を知っているでしょうね。
「先輩、ごめんなさい。勝手なことをした私達を許してください」
「僕達じゃ足手まといにしかならないけど、今の状態なら隙を作るくらいならできるかもしれない」
「だから後はお願いしますわ……」
私達はイッセー先輩にそう言うと先輩は歯を食いしばって立ち上がります。その目には涙が溢れています。
「バカ野郎どもが……!」
きっと今すぐにでも私達を怒りたいはず……いやそれよりも豪水を飲んだ私達を助けたいと先輩なら思っているはずです。
でもそれはできません、何故ならトミーロッドを倒さなくては私達は全員殺されてしまうからです。先輩もそれを分かっているから手から血が出る程握りしめています。
「馬鹿な奴らだ、豪水を飲むなんてね。もって後数分の命かな?自分で命を捨てるなんて愚かにもほどが……」
「止めろ」
立ち上がったトミーロッドは私達を見てあざ笑いますが先輩が話を遮断します。
「バカなのは俺だ、そいつらにそんな選択をさせてしまった……こんなバカな俺が憎い!」
先輩は雄たけびを上げるとトミーロッドに向かっていきました。
「うおォォォォォォッ!!」
私達もそれに続きます。泣いても笑ってもこれが最終決戦です、たとえ死ぬことになっても勝って見せます!
後書き
イッセーだ。小猫ちゃん達がまさか豪水を飲むなんて……だが彼女達を助けるためにもなんとしてもトミーロッドを倒さないといけない!
次回第60話『小猫……ぐわぁっ!?す、すまねぇ。トミーロッドの攻撃が激しくて言い切れなかった。俺はもう行かなきゃなんねえけど、次回も必ず見てくれよな。
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