魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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Duel:29 命のゆらぎ
――side花霞――
「心とは、なんですか?」
その質問を問いかけると。一瞬驚いたように目を丸くして、小さく唸る。
……何をしているんだ私は?!
と直ぐに思い立ち、やっぱりいいです。ごめんなさいと謝罪をしようとした瞬間。
「……生命ならではのゆらぎ、とでも言おうか」
……今度はこちらが面食らってしまう。
続けて、
「感情、思いやり、言葉を形成するもの、それをコントロールする理性等など色々あるが……私としての回答は前書のとおりかな」
「……あの、それでは。それじゃ私は――」
――やはり違うのでは? と言うよりも先に。
「君はAIだと言った。他の皆も持っているデバイスに内蔵されているものもAIだと。
だが、君を見ていて……震離君のエクスも見て、私達の知るAIとは一線を画すものだ」
エクス様のことも知っているんだという事に驚きつつも、ドクターの言葉に耳を傾ける。
「基本的にAIはマスターに寄り添い、その最善を導く。ここまでは普通のAIにも出来る。
だが君たちは違う。寄り添うだけでなく、時に突き放し、時に拒否として反応を受け付けず。それなのに、必要な時には全ての力を貸す。
それは人の生命……心のゆらぎと同じなんだ。人の心も様々な近くが現れ、去っては舞いもどり、いつのまにか消え、混じり合っては限りなくさまざまな情勢や状況をつくり出す」
「……」
思ってる以上の回答が飛んできて……本当に驚く。確かに思い返せば、他のデバイスも、拒絶したかは分からないけれど。寄り添って、主であるマスターの皆さんと共に歩んできたと言っていました。
レイジングハート様はなのは様と一緒に上り詰め、バルディッシュ様はフェイト様を護り、望んだ通りに無理を通せるようにしていた。
……特にリイン様が言う、姉のアインス様の件も思い返せば心がある故にあそこまで悩み、皆さんと出会う切欠に至ったと。
「……君が何を悩んでいるのかは分からない。けれど、私からすれば君もちゃんと心ある人に思えるよ」
……ふと頬に温かい何かを感じ、触れてみれば。
「……お父さん、駄目!」
突然後ろから抱きつかれたと気づいたと同時に、静かに。だけどはっきりとした声が聞こえて。
「……あ、七?」
「駄目、はなを泣かしちゃ。お父さんでも怒る」
プーッと頬を膨らませて怒ってますというアピールをしてる。
対してドクターを動揺しているのかアタフタしてて、どちらの様子も面白くて、
「ふふふ、大丈夫だよ七? ココアを頂いて、眠くなっちゃって欠伸したら涙がこぼれちゃった」
「……本当?」
「本当」
心配そうに私の瞳を覗き込む七に、ごめんねという意味も込めて答える。
するとパッと抱きついてた腕を緩めて、小さく笑ってから。
「……なら良い。お父さん私もココア飲みたい」
「はいはい。はな君は?」
「私は平気ですよ。七が飲み終えたら私も休みますね」
「……お布団から居なくなってたから驚いた。また一緒に眠ろう?」
さっきとは打って変わって、ふにゃりと今にも瞼が落ちそうだ。
きっと私が居なくなってて驚いて探しに来たんだろうな。
……答えを得た、いやその答えは、私なりの答えは時間を掛けて見つけるとして。
今は。
「うん、もう一度眠ろう。今度はちゃんと一緒に居るから」
少しずつ私を形成していく事に専念しましょうか。
……そう言えば、外にギンガ様と主の反応がありますが、どうかしたんでしょうか?
何も無ければ良いのですが。
――sideギンガ――
4日後に帰る。4日しか居られない。4日も居られる。
言い方は色々あるし、きっと皆さんは4日後に帰るという感覚なんだろう。だけど、私は――
――――
客間で静かに眠るスバル。皆の前だと明るいけれど、本来は大人しい子という現れなのか眠る時は、本当に大人しく静かに寝息を立てている。
ミッドチルダのお家と違って、耳をすませば時折家の前を走る車の音や、畳と木の匂いがしたり良い意味で慣れなくて、不思議と落ち着ける。
なのに……。
隣のスバルを起こさないように、一階で眠る母さんを起こさないようにゆっくりと玄関を潜って、夜風に当たる。
空を見上げれば……ミッドと違って月は1つ。ほんの少し歪んでいるけれど、殆ど真円に近くて、柔らかい光を発している。
やっぱり、この世界の空気は不思議で、落ち着くのに落ち着かないなと矛盾を思う。
こうして自分がいるけれど、ミッドチルダには当たり前にある魔力というものが世界に無いというのが、本当に新鮮な感覚だからだと思う。
加えて、月を背に違う空を見上げても……知ってる星というものが全く無いし、月明かりであまり見えないというのも勿体ない。
こんな時に、飛行魔法を取得しておけばと後悔してしまう。
もちろん、ウィングロードの上をブリッツと一緒に走るのは気持ちがいいし。ブリッツと出会った時はずっと一緒に走っていたけど。
こんな夜に、夜風と共に飛べたら……と考えることはある。
ふと、ココには居ない友達を……アーチェを思い出した。
シスターで騎士をしている、変わった女の子を。
シスター服をモチーフの騎士団の防護服の時は、機動力と重い手数に比重を置いたスタイルに対して、本来の防護服の時は機動力を捨てて、装甲と重い一撃に比重を置いた陸戦主体の子。
陸戦のランクを取って居たけれど、飛行魔法、飛行技術も有していて、一度だけ一緒に空を飛んだ……いや、落ちてたというのが正しいのかな?
遺跡のこともちょっと前だったのに、遠い昔のように思える。色々あったなぁ。
そうだ、まだ言えてなかったっけ。私に―――
「こんな夜にどうしたんですか。ギンガお姉さん?」
突然の声に驚く。
けれど、その人を見て直ぐに安心して。
「こんな夜中に起きてちゃ駄目じゃない。ねぇ響?」
一応誰かが来ても良いようにセンサーだけ起動して、縁側に座れば響もトコトコと着いてきて隣りに座って。
「で、どうしたんですかー? ギンガお姉さんはー?」
「悪くないけどくすぐったいからやめて。あと、誰かが来たら分かるから戻してもいいよ」
ニマニマと笑いながら言う響の言葉は悪くないけど、からかっていってるのが分かるから止めさせる。
同い年……とはいえ、今は小さくなってるけど中身はしっかり響だからちょっと困る。
「サンキュ、で? こんな夜更けに外に出るとか中々よ?」
「……ちょっとね」
響の視線から逸らすように、空を見上げながら返す。
色々考えてた、だけどその根っこにあるものは……。
「……この世界、色々不思議だよな。居なくなった人が居たり、知ってる人たちが変わったポジションに居て……優しくて幸せな世界だよな」
「……うん」
母さんが居る。生まれは違えど、同じように生まれた姉妹と呼べるかもしれない子達が、ここでは妹として、姉としても存在してる。
何より、ありえないと思っていた幼少期の姿も見られた。
私とスバルは、成長フレームを使っていたから子供の頃というものが存在していた。でも、他の皆は違う。
純粋培養と、クローン培養という違えはアレど、皆は生まれた時から今の姿である意味で不老を獲得している。
ある程度の生理現象はあるとは言え、基本的に姿が変わることは無い。
だから……皆の幼少期を見れて、姉妹をしているのを見た時。心から嬉しかった。
私達の世界でも、まだ可能性があるんだって。
でも――
「ねぇギンガ? ギンガは……この世界に残りたい?」
いつか聞かれると思ってた質問に、心がざわつく。
後のためにも、今のわたしの答えをちゃんと言わないとね。
後書き
引っ越します!
色々ようやく片付き、引っ越すことになりました。と言っても隣の県に。
その手続き等などで更新が遅れてしまい申し訳ございませんでした。
といいましても、これから引っ越すので、まだ落ち着かないタイミングですが……。
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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