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おっちょこちょいのかよちゃん

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26 家を失くした少女

 
前書き
《前回》
 梅雨時に珍しく晴れた日、かよ子の母・まき子はかよ子、隣に住むおばさん・羽柴奈美子とその甥・三河口に娘に渡した不思議な杖についての話を始めようとする。その杖は終戦直後に異世界の人間から貰った物だと明かすのであった!! 

 
(異世界から貰った物・・・!!そういえば前にフローレンスさんと会った時もそう言ってたし、私には不思議な能力があるって言ってた・・・!!)
 かよ子は以前平和の為に動いている異世界からの女性・フローレンスに会った時の事を思い出した。
(戦争が終わった後の時も異世界と繋がっていたのかな?)
 かよ子はそれを気にしながら母の話を聞く事にした。

 1945年8月の終戦、日本は負けた。米軍の空襲で都市部は破壊されつくした。当時の姓は北条だった為、北条まき子と名乗っていた頃の山田まき子は何とか家族と共に戦火から逃れようと走り続けた為か、何とか生き延びた。しかし、家は焼け崩れてしまった。それからは常に外にいるような状態で何もできなかった。何もかも失くしてしまった。大事な教科書も、読んでいた本も、隠し持っていたお菓子も・・・。食べ物など入手困難で、飢えをどうしのごうか苦労したものである。沢山水を飲むなどしたものである。
(いつになったら食べられるの・・・?元の生活に戻れるも・・・?)
 先の見えない中、まき子は食べ物を探そうと歩き続けていた。食料の配給が再開しても食糧不足の為、配給が遅れる事の方が多く、配給など当てにならなかった。魚や貝でも獲ろうかと思い、海に出てみたが、見つからない。そんな時、まき子は一人の年上の女子と出会った。
「あれ、まき子ちゃん・・・?」
「もしかして、隣の奈美子お姉ちゃん・・・?生きていたんだ!!」
 隣に住んでいた奈美子に出会った。空襲の際、どこに逃げていたか不明だったが、生き延びていたのだ。
「いやあ~、まき子ちゃんも生きてて良かったよ」
「うん!でも、どうしてたの?」
「貝とか魚とか探して食べようかと思ってたんだけど、なかなか見つからないし、釣れないし・・・」
「私もだよ。日本が負けたからかな。アメリカに港とか取られちゃったし・・・」
「うん・・・」
 二人は諦めて帰ろうとした。
「まき子ちゃん、海がダメなら山行ってみない?」
「そうだね・・・」
 二人は山の方へと向かう。何か木の実があればいいと思ったが、そこにも見つからない。
「はあ、お腹すいたな・・・」
 何も食べられるような物が見つからず、二人は諦めて帰ろうとした。その時・・・。
「貴女達」
 どこからか女性の声がした。
「え!?」
 二人は誰かいるのかと思い、見回したが、そこには姿は見えなかった。
「私はそこにはおりません。貴女達は今、ひもじき思いを成されている。そうでしょう?」
「そ、そうです」
 奈美子はとりあえず返答した。
「私は三穂津姫(ミホツヒメ)。富士山・御穂の神です。貴女方をお助けする為にお呼びしました。御穂神社の所へお行きなさい。そこに貴女達をお助けできる『もの』がございます。では」
 それ以上は謎の声は聞こえなかった。
「奈美子ちゃん、どうしよう?」
「とにかく、言われた通り、御穂神社に行ってみよう」
 二人は御穂神社へと向かった。

 まき子と奈美子は御穂神社の焼け跡に辿り着いた。ここは何とか戦火を免れており、鳥居も、社殿もそのままだった。
「それにしてもこんな所に何があるんかね?」
「うん、でもここに私達を助けてくれるものがあるっていうし」
「かつがれただけじゃないの?あの声ももしかしたら誰かの悪戯だったりして」
「う、う〜ん」
「いいえ、私は貴女方を騙してはいません」
 先程と同じ声がした。二人は周りを見回すと、上から一人の女性が舞い降りてきた。二人は天女かと一瞬思った。
「私こそが貴女方をお呼びしました、です。貴女方は只今相当な苦労をしておられる。ですが、私なら貴女方の今の状態を変える事ができる物があります」
「今の状態を変える物?それってどこにあるの?」
「あの神馬の所にございます。あちらにある杖と護符がまさにそれです」
 三穂津姫が指を指した方を見ると確かにその神馬に杖と護符あった。
「それは平和を願おうとする世界から贈られた杖と護符。北条まき子さん、貴女はこちらを、三河口奈美子さん、貴女はこの護符をお持ちなさい」
 二人は三穂津姫から言われた通りに杖と護符を手にした。
「これにはどんな意味があるの?」
 まき子は質問する。
「貴女が持つ杖は様々な物に向ければその物を型取る言葉ができます。例えば炎に杖を向ければ炎を操る事ができ、風が吹いている時に杖を出せば竜巻を作ったりなどの風を操る事ができます。説明書もお付けしましたのでお読みになられてください」
「じゃあ、これは?」
 奈美子が続けて質問する。
「貴女のその護符は富士山のが込められたものです。何か苦痛な事に耐えられぬ時が訪れた時、その護符は必要な、あるいは役立つ物を授けたり、それがある場所へと導きます」
「凄いねえ!」
「但し、単なる私利私欲には効果がありませんのでお気をつけてください。説明書もございます」
 御穂の神は説明を続ける。
「今のような苦痛の時期には大いに役立つはずでしょう。しかし、貴女方の生活が安泰になってきた時無闇に使うと天罰が下ります。ではよく考えてお使いになられてください。では」
 三穂津姫は天に昇って姿を消した。
「これ、慎重に使わなきゃね、まきちゃん」
「うん」
「これで食べ物でも出せればなあ〜」
 奈美子は呑気な事を考えた。その時、奈美子の護符が光りだした。
「え!?」
 二人は驚いた。護符は奈美子の手を離れ、海の方へと向かった。
「お、お〜い!」
 二人は護符を追いかけた。海の前で護符が止まった。そこから二人の所に魚が飛んできた。魚はマグロだった。
「うわあ、マグロだ!見るの久しぶりだよ!」
「その護符のお陰だね!」
 二人はマグロを一匹ずつ、持ち帰るのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「久しき食事」
 かよ子の母、まき子の思い出話は続く。まき子は持ち帰ったマグロについて、いい料理ができないか考えた所、三穂津姫から貰った杖を利用する事を考える・・・。 
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