戦国異伝供書
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第六十四話 婚礼の話その十二
「拙僧がです」
「竹千代と共にでおじゃるか」
「先陣を務め」
そうしてというのだ。
「織田家を突き崩していきます」
「戦になれば」
「そう致します、あの御仁も兵の数も気になりますが」
ここで雪斎は尾張の兵が弱いと言われていることは言わなかった、実は今川の兵も弱いからだ。このことは彼も義元も悩んでいるところだ。
「どうも家臣も」
「そちらもでおじゃるか」
「優れた者が多く」
それでというのだ。
「そちらの力もです」
「あるでおじゃるか」
「優れた家臣が多いと」
「それだけで、でおじゃる」
「かなりの力です」
「武田家を見ればわかるでおじゃる」
「どうもその武田家よりも」
織田家、吉法師の下にはというのだ。
「優れた多くの御仁がです」
「揃っているでおじゃるか」
「そうです、ですから」
「そのことでも油断ならぬでおじゃるか」
「ですから」
それ故にというのだ。
「何度も申し上げますが」
「織田家は当家の最大の敵でおじゃるか」
「そうなりますので」
それ故にというのだ。
「ご注意を」
「麿はどうも信じられぬでおじゃる」
例え雪斎の言うことでもだ、尾張の大うつけが今川家の最大の敵となることはだ。だがそれでもだった。
雪斎にだ、義元はこうも言った。
「しかし先陣は」
「拙僧と」
「竹千代に任せるでおじゃる」
雪斎の言葉を入れて断だった。
「そして二万五千の兵で」
「攻めまするな」
「北条家、武田家との盟約をより確かにした後で」
「後顧の憂いを完全になくし」
「そのうえで」
まさにというのだ。
「西に進むでおじゃる」
「その為にもです」
「一つ一つ手を打っていくでおじゃるな」
「左様です、あとその織田殿ですが」
雪斎はまた吉法師のことを話した。
「出来れば当家の家臣にです」
「降してでおじゃるな」
「すれば竹千代とです」
「並んで当家の柱となるでおじゃるか」
「随分癖の強い御仁なのは確かですが」
それでもというのだ。
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