まさに傲慢
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第三章
「浅墓の大貝という記者が来たらな」
「取材はお断りですね」
「そうだ、あいつはとんでもない奴だ」
「平気で嘘書くそうですね」
「とんでもない偏向記事を書いてな」
そのうえでというのだ。
「とんでもなく偉そうらしい、人間としてもな」
「人としてもですか」
「最低最悪の屑らしい」
「屑ですか」
「自分に甘くて他人に厳しいな」
そうした、というのだ。
「最低な奴らしい」
「あそこの新聞社はそうした記者が多いそうですね」
「特に政治部にな」
「その中でもですか」
「大貝はな」
彼はというのだ。
「最低最悪のだ」
「屑ですか」
「そうらしい、だからな」
それでというのだ。
「あいつが取材に来てもな」
「お断りですか」
「浅墓自体がな」
「取材をですか」
「お断りにしたいしな」
「そして特にですね」
「大貝はな」
また彼の名を出して語るのだった。
「ブラックリストの筆頭に乗せておけ」
「それでは」
秘書も頷いた、こうした話がネットを通じて増えていった。そして政治家や官僚達も大貝がどういう輩かわかってきた。
「ミスター浅墓だな」
「本当にあそこの記者らしいな」
「何が社会の木鐸だ」
「夕刊キムとか日刊キムダイの記者とどう違うんだ」
タブロイド紙の記者達と変わらないというのだ。
「一体」
「あいつの取材は言い掛かりだろ」
「この前防衛省の中勝手に歩き回っていたぞ」
「それで書類取ろうとして止められたな」
「そんな取材があるか」
「国家機密をどう報道するか」
それこそというのだ。
「わからないしな」
「あんな奴と関わらない方がいい」
「あいつの記事はどれも酷いしな」
「捏造や誹謗中傷ばかり」
「やたら庶民とか言うがな」
大貝の口癖である庶民感覚という言葉も指摘された。
「実際どうなんだ」
「あいついつも経費で料亭とか高級レストランとか行ってるぞ」
「子分の筑紫と一緒にな」
「その筑紫も奥さんほったらかして銀座のホステスに入れあげてるな」
「遊ぶ金何処から出ているんだ」
「何処から金貰ってるんじゃないのか」
こうした疑惑も出ていた。
「筑紫も酷い記事書くしな」
「あいつ等とは関わるな」
「大貝が省内に入らない様にしろ」
「どうせ碌な取材しないしな」
「嘘書くからな」
「嘘書くのは浅墓のお家芸だからな」
こうした話をしてだ、政治家や官僚達も大貝ひいては浅墓新聞の記者自体を避ける様になった。そんな中で。
大阪を中心に活動している政党の党首である箸本融がネットでも放送されている取材で党員達とも笑って話した、四角い感じの顔で黒髪を七三にしてはっきりした目鼻立ちの人物だ。
その彼がだ、こう言ったのだ。
「この前うちに取材に来た記者誰だったかな」
「浅墓の大貝さんですよ」
「あの人ですよ」
「自分で東大法学部卒業とか言ってる」
「政治部の」
「そうそう、そうだったよ」
箸本は笑って応えた。
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