フルグチョン
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第三章
「名付けたのだ」
「そうでしたから」
「どなたが父君かと思えば」
「貴方様でしたか」
「そうだったのですね」
「そうだ、これでわかったな」
神はエベンキ族の者達に穏やかな声で語った。
「全てが」
「誰にでも父親はいる」
「それならばフルグチョン殿もと思いましたが」
「それで調べましたが」
「真実は」
「こういうことだ、身寄りがなく殆ど誰とも付き合いがない者でも誰かと付き合いがあり」
そしてというのだ。
「誰にでも父親はいるのだ」
「そういうことですね」
「それが世の中ですね」
「その摂理なのですね」
「そうだ、では語ることは終わったな」
自分のとだ、ゲヴァン神は自分から言った。
「それではな」
「はい、それでは」
「お話して頂き有り難うございます」
「真実を」
「私も全てがわかりました」
フルグチョンも笑顔で神に話した。
「そして満足しています」
「それは何よりだ、ではな」
「それではですね」
「そうだ、そなたはこれからも家族を大事にし」
「エベンキ族の為に働く」
「そうするのだ、私も神の務めを果たしていく」
夜明けの太陽のそれのというのだ。
「そうして息子であるそなたを見守っていくからな」
「では」
「これからも励んでいくのだ」
ゲヴァン神は我が子に微笑んで話した、そうして夜明けの太陽の中に戻っていった。
フルグチョンも彼の家族も長老も他のエベンキ族の者達も神を見送った、そうしてこの日の仕事に励むことにした。英雄の父親のことを知った彼等は一つの謎を解いたことに満足しておりその顔は実に晴れやかなものだった。夜明けの太陽に負けないまでに。
フルグチョン 完
2019・9・15
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