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戦国異伝供書

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第六十三話 成長その六

「非常に暮らしやすいですな」
「そうでおじゃるな」
「気候はよく街は奇麗で」
「米もよいでおじゃるな」
「しかも海の幸もよく」
「これだけいい場所はそうはないでおじゃる」
 義元も笑って述べた。
「麿もそう思うでおじゃる」
「はい、ですから」
「この駿府がでおじゃるか」
「この上なく気に入っておりまする」
「では、でおじゃるか」
「岡崎に戻れるなら」
「その時はでおじゃるな」
「戻らせて頂きますが」
 それでもというのだ。
「やはりです」
「駿府にでおじゃるな」
「ずっといたいとです」
 その様にというのだ。
「思っておりまする」
「左様でおじゃるか」
「やはり」
「わかったでおじゃる、それとでおじゃる」
 義元は竹千代にさらに言ってきた。
「そなや今海の幸の話をしたでおじゃるな」
「それが何か」
「それで刺身等もよく食しておるでおじゃるな」
「先日殿から頂いた鯛も」
 この魚もというのだ。
「屋敷の厨房の者が捌いてくれまして」
「刺身で、でおじゃるか」
「食し頭やあらは」
 そうしたところはというと。
「吸いものにしました」
「そうして食したでおじゃるな」
「はい」
「そうでおじゃるか、では今度宴を開くでおじゃるが」
「その宴にですか」
「いつも通りそなたも招くでおじゃる」
 他の重臣達と共にというのだ。
「そしてそこで、おじゃる」
「鯛をですか」
「出すでおじゃるが」
 それでもというのだ。
「その時に面白い料理を出すでおじゃる」
「刺身でなく」
「焼くのでも煮るのでもないでおじゃる」
「では吸いものでも」
「それでもないでおじゃる」
「では一体」
「それはその時にでおじゃる」
 義元は竹千代に笑って話した。
「わかるでおじゃる」
「左様でありますか」
「だからでおじゃる」
「その時を楽しみにして」
「待っているでおじゃる」
「わかり申した」
「ほっほっほ、そなたは美味も知るでおじゃる」
 竹千代にこうも言うのだった。
「何でも屋敷は質素倹約に務めているそうでおじゃるな」
「どうも贅沢が性分に合わず」
 竹千代は素直に答えた。
「ですから」
「それもいいでおじゃるが」
「贅沢もですか」
「知るといいでおじゃる、ただ贅沢をしても」
 義元はこうも言った。
「民を苦しめることはでおじゃる」
「せぬことですね」
「それは断じてでおじゃる」
 してはならないと言うのだった。
「酒池肉林の如きは」
「異朝であったという」
「殷の紂王でおじゃるが」
「史記にある」
「あれはでおじゃる」
 まさにというのだ。 
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