戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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見習い騎士は儚き未来に思いを馳せる
前書き
未来さんにも春が来ると言ったな?
その予告を現実のものとする日が来たッ!
普段の、くっつける相手との相性重視したキャラメイクで作ってるオリキャラと違って、名無しモブからの出世なんだよね今回……。すげぇな……。
そんな大出世を果たした人物が誰なのか。気付いていない読者は、読んで驚いてください!
今日の全ての授業が終わり、翔が鞄を手に立ち上がる。
「翔、お先に失礼」
「純、今日も雪音の所か?」
「勿論。共学出来るのは今だけだからね」
クリスを迎えるため、教室を出ていく純を見送る。
それから自分も教室を出ようとしたところで、置いていかれたUFZの四人が翔に話しかけた。
「おいおい翔!お前まで行っちまうのか?」
「この後、響と駅前のクレープ屋見てくるんだよ」
「なるほど、デートか。なら、紅介の事は置いて早く行ってあげるといい」
「んだよ焼き鳥!俺の扱い雑じゃね!?」
「焼き鳥ではないッ!デートで女の子待たせるのは万死に値する罪だぞ!?」
「いやいや、お前いちいち大袈裟なんだよ~」
「二人共、そういう中学生レベルの喧嘩はやめてくれ。また四馬鹿扱いが酷くなるぞ?」
いつものように口喧嘩を始める紅介と飛鳥。諌める恭一郎。
そして流星は翔に軽く手を振っていた。
戻って来た日常の風景に、翔は穏やかな笑みを零す。
「はは、やっぱりこのメンバーは最高だな。じゃ、また明日」
そう言って教室を出た翔の背中を見送り、紅介、飛鳥は溜息を吐いた。
「何か、翔も純も、一気に遠くなっちまった気がするな……」
「彼女が出来たんだ。この部活は、あの二人を目指して設立したものなのだから、当然の結果だろう……」
「あ~……俺も彼女欲しー!」
紅介の叫びが教室全体に響き渡る。恭一郎は呆れた顔で紅介を見ていた。
「奏さんみたいな快活さと包容力の溢れた人が居ねぇかなぁ……」
「いや、求め過ぎだとは言わないが……理想が高くないか?」
「僕も、翼さんみたいなクールで知的な人に出会いたい……」
「飛鳥、君もかい!?」
「……僕は、趣味が合って、読書の邪魔をしてこないならそれで……」
「流星まで!?……はぁ……三人とも、そう言うくらいなら自分から探しに行かなくちゃ……」
恭一郎は三人の肩を軽く叩くと、自分の鞄を手に教室の引き戸へと向かう。
「ほら、もう放課後だろう?折角リディアンの女の子達が、期間限定で共学なんだ。いい娘を見つける機会があるなら、活かさない手はないんじゃないかい?」
「ミラちゃん……」
「恭一郎……」
紅介と飛鳥が立ち上がる。
流星は読んでいた本から一旦目を離すと、三人を見回した。
「ほら、三人とも行くよ。翔が待ち合わせしてるって事は多分、小日向さん達もいる筈だ。良い娘紹介してもらえるよう、頼めるんじゃないかい?」
「「それだ!」」
紅介と飛鳥は鞄を手に、腰掛けていた机を立つ。
流星も、読んでいた本に栞を挟んで立ち上がると、恭一郎の後に続いた。
「……恭一郎、前から思ってたんだけど……」
「ん?どうした流星?」
「……あの四人の話をする時、いつも真っ先に小日向さんの名前を挙げるよね?」
流星の言葉に、一瞬だけ恭一郎の肩が跳ね上がった。
「……もしかして恭一郎、小日向さんのことs「流星!その話はやめよう、いいね!?」むぐぐ……」
慌てた顔で頬を赤らめつつ、流星の口を塞ぐ恭一郎。
会話の内容が聞こえていなかった紅介と飛鳥は、不思議そうな顔でそんな二人を見つめているのだった。
∮
校門の向こうへと去っていく、現在校内でも噂のラブラブカップル。
その後ろ姿を見送る四人の女子生徒の方へ、四人の男子生徒が近付く。
「おっ、リディアンカルテットじゃん。何だ?女子会か?」
「あっ、四バカ!」
「四バカではない!アルティメイトフレンズゼータだ!」
「略してUFZ」
からかうような口調で現れた紅介に対し、弓美から不名誉な方の呼称で呼ばれた飛鳥は、それを大真面目に訂正する。流星も丁寧に、真顔で略称を補足する。
「相変わらず長いね……。ってかムラコー、私達の名前テキトー過ぎない?」
「だったら、お前らもグループ名決めたらいいじゃねえか。安藤、そういうの得意なんじゃねぇの?」
「う~ん、グループ名かぁ……」
「加賀美くん達の部活名、中々イカしてますもんね」
紅介、飛鳥、流星と創世、弓美、詩織が談笑を始める中、恭一郎は未来の隣に立つ。
「小日向さん」
「加賀美くん……」
「元気がないように見えるけど、どうしたんだい?」
「ううん……なんでもない……」
絶対に何かある。恭一郎はそう確信した。
共学するようになり、未来を見る中で恭一郎は、彼女の性格を理解しつつあった。
内向的で自分の意見をハッキリ言えないタイプ。親友である響に依存しがちな節があり、どこか危うい……。
そんな未来の事を、恭一郎は気にかけるようになっていた。
(友達思いな強い子だと思ってたけど……小日向さん、普段はちょっと弱々しいんだな……)
恭一郎が未来を意識するようになったのは、ルナアタック事件の渦中だ。
あの時、誰もが絶望しかけた中でも諦めず、戦場に立つ親友の為に周囲を動かした彼女の姿に、恭一郎は惚れていた。
共学するようになり、普段の彼女の性格を知ってからは、尚更惹かれるようになっていた。
心優しい人を守る、優美なナイトでありたい。純の”王子様”としての在り方に惹かれた恭一郎にもまた、そんな夢があった。
幼かった頃、物語の中に出て来た騎士の姿。そのかっこよさに心を打たれ、そうなりたいと本気で思っていた、純粋だったあの頃。それを思い出させてくれた純を、恭一郎は友人として深く尊敬していた。
そして、ナイトにもまた、剣を預けるべき姫君が必要だ。恭一郎にとってのそれは、一目惚れした未来こそが……。
だからこそ、恭一郎は今、未来をどう励ませばいいのかを考えていた。
「小日向さん……悩み事、あるんだよね?」
「……どうして、そう思うの?」
「小日向さんの顔、どう見ても大丈夫そうじゃないから……」
「え……あ……」
「──僕でよければ、相談に乗るよ。何が出来るかは分からないけど、それでも、僕に出来る範囲の事はする。だから……だから、その……えっと……」
肝心なところで良い言葉が浮かばず、詰まってしまう恭一郎。
どう締めればいいのかと考えを巡らせれば巡らせるほど、しどろもどろになるばかりだ。
その様子を見て、少しずつ未来の表情が変わり始める。
下がっていた口元が徐々に緩み、やがてその顔に笑顔が浮かんだ。
「ぷっ……ふふっ、ありがとう」
「え……?」
「加賀美くん見てると、何だか可笑しくって」
「そっ、そんなに……?」
頼りない姿を見せてしまった、と肩を落とす恭一郎。
しかし、未来はそんな彼に優しく微笑む。
「でも、ちょっとだけ元気出た。だから、ありがとう」
「……い、いや……大したことは……」
照れ臭そうに頭の後ろを搔く恭一郎の顔は、茹でダコのように真っ赤になっていた。
しかしその顔は真っ赤な夕陽に照らされており、未来は恭一郎の表情には気が付かない。
そんな二人の様子を、友人六人は一旦口を閉じて、静かに見守っていた。
「ねえ、もしかしてカガミンって……」
「あー……こりゃ間違いねぇな……」
「だよね?」
「そうだな」
「これはどう見ても……」
「今頃気付いたの?」
それぞれ、顔を見合わせる創世、紅介。恭一郎と未来を交互に指さす弓美と、頷く飛鳥。その予感に口元を緩ませる詩織と、一同を見て不思議そうに首を傾げる流星。
今はまだ、届かない想い。だけどいつか、少年が勇気を胸に一歩踏み出せば……或いは、未来がもう少し彼に意識を向けるようになれば、きっと……。
(今のままじゃダメだ……。もっと、もっと頼れる男にならないと……!未来さんに振り向いてもらえる、理想のナイトになるんだ……ッ!)
少年の胸に灯る決意。彼が歩む理想への道のりは、ここから始まる──。
後書き
如何だったでしょうか?
恭一郎くんと未来さん……そう、即ちどちらも『鏡』なカップルです!
戦場に立つ者同士、またはその後方で支えてくれる人とのCPも好きですが、たまには一般人とのCP、或いは一般人同士のCPもいいと思うんですよ。
翔ひびや純クリみたいなメインCPと比べると目立たないけど、未来さんも幸せを掴めたと実感出来る。そんなカレーの福神漬けみたいなポジションを心がけられたらなぁ、と思います。
ミラーナイトな恭一郎くんですが、彼は伴装者になるのか?という疑問を持った読者さんがいるとかいないとか。
答えとしては……ノーコメントですね(ニッコリ)
それでは次回、おがつばってるライブで会いましょう!(笑)
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