曇天に哭く修羅
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第一部
Birthday(バースデイ)
前書き
_〆(。。)
観戦していた予選が終わる。
しかしすぐさま次の組が現れた。
「ねぇ。あんなの居た?」
【龍帝学園】の一年生で序列一位《クリス・ネバーエンド》が指差す方向を見た《江神春斗》の視界に一人の少年が飛び込む。
白い。
他の色が全く無い白髪だ。
「うーん、あれだけ目立つ頭をしてたら忘れないと思うんだけどなぁー。しっかし見事に白いわね……。染めてたりするのかしら?」
クリスの言う通り。
しかし髪の色以外には特に変わった所は無く、印象はあまり強くない少年。
だが春斗は感じていた。
強者が持つ特有の気配。
その少年が春斗の方を向く。
(なるほど。成ってみせたのだな。やっと舞台に上がれるというわけだ。良いだろう。そのまま強くなり続けろ。登って来たところを返り討ちにしてやる)
そう考えた春斗の背筋には僅かな寒気が走り、頬には一筋の汗が流れ落ちた。
黙り込んだ春斗にクリスが訝しんで彼の顔を覗くと春斗は口の端を吊り上げて笑いながら鋭い眼差しを白髪の生徒に向けている。
「クリス・ネバーエンド。この試合をよく見ておけ。退屈なことにはならん。漸く俺が待っていた相手が来てくれたようだ。これは少し考えておかねばならないかな」
その言葉にクリスは驚愕し衝撃を受けた。
さんざん自分からの挑戦を受けておきながら時には避け、時には逃げ、普段からスルーして、遂には三軍に落ちてしまった春斗。
(しかも三軍に行った理由が教官と合わない。私と戦わないで済む。その二つが理由の大半を占めるんだから腹立たしいわ)
そんな彼が喜んで戦うことを望む相手にクリスは嫉妬して少年を睨み付ける。
「ハルト。私が優勝したら勝負なさい。今回は逃がさないわよ。アンタにもこのクリス・ネバーエンドの実力を知らしめてあげるわ」
「そうか。それは楽しみだ。まあお前も『奴』も今回は優勝できんかもしれんからな。期待せずに待つこととしよう。万が一、本当に優勝すれば、[見合う力]で相手をしてやる」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
クリスと春斗の前で予選が始まる。
全員同時に【魔晄外装】を展開。
次々と三種有るタイプの何れかに属す外装が現れていく中でただ一人、白髪の少年だけが周りと違うタイプの魔晄外装を出す。
右腕を肘まで覆うそれは灰色の外殻を思わせる篭手であり、形状は不気味で怖ましい。
外装の随所には生きているかのように血管に似たラインが走っている。
「何だあの外装?」
「片腕を覆ってるだけじゃん」
「他の選手も笑ってるぜ」
「あいつが最初に脱落するな」
観客は口々に呟く。
クリスはその『規格外』と言われる【異能】が宿らない外装を見て、やっとのことで少年が誰だったのかを思い出すことが出来た。
「まさかあの白髪男……」
「そうだ。奴は吐き出される弱音と諦念に耐え、己の弱さを知り、かつての自分を殺すことによって生まれ変われたのだろう」
地獄から這い上がってきた少年の戦闘によって顕現したのは絶対的な暴力。
背からは魔晄の粒子が翼のように放出され、縦横無尽に結界の内部を駆け抜ける。
黄金に煌めく拳は一撃必倒。
他の九人による攻撃は双方を別ち絶つ【魔晄防壁】を強化したような鉄壁が阻む。
試合開始から20秒。
舞台は血の海と化す。
内臓が破裂して吐血を繰り返す者。
気が狂れたように転がる者。
睾丸を潰され壊れた機械のように呻く者。
白髪の少年は無傷だが他は全員が重傷。
「あの技……間違いない。しかしお前がその流派を学んだのは運命かもしれんな」
春斗は不敵に笑う。
その視線は少年を射抜いていた。
後書き
_φ(゚Д゚ )
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