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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第6楽章~魔塔カ・ディンギル~
  第53節「リディアン襲撃」

 
前書き
無印最終章、突入!
そして遂に今回は、司令のターン!OTONAの拳が全てを砕く!

ところで遂にとうとう、XDUではひびみく連携技が出ましたね。
そしてまーた393を惚れ直させてるビッキーよ……。流石おっぱいのついたイケメン。
え?伴装者世界だとどうなのって?
リディアン主催のイベントだから仕方なく撮影側に回る翔くんと、王子役を演じるにあたって純くんに色々教えてもらう響……ですかね。
劇が終わった後で楽屋まで来た翔くん見て、未来さんが思い付いたように翔ひびでメモリアのイラストになってるシーンやらせてくれる……とか。

さーて、それじゃあクライマックス突入!
ここから怒涛の展開の連続だから、覚悟してくださいね! 

 
 バオォォォォンッ!
 
 巨大な強襲型ノイズ達が、リディアンの校舎を蹂躙していく。
 朝までの平穏は踏み躙られ、潰れ、壊され、消えて行く。
 避難指示を受け、悲鳴を上げながら逃げ惑う生徒達。銃や戦車といった現代兵器による飽和攻撃を仕掛けるも、位相差障壁の前には届かず、破壊された戦車の爆発に巻き込まれ命を散らしていく自衛隊、特異災害対策機動部一課の隊員達。
 しかし、命を散らしながらも懸命に立ち向かう彼らの奮闘により、生徒は誰一人として欠けることなくシェルターへと逃げ延びる事が出来ていた。
 
「落ち着いてッ!シェルターに避難してくださいッ!……落ち着いてね」
 避難誘導を手伝う未来の元へ、安藤らいつもの3人が駆け寄る。
「ヒナッ!」
「みんな!」
「どうなってるわけ?学校が襲われるなんてアニメじゃないんだからさ……」
 困惑し、不安げな表情を浮かべる板場。
「皆も早く避難を」
「小日向さんも一緒に……」
「先に行ってて。わたし、他に人がいないか見てくるッ!」
 寺島の言葉へ首を横に振り、走り去る未来。
「ヒナッ!」
「君達!急いでシェルターに向かってください!」
 そこへ、銃を抱えた隊員が走って来る。
「校舎内には、ノイズが居て──ッ」
 次の瞬間、天井を突き破り現れたフライトノイズが、その隊員の胸を刺し貫く。
 あっという間にその隊員は、ノイズと共に炭化し、崩れて消えた。
「ッ……!きゃああああああああぁぁぁッ!」
 
 ∮
 
「誰かー?残っている人はいませんかー?」
 逃げ遅れた生徒を探す未来。そこへ、爆発音と共に強い振動が押し寄せる。
 外を見るとそこには、崩れ落ち煙を上げる校舎と、敷地内を跋扈するノイズの群れ。
 リディアン音楽院は、見るも無残な姿と成り果てていた。
「……学校が、響の帰って来る所が……」
 その時、勢いよく窓ガラスを割って3体のクロールノイズが侵入し、未来の方を見る。
「──ッ!?」
 次の瞬間、その体を紐上に変化させたノイズ達が未来を目掛けて突撃する。

「くッ!」
 見慣れた黒服の青年が、一瞬素早く未来の身体を抱いて床へと身を投げ出す。
「あ……う……お、緒川さん?」
「……ギリギリでした。次、上手くやれる自信はないですよ?」
 いつもの余裕を崩さない笑みを向けると、緒川は未来の手を引いて立ち上がらせる。
 振り返ると、狙いを外したクロールノイズは、見慣れたカエル型の姿に戻る。
「走りますッ!三十六計逃げるに如かずと言いますッ!」
「は、はいッ!」

 未来の手を引き走る緒川。目の前にあるエレベーターのボタンを押し、未来が飛び込んだ瞬間、自身もその中へと飛び乗り、二課の通信機をかざす。
 扉が閉じ、更にシャッターが閉まるエレベーター。その僅かな隙間を潜って、クロールノイズは侵入しようとする。
 しかし、間一髪。エレベーターが降下を始め、クロールノイズ達はエレベーターへと侵入することなく、リディアンの1階エレベーター前に取り残された。
 ホッと息を吐き出し、床へとへたり込む未来。緒川は通信機を弦十郎へと繋げた。
 
「……はい、リディアンの破壊は、依然拡大中です。ですが、未来さん達のお陰で、被害は最小限に抑えられています。これから未来さんを、シェルターまで案内します」
『わかった、気を付けてくれ』
「分かりました。それよりも司令、カ・ディンギルの正体が判明しました!」
『なんだとッ!?』
「物証はありません。ですが、カ・ディンギルとはおそらく──ッ!?」

 その時、エレベーターの天井が音を立てて凹み、窓ガラスに亀裂が走る。
 天井を破って現れた人物。未来の悲鳴が、エレベーターシャフト内に反響した。
「きゃああああああッ!?」
『どうした、緒川──ッ!』
 途切れる通信。緒川は、天井から入って来たその人物に首を掴まれ、持ち上げられていた。

「う、うう……」
「こうも早く悟られるとは……。……何がきっかけだ?」
 腰まで伸びた金髪に、全身を覆う刺々しい黄金の鎧。ネフシュタンを纏ったフィーネは、それを突き止めた緒川を睨みながら問い詰める。
「塔なんて目立つものを、誰にも知られることなく建造するには、地下へと伸ばすしかありません……。そんな事が行われているとすれば、特異災害対策機動部二課本部──そのエレベーターシャフトこそ、カ・ディンギル!そして、それを可能とするのは──」
「……漏洩した情報を逆手に、上手くいなせたと思っていたのだが──」
 
 ポーン
 
 エレベーターがフロアに着いた音が響く。
 ドアが開いた瞬間、緒川はフィーネの手を振り解いてそこを飛び出すと、懐から取り出した拳銃を3発連続で発射する。
 剥き出しの生身、腹部に命中した弾丸はその皮膚を突き破ることなく潰れ、全て床に落ちた。
「ネフシュタン……ッ!ぐああーッ!」
 エレベーターから飛び出した際に距離を取っていた緒川。しかし、フィーネはネフシュタンの鞭を振るい、緒川の身体を締め上げる。
「緒川さんッ!」
「ぐっ……うっ……ぐああッ……!み、未来さん……逃げ、て……」
「ッ!……くっ……このっ!」
 緒川に逃げるよう言われたが、未来は逃げない。目の前の緒川は放っておけないし、何より響と約束したのだ。帰る場所は守ってみせると。
 未来はフィーネの背に体当たりする。しかし、フィーネは微動だにしなかった。
「……」
「ひっ……」
 背後を振り返り、未来をひと睨みするフィーネ。
 縛り上げていた緒川を投げ下ろすと、彼女は未来の顎に指を添えた。

「麗しいなぁ。お前達を利用してきた者を守ろうというのか?」
「利用……?」
「何故、二課本部がリディアンの地下にあるのか。聖遺物に関する歌や音楽のデータを、お前達被験者から集めていたのだ。その点、風鳴翼という偶像は、生徒を集めるのによく役立ったよ。フフフ、フハハハハ……」
 高笑いと共に、デュランダルの保管されている区画へと立ち去ろうとするフィーネ。

 その背中を毅然と見据え、未来は声を張り上げた。
「嘘を吐いても、本当の事が言えなくてもッ!誰かの生命を守るために、自分の生命を危険に晒している人がいますッ!わたしはそんな人を……そんな人達を信じてる!」
「チッ!」
 苛立ちを露にした表情で振り返ったフィーネは、未来の頬を叩き、その襟首を掴んで更にもう一度叩いて床へと落とした。未来は床に膝を着き、倒れ込む。
「まるで興が冷める……!」

 フィーネは床に倒れた2人を置いて、了子の通信機を手に廊下の奥へと向かう。最奥区画アビスへと続く自動扉のロックを開けようとしたその時、銃声と共に通信機が破壊された。
「ッ!」
「デュランダルの元へは、行かせませんッ!」
 振り返ると、何とか立ち上がった緒川が拳銃を構えていた。これ以上は拳銃も意味をなさない。緒川は拳銃を投げ捨て、直接戦闘の構えを取った。
「……ふん」
 
 両手の鞭を構えるフィーネ。その時、何処からともなく新たな声が響く。
 
「待ちな、了子」
 
「ん……?」
 次の瞬間、大きな音とともに天井が崩れ落ち、瓦礫の立てた煙の中から赤いワイシャツの巨漢が現れる。
 それを予想していたのか、フィーネは一瞬呆れたような表情を浮かべ、直ぐに凶悪な笑みを顔に貼り付けると、その男を睥睨した。
「……私をまだ、その名で呼ぶか」
「女に手を上げるのは気が引けるが、二人に手を出せば、お前をぶっ倒すッ!」
「司令……」
 フィーネを真っ直ぐ見据え、拳を握り構えるその男の名は、特異災害対策機動部二課司令官、風鳴弦十郎。
 通信が途切れた事から、フィーネは2人が乗るエレベーターを襲い、アビスへと向かった事を察して、その拳で床をぶち抜きながら駆け付けた、二課最強……いや、人類最強と言っても過言では無い男である。

「調査部だって、無能じゃない。米国政府のご丁寧な道案内で、お前の行動にはとっくに気付いていた。あとはいぶり出すため、敢えてお前の策に乗り、シンフォギア装者を全員動かして見せたのさッ!」
「陽動に陽動をぶつけたか。食えない男だ。──だがッ!この私を止められるとでもッ!」
「おうともッ!一汗かいた後で、話を聞かせてもらおうかッ!」

 弦十郎が床を蹴るのと同時に、フィーネもネフシュタンの鞭を振るう。
「とうッ!はッ!」
 それを弦十郎は身を逸らして躱し、もう片方の鞭を跳躍して回避。天井の一部を掴んで体勢を整え、その天井を足場にして加速する。
「はああああああッ!」
 フィーネに躱された拳は、当たった床を砕く。
 しかし、その衝撃波がフィーネのネフシュタンの一部に亀裂を走らせた。
「何ッ!?」
 そのまま飛び退き、弦十郎の背後に回って距離を取る。
 亀裂は即座に再生していくが、直撃すればただでは済まないと確信したフィーネは、弦十郎の背後を取ったこの瞬間を狙い、その鞭を勢いよく振り下ろした。
「肉を削いでくれるッ!」
 しかし、振り返った弦十郎はノータイムでその鞭を両方掴むと、響が以前クリスにしたのと同じように、その鞭を引っ張ってフィーネの身体を引き寄せる。
「なッ!?」
「はあああああッ!」
 下から振り上げられたその拳は、フィーネの腹部ど真ん中に命中し、その身体を天井まで高く打ち上げた。
 
〈俺式・剛衝打〉
 
「ぐは……ッ!?」
 弦十郎の拳が直撃し、その背後まで吹き飛ばされ、フィーネの身体が床に叩きつけられる。
 弦十郎は掲げた拳を下ろし、フィーネの方を振り返る。
「な、生身で完全聖遺物を砕くとは……。どういう事だッ!?」
「しらいでかッ!飯食って映画見て寝るッ!男の鍛錬は、そいつで十分よッ!」
 フィーネを睨みながら、理路整然としないトンデモ理論をさも当たり前のように豪語する弦十郎。しかし、それで本当にここまでの戦闘力を手に入れたというのだから、この男は恐ろしい。その身一つで憲法に触れる戦闘力、とさえ言われる実力は伊達ではないのだ。

「なれど人の身である限り、ノイズには抗えまい──ッ!」
「させるかッ!」
 ソロモンの杖を向けるフィーネ。しかし、それを許す弦十郎ではない。
 震脚で床を破壊、その瓦礫を蹴り飛ばしてフィーネの手からソロモンの杖を弾き飛ばす。
 フィーネの手を離れたソロモンの杖は、クルクルと勢いよく回って天井へと突き刺さった。
「な──ッ!?」
「ノイズさえ出てこないのなら──ッ!」
 ソロモンの杖を失って動揺したフィーネの隙を突き、弦十郎は跳躍。拳を握り飛びかかる。
 緒川と未来、2人が弦十郎の勝利を確信した……その瞬間だった。
 
「──弦十郎くんッ!」
 
「あ……」
 その声と表情に、弦十郎はつい一瞬だけ戸惑った。
 何故ならそれは、長年苦楽を共にしてきた友人のものだったから。
 相手がもはや自分の知る彼女ではないとしても、弦十郎は彼女にトドメを刺す事を躊躇ってしまった。
 そして、フィーネはその僅かな隙を逃さない。鎧の一部でもある鞭を刺突武器として、弦十郎の腹に風穴を開けた。
「司令ッ!」
「がはっ……ッ!」
 鮮血が弦十郎の口から吐き出され、傷口から噴き出した血が床に血溜まりを作る。

「──いやああああああああああああッ!」
 廊下全体に反響する、未来の悲鳴。
 意識を失い倒れる弦十郎のポケットから、フィーネは血に濡れた通信機を奪い取る。
「抗おうとも、覆せないのが運命(さだめ)というものなのだ」
 鞭を伸ばしてソロモンの杖を天井から引き抜くと、それを倒れた弦十郎へと向けながら言い放つ。
「殺しはしない。お前達にそのような救済など、施すものか……」
 そしてフィーネは、弦十郎から奪い取った通信機でロックを解除すると、デュランダルを手中に収めるべく、アビスへと進んで行った。
「司令……司令ッ!」
 後に残された緒川は、弦十郎へと駆け寄る。
 未来はただ、何も出来ずに立ち尽くすしかなかった。
 
「目覚めよ、天を衝く魔塔。彼方から此方へと現れ出よッ!」
 とうとうアビスへと到達したフィーネは、保管されたデュランダルの前にあるコンソールを操作し、カ・ディンギルを起動させる。
 魔塔がその威容を現す瞬間は、間近に迫っていた……。
 
 ∮
 
 その頃、司令室の職員達は固唾を飲んで、街を埋めつくしたノイズの群勢と装者達の戦いを見守っていた。
 クリスの作戦が成功し、空中要塞型ノイズが爆発したまさにその時、司令室の扉が開く。
 負傷し、緒川と未来に支えられた弦十郎を見て、友里が驚いて立ち上がる。
「……司令ッ!?その傷は!?」
「応急処置をお願いします!」

 ソファーに寝かされた弦十郎のワイシャツを開き、友里と医療の心得がある職員が応急処置に当たる。
 その間に緒川は、友里の席のコンソールを操作し、響の通信機へと回線を繋ぐ。
「本部内に侵入者です。狙いはデュランダル、敵の正体は──櫻井了子!」
「な……ッ!」
「そんな……」
 緒川からもたらされた信じ難い事実に、藤尭、友里を始めとしたスタッフ達が驚愕する。

「響さん達に回線を繋ぎました!」
「……響ッ!学校が、リディアンがノイズに襲われているのッ!」
 未来が言い終わるその前に、モニターの電源が落ちた。
「何だッ!?」
 驚く緒川に、職員達がコンソールによる操作を試みながら答える。
「本部内からのハッキングです!」
「こちらからの操作を受け付けません!」
 立体操作型のコンソールが、強制的にシャットダウンされ消滅していく。
「こんな事が出来るのは、了子さんしか……」
 藤尭は、先程の言葉が事実だと確信する。もはや、二課の設備はフィーネの手により完全に掌握されていた。
「そんな……響……風鳴くん……」
 薄暗くなった司令室の中、未来の前に広がるモニターには、砂嵐が走り続けるだけだった。 
 

 
後書き
最終章、開始!
あ、もちろんOTONAの技名カットインは、やりたかったからやってみただけです(笑)
この回書いた時、無印10話見返しててふと思ったのが、弦十郎さんひょっとして恋愛面鈍いんじゃなくて、了子さんの事は好きだったけど伝えられなかったパターンなのでは?
と思っていたら、知り合いから先覚で「惚れた女」って言ってたよと報告されて確信。あの二人が弦→了だった事を確信しました。
職員B「本部が乗っ取られたー!」
職員A「しかも黒幕は了子さん!?そんな……あの了子さんが……」
職員B「僕達と過ごした時間は、全て嘘だったのか!?」
職員A「仕事の合間にお茶したり、ガールズトークで盛り上がったり……」
職員B「あのマイペースさに振り回されたり、翔くんと響ちゃん愛でたり……」
職員A「鑑賞会で笑いあったり、翼ちゃんを緒川さんとの事でからかって反応楽しんだり……」
職員A・B「あの日々は全部、嘘だったのか!?」
監視員「2人とも、途中からベクトル変わって来ててシリアスがシリアルと化してるッスよ!?」
黒服A「2人とも落ち着け!一番ショックなのは司令だということを忘れるなッ!」
職員A・B「「黒服A……」」
黒服A「確かに司令は鈍感だが、それでも司令にとって了子さんは……長年連れ添った、かけがえのないパートn……」
黒服B「今女房的な意味で言おうとしてたでしょ?このバカ、空気を読みなさい!」
黒服A「あだだだだ!痛いぞ黒服B!お前が割り込みさえしなければ、違和感なくシリアスに持っていけたかもしれないものを……!」
監視員「あー……本編はシリアス全開ッスけど、後書きの僕らはこうして変わらずワイワイやってるので、安心して欲しいッス」

見守り隊職員一同、本編では真面目に仕事してますのでご安心を。
ってかあの人達、今でこそ大きく分けて翔ひび派とおがつば派が手を組んでるけど、そのうち純クリ派も現れてより一層賑やかになるかもしれませんね。
G編越えれば更に賑わうんだろうけど……さて、そこまで続くかは作者にも。(とか言いつつ構想は練ってる)

次回、リディアンへと駆ける5人!果たしてその先で見たものとは!?
明日も見逃せないぞ! 
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