| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ヘタリア大帝国

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

TURN21 富嶽その十一

「あの、バリア艦でしたら」
「んっ、何かあるのか?」
「デーニッツ提督に策が」
「はい、潜水艦は姿が見えません」
 エルミーは潜水艦の最大の特徴であるそのことから話していく。
「だからです。ここはです」
「そのバリア艦を配備している敵艦隊に密かに接近してか」
「鉄鋼弾で奇襲を仕掛けるというのはどうでしょうか」
「そうだな。そうしたやり方もあるな」
「若しも航空母艦がその時にまだ配備されていないのなら」
 日本帝国も空母の配備を急がせているがだ。それでもなのだ。
「そのやり方でいきましょう」
「そうするか」
 こうした話もしていた。富嶽のことも他のこと課題にすべきことだった。そしてだ。
 そうした話をしていたのだった。そしてだ。
 東郷は海軍長官の部屋に戻った。だがその部屋に入るとだ。すぐに後藤が来てこう言ってきた。
「間も無くです」
「ああ、そろそろ宇垣さんが帰って来るな」
「そうです。ようやくです」
「どうもいないといないとでな」
「寂しい方ですね」
「そう考えると不思議な人だな」 
 東郷は少し笑ってそのうえで報告する後藤に話した。
「女性将兵の間でも評判は悪くなかったな」
「お節介ですけれどね」
 微笑みだ。後藤は東郷の言葉に応えた。今東郷は自分の席に座っていて後藤はその前に立っている。そのうえで二人で話しているのだ。
 その中でだ。後藤は笑いながら話すのだった。
「それでも真面目で細かいところにも気付いてくれて」
「しかも女性に対して紳士だしな」
「はい、清潔な方なのは事実です」
 何だかんだでだ。宇垣は人柄はいいのだ。
「ただ。本当にお節介が過ぎまして」
「そこが困ったところか」
「私にもお見合いの話を持ってきていますよ」
「そして家庭を持て、か」
「男性将兵にもしきりにそう言っておられます」
 宇垣はそうした意味では公平だった。世話焼きなのは確かだ。
「そしてそれはですね」
「ああ、俺に対してもな」
 他ならぬ東郷自身に対してもだ。そうだというのだ。
「言ってきているさ」
「そうですよね。やっぱり」
「だが俺はな」
 そうした話はだ。どうかという東郷だった。
「そうした話はな」
「まだ、ですか」
「もう生きている筈がないがな」 
 その顔に珍しく寂しいものも含ませてだ。東郷は後藤に話した。
「それでもだ」
「ううん、長官も意外と純情なんですね」
「ははは、俺は純情だったのか?」
「そう思いますけれど」
「そう言われたのははじめてだな。けれどな」
 だがだ。それでもだというのだ。
「とにかく俺はそうした話はいい」
「そうですか」
「宇垣さんはまたそうした話を持って来るだろうがな」
「それでもですね。後間違いなくです」
 後藤は眼鏡の奥のその目を真剣なものにさせて述べた。
「ガメリカからの返答を持って来るでしょうが」
「そうだな、そしてその内容はな」
「開戦ですか」
「残念だがそうなる」
 間違いなくだとだ。東郷は答えた。
「しかしそれでもだ」
「その場合に対するしかないですか」
「既に作戦は立てている。ただしだ」
 だがそれでもだというのだ。東郷はこうも言った。
「賭けの連続になるがな」
「賭けですか」
「そうしないととてもやっていけそうにもないな」
 勝てないというのである。そうした話もしてだった。
 東郷達は宇垣の帰還を待っていた。それがどういった状況をもたらすこともわかっていた。だがそれでもだ。彼等は覚悟を決めて待っていたのだった。銀河の次の潮流を。


TURN21   完


                       2012・4・19 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧