戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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第1楽章~覚醒の伴装者~
第12節「戦う君への小さな応援」
前書き
初の聖詠&ノイズ戦描写だった回!
戦闘シーンの地の文はキャラソンの歌詞読みながら書いたので、聖詠の直後からヤーヤーヤーセツナーヒビクーを流しながら読むことをオススメします。
『ノイズ接近!各班襲撃に備えろ!奏者2名は迎撃準備に入れ!』
端末から弦十郎さんの指示が飛ぶ。バックミラーには物凄いスピードで近づくノイズの姿が見えた。
このまま行けば、あのノイズはきっと最後尾の車に追い付いて、中の黒服さん達を炭へと変えてしまう!
「了子さん!私、ここで降ります!」
運転席の了子さんにそう言って、シートベルトを外す。
「え?ちょっと響ちゃん、今ここで飛び降りる気!?」
「今行かないと、一番後ろの列を守ってる人達が危ないんです!」
ドアに手をかけようとした時、後ろから細長く形を変えたノイズが一直線に飛んで来る。
間一髪の所で了子さんがハンドルを切り、ノイズは車の左側をギリギリすり抜けて前方の道路へと突き刺さった。
私はというと、遠心力に振り回されそうになるのを、ドアと座席にしがみついて何とか耐える。うう、シートベルトを外したことを少し後悔しちゃうよ。
「無茶言わないの!私運転荒いんだから、今ドアを開けようものならあっという間に振り落とされちゃうわよ!」
「すみません……」
「それに、私達はノイズとの戦いのエキスパートなの。シンフォギアを持たないとはいえ、あの黒服さん達も中々しぶといんだから。そんなに心配しないの」
何処か自慢げにウインクしてくる了子さん。
あまりにも自信満々に言うから、二課の人達って凄いんだなぁ……と、少し納得してしまう。
だけど、黒服の人達はそうだとしても……。
「でも!あの輸送車の中には翔くんも居るんですよね!?」
「それは……」
「二課の皆さんはプロでも、翔くんは違うんですよね!?だったら、やっぱり私が助けなきゃ!」
「……気持ちはわかるわ。でも、その前にやる事が出来ちゃったみたいよ?」
「え……?」
了子さんの視線の先を見ると、そこには……道を塞ぐように群がるノイズの群れが並んでいた。
「挟み撃ちね……響ちゃん、降りるなら今よ!」
了子さんが急ブレーキを踏みながら、思いっきりハンドルを切る。
地面に黒い轍を刻み、甲高い摩擦音を上げながら車は止まった。
「分かりました!」
ドアを開け、了子さんの車を飛び降りると目の前、そして後ろの方で停車した輸送車を交互に見る。
「後ろからもあんなに来てたのに、前にもこんなにいるなんて……」
こんな数、私一人じゃ……そう思ったその時、静かな歌
・
が聞こえてきた。
「──Imyuteus Amenohabakiri tron──」
後ろの方から迫って来ていたノイズの群れへと、まるで流星群のように降り注ぐ青い剣の雨。
そして、銀色に輝く刀を手に悠然と向かっていく蒼い影。
この世に災厄の闇迫りし時、刹那響く無常の中で雑音斬り裂く刃あり。
風に靡く腰上まで伸ばした長髪と、頭頂部から左寄りの位置で纏めたサイドテール。
絶刀・天羽々斬に選ばれし歌姫の名は、風鳴翼。
人々を守る為にその身を剣と鍛えた、現代の防人である。
「弟にも、生弓矢にも、一切の手出しは許さん!」
刀を中段に構えると、地面を蹴って一気に距離を詰める。
眼前のノイズを一突き。続けて後方より迫るノイズを袈裟斬りにし、更にもう一体を斬り上げる。
颯を射る如き神速の刃。その軌跡の麗しさは千の花のように。
剣の輝きは、宵に煌めく残月の如く。並み居るノイズらを永久の浄土へと還してゆく。
しかし、美しき剣閃を描く彼女には、同時に苛烈さが溢れている。
そんな彼女の姿は戦場の華か、或いは慟哭に吼える修羅か。
雫を流せる場所を失った片翼の歌姫は、自らを奮い立たせる誇りだけでなく、亡き友との思い出さえも一振りの雷鳴へと変え、災厄を薙ぎ払う。
「翼さん……そうだ、私、一人で戦ってるわけじゃないんだよね!」
自らの背中に立ち、無双の刃を振るう先達の姿を見て、響は昨日の夜、翔から贈られた言葉を思い出す。
『一人で抱え込もうとするな!もっと……もっと周りを頼れ!』
「周りを頼る、か……。それなら、私は皆に頼る!」
後方のノイズは翼が押さえ込んでいる。
黒服達はそれぞれ車を降り、輸送車のコンテナを開く作業に入っている。
上空でこの状況を見守っている司令の弦十郎は、ヘリを合流地点へと飛ばすように指示を出しており、二課本部からは藤尭、友里の2人がバックアップしてくれている。
そしてコンテナの中では、聖遺物の入ったケースを手にした翔が待っている。
なら、彼女の役割はただ一つ。目の前の壁をブッ壊し、進むべき道を作る事だ。
胸の傷跡に手を添えて、立花響は歌い始める。
彼女に生きる力を与えてくれた人から受け継いだ歌を──。
「──Balwisyall Nescell gungnir tron──」
光が彼女の身体を包み込み、撃槍の力を宿す橙色の装束を形成する。
腕を包むのは厳つい手甲、両脚を覆うのは黒い足鎧。
撃槍・ガングニールのシンフォギアを身に纏い、立花響は眼前の災厄を見据える。
その拳を握り締め、敵へと向かって行くその前に響は通信を繋ぐ。
相手は言うまでもなく翔だ。コンテナの中にて、外部の状況を端末に送信されてきた情報と通信のみで把握し、今か今かと自分の出番を待つばかりの少年に、彼女は自らの役目を告げた。
「翔くん!私が道を切り拓く!だから翔くんは、その隙に走って!」
『立花……戦うつもりなのか?』
「翼さんに比べたら、まだまだ全然弱い私だけど……でも、奏さんのシンフォギアを受け継いだ以上、私も戦わなくちゃ!」
『なら、一つだけアドバイスだ』
通信を切断される前に、とばかりに声を張る翔。
次の言葉を待ち耳を澄ます響に、彼は優しく告げた。
『ノイズを恐れるな。君の手には、奴らを一撃で倒せるだけの……誰かを守る為の力があるんだからな』
「わかった!ありがとう!」
通信を切断し、響は拳を握り直す。
「ノイズなんか……怖くない!へいき、へっちゃらなんだからっ!」
私が逃げれば、目の前にいる人達が危ないんだ。
逃げない理由がそこにある。だから私は、もう逃げない!!
立ち塞がるノイズの群れへと向かい、走り出す。
不慣れな構えで、素人感丸出しの頼りない拳を振り上げながら、立花響は歌い始めた。
後書き
聖詠のルビ、意味の方にしようかと思ったけど中身そのものがネタバレ含むのあるし、読み方の方にしました。響の聖詠とか不穏要素の塊だもん。
翼「なに?折角のハイウェイ戦なのにバイクは何処か、だと?いや、本当は乗ってきた方が便利だとは思ったのだが、今ちょうど車検に出していてな……。流石に台車を戦場で乗り回すわけにもいくまい。乗りなれないマシンで戦場に出るなど、得策とは言えんからな。……は?すぐに乗り捨てて破壊するから……だと!?おい、それはどういう意味だ!マシンサキモリーは私の相棒だ!乗り捨てるような真似など、断じてしないからな!戦場で戦いの最中、やむなく結果的にそうなってしまう事はあれど、ただで乗り捨てたりは絶対にしないからな!」
さて次回は……いよいよタイトル回収、ですかね。
次回以降のモチベに繋がるので感想、お気に入り登録、それから願わくば評価もよろしくお願いします。
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