戦国異伝供書
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第六十二話 赤と黒から黄へその十一
「生きるべきじゃ」
「左様でありますか」
「拙僧もお主は長く生きるべきと思っておる」
彦五郎が言った通りにというのだ。
「だからな」
「その二つを備え」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「生きるのじゃ、よいな」
「逃げる時は身一つであるが故に」
「そうせよ、あと軽挙妄動はな」
雪斎はこちらの話もした。
「出来る限りな」
「せぬことですな」
「軽はずみもよくない」
「それが命を失うことになる」
「そうした時もあるからな」
「慎重であるべきですか」
「お主は元々そうであるからな」
そうした気質の持ち主だからというのだ。
「尚更じゃ」
「ではそのことも」
「長く生きる為にな」
「肝に命じておきます」
「是非な」
「して竹千代」
また彦五郎が彼に話してきた。
「今度和上と共にじゃ」
「茶をですか」
「飲んでみるか」
「それがしも宜しいのですか」
「よい、そなたはやがて今川の執権となる」
それだけの者だからだというのだ。
「だから茶もな」
「覚えておくべきですか」
「麿はそう思う、だからでおじゃる」
それ故にというのだ。
「共に和上の煎れた茶を飲むでおじゃるよ」
「それでは」
「拙僧としましても」
雪斎も竹千代に話した。
「茶は覚えて欲しいので」
「だからですか」
「是非です」
その茶をというのだ、
「覚えて欲しいです」
「それでは」
「茶は薬でもあるし」
「薬なので」
「飲むとよい」
その意味でもというのだ。
「高いがな」
「確かに茶は高価でおじゃる」
彦五郎は雪斎のその言葉に頷いた。
「酒よりもでおじゃるな」
「遥かにです」
「そうでおじゃるな」
「はい、ですが」
「薬にもなるでおじゃるか」
「修行の時に飲みますと」
雪斎は今度は僧としての立場から話した。
「実によく目が冴えまする」
「そうでおじゃるか」
「その他にもです」
「薬としてでおじゃるな」
「飲むべきです」
「ではそれがしも」
「うむ、しかしお主は」
ここで雪斎は竹千代の相を見た、顔に出て来るそれから見えるものをそのまま彼に対して告げたのだった。
「茶よりも強い薬か」
「それを好むとですか」
「見えたがどうか」
「それは」
「まだわからぬか」
「それがしはそうした者ですか」
「そう見えたがまあそれでもな」
彼のその相をさらに見つつ言うのだった。
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