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ヘタリア大帝国

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TURN23 タイの話その六

「提督は四人だ」
「ええ、そして国家艦隊がね」
「ドイツの兄妹、プロイセン兄妹にオーストリアとハンガリー」
「ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ギリシアの東欧組に」
「アイスランド以外の北欧の四個艦隊だ」
「それとオランダとベルギーね」
「合わせて二十個艦隊か」
 レーティアはその数を述べた。これがドクツの今の総戦力だ。
「対するエイリスは」
「百個艦隊以上よ。植民地からもかき集めてきたわ」
「五倍以上か」
「尋常な数じゃないわね」
「流石に世界を指導すると自負しているだけはあるな」
 レーティアもエイリスを侮ってはいなかった。冷静な戦力分析も行っていた。
「だが植民地の戦力はだ」
「旧式艦ばかりね」
「エイリスの艦艇は最新鋭は見るべきものがあるな」
「問題はその戦力ね」
「そして騎士提督もいるな」
「ロレンス提督がいるわよ」
 エイリス本土にはだ。彼がいるというのだ。
「ネルソン提督もいるかしら」
「太平洋に行くという情報があったな」
「じゃあもう言ったかしら」
「いや、まだだろう」
 残っているとだ。レーティアは見ていた。
「まだ太平洋では戦闘ははじまっていない。だからだ」
「彼もまだ残っているのね」
「そうだ。そして女王であるセーラ=ブリテンだ」
 レーティアにとって宿敵とも言える彼女の名前も出した。
「妹もいたな」
「そして先女王であり母親でもあるね」
「エイリスにも人がいる」 
 人材はいるというのだ。エイリスにもだ。
「そして国家もな」
「イギリスの兄妹ね」
「イギリス兄妹も倒す」
 レーティアはその青い目から強い光を放っていた。そのうえでの言葉だった。
「必ずな」
「そうね。エイリスを倒して次はね」
「ソビエトだ。あちらの作戦の準備も進めているがな」
「防寒対策も進んでいるわよ」
「ソビエトは寒い。私もそれを考えて防寒艦を考えた」
 そうしたというのだ。レーティアは先の先を読んでいた。
「ソビエトの武器は国力だけじゃない。寒さもある」
「それに対してどうするか」
「だからだ。私はあえて防寒艦も考えたのだ」
「そういうことね。やっぱり貴女は天才ね」
「先の先を読んで仕掛け動く」
 英邁、まさにそれだった。
「運ではなくそれによって戦うものだ」
「ええ。そして今回も」
「エイリスに対してもそうする。しかしだ」
「しかし?」
「ドクツは大丈夫だがな」
 微妙な顔になったレーティアだった。ここで。
 そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「だがな。問題は」
「イタリンかしら」
「北アフリカ戦線は大丈夫なのだろうか」
「掌握したらしいわよ」
「そしてエイリス軍はか」
 アフリカ戦線の彼等はどうかというのだ。
「スエズに追い詰められているか」
「そうなっているわ。イタリン軍はスエズに入ろうとしているわ」
「攻めているか。そしてスエズも占領できればな」
「私達にとって大きいわよ」
「しかし本当に大丈夫なのだろうか」
 どうしてもだ。レーティアはイタリンへの不安を払拭できなかった。顔にもそれが出ている。
 そしてその不安な顔でだ。グレシアに言うのだった。
「イタリンはな」
「ドウーチェがあれで?」
「悪い人ではないのだがな」
「努力もしてるけれどね」
「あの人はな。嫌いではない」
 レーティアは個人的な感情も口にした。
 
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