魔法少女リリカルなのは~とある4人の転生者~
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第8話 初陣そして遭遇
前書き
予告どおりバトル回です。
船に乗ってから数時間後進路の方向に島が見えてきた。島の近くに寄って一旦船を停止させる。俺とちぃさんとレオ神父が三人で双眼鏡をのぞくと…
「結構いるわね。こんなヒドイ事態2年まえの豪華客船のとき以来ね」
「事ここに及んでは生存者は絶望的と言ったところか」
「…」
島にはわずかな明かりしかなかったけど、気配察知能力のせいかここからでも人ではない何かが大量に蠢いているのがよく分かる。今語られたちぃさんの経歴にツッコミたいがそれ以上に帰りたい。今すぐにでも。あんな数相手にするとかありえない。
「…」
「にしても、こんなことになったら私や教会とかが出張ってくるの分かってるハズなんだけど」
「つまりはソレほどまでに今回の件の中心には強大な『何か』があるのだろう」
「そうよねぇ…って、朔也?さっきから一言も口利いてないけど平気?」
真面目に話をしていたちぃさんが俺が絶句しているのに気がついたのか心配そうに覗き込んでくる。
「…帰っていい?」
「ダ~メ!」
俺の万感をこめた呟きもあっさり笑顔で拒否された。この人じつは天然の皮をかぶった真正のドSなんじゃなかろうか?
「まぁ、安心しなさい。私たちが出来る限りフォローするから」
と言ってちぃさんは袋から日本刀を取り出す。
「そうだぞ。一応我々が着いている。心配ないさ。これでもこの手のことに関しては手馴れている」
レオ神父にいたっては棺桶から…ガトリングガン、ロケットランチャー、短機関銃etc…と大量の重火器を取り出している。神父がこんなことに手馴れていてよいものかというツッコミもこの場においては意味をなさないのだろう。なぜなら、この場においては異常であることが正常なのだから。
「ああ、何かあったらこれで我々を呼べ」
と言ってレオ神父が俺に渡してきたのは…
「発炎筒?」
一台に一つみんなの発炎筒である。…通信機はなかったのだろうか。
「それを焚けば可及的速やかに援護に向かう。まぁ、初実戦とはいえ出来る限り使わないことを心掛けて欲しいものだ。なにせ私の場合こんな風に巻き込んでしまいかねんからなっ!」
レオ神父が棺桶から出したロケットランチャーを構えて島のさっき確認した場所に向けてぶっ放した。弾道はよく見えなかったが着弾したのだろうさっきまでぽつぽつとした明かりしかなかったところがいきなり爆ぜた。そして次の瞬間には火の手が上がり先程の数倍にも上る明かりになっていた。
「この発炎筒使わないようにしよ…」
そう心に誓った俺だった。
「しっかり掴まっておけ!」
強襲揚陸船の正しい使い方で、乗り込むらしい。船に再びエンジンが入れられまっすぐに島へ向かっていく。そこまで離れていなかった島との距離は瞬く間に無くなっていき、衝撃と共にその船体を浜辺に乗り上げさせた。
「さて、いくわよ!」
「ああ!」
「ハイ」
と言うわけで乗り込んだ俺たちだったけどついた瞬間ゾンビもどきが寄ってきてちぃさんが刀振り回すわ、レオ神父が掃射しまくるわで命からがら離れたわけだが…食屍鬼達よりもあの2人に殺されそうになったほうが多い気がするのは気のせいだろうか。
「生で見ると気持ち悪いのもいるなあ」
後方で剣戟と銃撃の音を捕らえつつ移動しているといつの間にか居住地区にまで来ていたようで行く手に大量の食屍鬼が立ちふさがった。食屍鬼達への第一印象だが、個体によって損壊度が違う。肌が抉れてグロテスクになっているのもいれば、そう変わらないのもいる。正直やりにくいが、やるしかないな。
「いきなりかよっ!」
待ってくれそうにもないのは分かっていたので俺に近づいて来た一体をまずは黒鍵の抜き打ちで仕留め、そのまま前進して黒鍵を回収し周囲にいた数体を切り裂いて胴体と頭部を分断し、確実に仕留める。それを皮切りに食屍鬼達が俺に襲い掛かり始める。
「セイッ!」
後ろに迫ってきていた食屍鬼を回し蹴りで粉砕し、
「タァ!」
そのまま振り向きざまにもう一体に一撃をいれ、
「フンッ!」
遠くにいるソレらに手に持った剣を投擲し眉間に当てる。が、
「全然数が減らん…これ素人にやらせる数じゃないだろ」
自分の周りを見渡すといつの間にか視界の中には食屍鬼しかいなくなっていた。360°全て埋め尽くされている。所謂囲まれたという奴だ。
「ゲームやってて一度やってみたいとは思ったけど、実際やってると気分悪くなるな。なら能力も使うか」
幻術を用いて、同士討ちを狙うが…
「…効いてねぇ」
そもそも思い返せば幻術とは理性がなければあまり効果をなさないものであり、食屍鬼のような意識を完全に失ってるような奴には意味を成さないのは当たり前だった。
「まともに戦うしかないか」
先程と何も変わらぬ現状にため息を一つつくと自身の懐から追加で剣の柄を取り出す。
「起動」
柄に自身の力、魔力を流し込んで刀身を発生させる。友人から試供品としていただいたもので不安がないとは言わないがないよりははるかにマシだ。なにせ…
「ゾンビもどきを素手で倒すの気分が悪いからなぁ」
と、自分を取り囲んでいる食屍鬼見回して再びため息をつく。ふと、頭の中で今日一日のことを思い起こす…数時間前までは自分は間違いなく入学式にいた。でもって教室で友人が喧嘩→逃走→帰宅→ちぃさんに『今から出かけるから』と|黒服を渡され→臨海公園に止めてあった船にちぃさんの変人コミュの棺桶かついだ神父さんと共に乗せられ→移動中に現保護責任者の裏事情について聞き→ある島につく→ゾンビカーニバル!…どうしてこうなった。
「こういうことになるなら、武器持ってけとか言えよ!」
叫ぶと同時に包囲の一番薄い箇所に向かって突進する。薄いといっても数体の大人の食屍鬼がいるが十把一絡げに制圧する…のは無理なので、手に持った剣を投擲して一番前にいる2体の急所に直撃させて葬り、後方にいた残りに向かって、
「ウラァ!」
強烈な蹴りを頭部に向かって放ちまとめて粉砕する。そのまま蹴りの勢いを殺さずにその場を離脱。いったん家屋の上に退避して身を隠す。
「敵の数に対してこっちの攻撃手段がほぼ近接一択とかどんなムリゲーだし」
とぼやきながら数少ない自分の装備を確認する。
「フォースからもらった試供品の『黒鍵』が残り11本。それに加えてレオ神父からもらったお助け用の発炎筒が一本、飛び道具はほとんどなし、魔法も使えるほどではない。しかもあいつ等に幻術は効かないときてる」
さっきのやり取りで使ってはいたけどあのゾンビもどき…ちぃさん曰く食屍鬼だっけか?何の変化もなかったからな。
「黒鍵に関してはこんな乱戦じゃさっきみたいに回収してる暇は無いから多分そう遠くないうちに無くなるとして、でも発炎筒に至っては使ってしまったら向こうで死徒とかいう強いのと戦ってるちぃさん達に迷惑がかかるか。…それ以上に巻き添えくいそうだけど」
少し離れた場所に赤く光っている方向を見る。…明らかに燃えてるよねアレ。しかも時折爆発音が聞こえるし。あの神父棺桶に何詰め込んでんだ?
「ちぃさんとあの神父さんどんだけハッスルしてるんだよ…その元気を俺にも少し分けて欲しいくらいだよ」
屋根の端から顔を出して周囲をみるがやはり、食屍鬼だらけだ。今感じる気配だけでも100は越しているんじゃなかろうか?
「リアルに詰んだ…もう覚悟決めて素手で無双したるか」
無双云々は兎も角、ここから先は純格闘戦になるため今自分が使える数少ない魔法を使って身体硬化をかける。それにちぃさん達の戦ってる場所に思ったよりも近くなっている以上離れたほうが得策かもしれない。このままではアレに釣られて食屍鬼たちが寄って来かねん。
「死徒か…」
ちぃさんが戦ってるのは俺が戦ってる食屍鬼よりもはるかに個体として強いらしく(もっともちぃさん達には紙屑の如く吹き飛ばされていたが)、素人の俺にはあまりお薦めできないらしい。なんでも、食屍鬼のように頭部を破壊するか肉体を活動不能に追い込むといった分かりやすい弱点が存在しないらしく、『核』と呼ばれる部位を完全に破壊しないといけないらしい。ちなみに死徒の上には真祖と呼ばれるある方法を除いて殺すことの出来ない最強の存在が君臨しているらしい。ちなみにこいつらをまとめて|吸血種(オーガ・バンピエンス)と総称する。
「だから燃やしてるのか。そりゃ全部丸ごと燃やせば楽に決まってるわな」
さきほどから向こうのほうを赤く光らせている炎はそのためだろう。元々アンデッドそのものにも炎は有効のうえ全身くまなく燃やし尽くすほうが探し出すより楽だからな。…ちなみに食屍鬼の習性上あの2人の戦場の近くにいると自然と大量の食屍鬼を相手にしなければならなくなるという(俺にとっての)デメリットがあるが。
「って、そうじゃなくて。ここにいたら俺まで巻き込まれかねん。さすがに丸焼きは勘弁だ」
無事な家屋の屋根を伝って海の方まで移動していく。食屍鬼は音を頼りに獲物を探す。そのため波の音が絶えない海岸は特定されない見晴らしが利くという意味では最適だと判断したのだが、結果としてこの行動は裏目に出ることになる。…それはもう最悪な形で。
「うわぁ…」
海岸に出た俺を待っていたのはおびただしいほどの死体と、
『…』
その死体の中に佇みこちらに視線を向けるこの光景の再現者の人影らしきものだった。その人影は黒衣をまとい、長く白い髪を流し鬼の面をつけていてその仮面から除く双眸には明確な闘志がこもっている。
『失せよ』
「ッ!?」
人影が一言口にすると同時にその手から閃光が迸り、自分の横を通過して自身の後方に駆けていった。恐る恐る振り返るとそこには、無残にも灰になっていく大量の食屍鬼だったものがあった。
『…汝』
再び人影が口を開く。今度もあの閃光がくるのではないかと身を硬くするが、未だあの光は発せられなず、代わりにその人影がこちらに近づいてくる。海辺に立っていたと言うのに水面に波紋も立たせずに。まるでそこに本当は存在しない『幻影』のように。
「ッ!」
その目を向けられた瞬間に自分の体に走った悪寒は果たして、恐怖か、それとも…
『汝…示せ』
「…勘弁してくれっての」
武者震いか。
後書き
8話目にしてやっとバトル回が書けました。
バトルシーンは難しいイメージがあったり苦手だったりするので文体が稚拙かもしれませんが、これからコツコツと頑張っていきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。
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