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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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バハラタ

<バハラタ>

美しく大きな川の畔で、営みを続ける町バハラタ。
アルル達は、この町の特産品である黒胡椒を求め、町人達から情報を集めている。

そして集めた情報を頼りに、1軒の店の前にやって来た…
「………此処で…間違い無いよな…」
「わ、私に聞かないでよ!」
「きっと此処ですよアルル。ほら看板があります!」
そうハツキが指差した所には【黒胡椒直売所】と看板が…

「……でも店閉まってるやん!」
「でも中から人の声が聞こえるよ」
そう言ってリュカは勢い良くノックする。
(ゴンゴンゴン)
「すんませぇ~ん!黒胡椒をくださいなぁ~」

暫くすると中から老人が一人顔を出し、警戒しながら訪ねる。
「…あの…お客さんですか?」
「あれ?もしかして耳が遠いの?」
リュカは小首を傾げると、大きく息を吸い、
「そうでぇ~す!!お客さんですよー!!」
と、かなりの大声で老人に話しかけた!
「うるさーい!!聞こえとるわい!!耳は正常じゃ!」
老人も負けずに大きな声で怒鳴り返す!



「いや…失礼しました!少し立て込んでおりまして…」
暫く店先で叫び合っていたが、互いの状況を理解する為、店内へと移動し状況を聞く事になった。

「いえ…こちらこそ申し訳ありません…」
耳鳴りが治まらないが、平静を装って謝罪するアルル。
店内には先程、怒鳴り合いをした店主の老人『ターゲル』と、店員の『グプタ』の二人が神妙な面持ちでアルル達を見つめている。

「あの…何か問題事でも…?」
「………実は…私の孫娘のタニアが盗賊に誘拐されてしまいまして…莫大な身代金を要求されております…」
「わぉ、一大事!じいさん、その孫娘は美人か?」
「え?…えぇ…まぁ…」
リュカの緊張感のない質問に、思わず呆れ頷くターゲル。

「ターゲルさん!こんな誰か分からない旅人に、話す事はないでしょう!タニアは僕が助けます!」
リュカの態度にグプタが怒る。
「そッスよ!他人に言う事じゃないッスよ!………でも美人なのかぁ…今頃、むっさい盗賊共に○○○な事されて、○○○になってんだろうなぁ…○○○や○○○を○○○されて、○○○で○○○なんだよ、きっと!こう言う時、美人は損だよね!ま、ヤツらにしたら女だったら何でもいいのかな!?」
「うわー!!!タ、タニアー!!」
リュカの無責任で無慈悲な発言を聞いたグプタは、泣き叫びながら店を出て行ってしまった!

「あ、行っちゃった!まぁいいや。…そんな事よりじいさん、黒胡椒を売ってくれよ」
「ちょっと、『行っちゃった』じゃないだろ!あの人タニアさんを助けに行ったんじゃないのか!?」
「あはははは、まさか!だって居場所が分からなきゃ「タニアは此処より北東の『バハラタ東の洞窟』に囚われております!」
何処までも無責任なリュカの発言を打ち砕く様に、ターゲルは説明をする。

「居場所が分かっているのに、何故助けを出さないのですか?」
「もちろん助けは出しました!町の警備や傭兵団を雇い………しかし全て返り討ちに合い、全滅しました…」
ハツキの疑問に、ターゲルは力無く答える…

「へー…じゃ、ヤベーじゃん!アイツ一人で行っちゃったよ。まぁいっか!それより黒胡椒売ってよ。それがあれば船を貰えるんだよね!そうしたらバラモス討伐に、また一歩近付くんだ!」
「バ、バラモス討伐!!…貴女方は勇者様ですか!?」
リュカの言葉にターゲルは瞳を輝かす。
「ま、まぁ…建前は…」
アルルが辟易した表情で肯定する。

「ど、どうか勇者様!タニアとグプタを助けて下さい!あの二人は恋仲なのです!故に私はグプタにこの店を託すつもりだったのです…しかし二人が居なくなってしまっては、こんな店………どうか…どうかお願いします!二人を…」
ターゲルはアルルの手を握り、涙ながらに懇願する。
《ち、近い!顔、近いから!!》
「わ、分かりましたから…その…は、離れて…」
「おぉ…どうか頼みますぞ!」
ターゲルは満面の笑みで頷き続ける。

「あのぉ~………黒胡椒は?」
しかし全く空気を読まないリュカは、黒胡椒の事しか気にしてない。
「………二人が無事戻って来れば、好きなだけお譲り致します!ですから、どうか…」
「うん。そう言う事なら、早速行かないと!あの突っ走り小僧がぶっ殺される前に、追いつかないと大変な事になっちゃうね!」
「そ、そうね…ターゲルさん、その洞窟は遠いのですか?」
「大人の足で半日くらいです…しかしグプタの事だから、きっと馬を使って向かっているでしょう!どうか急いで下さいませ!」
それを聞きアルル達は慌てて出発する!


「しっかし、あのガキ突っ走りやがって!迷惑だな!」
「リュカさんの所為でしょ!酷い事言うから…」
「だぁって~………盗賊なんて馬鹿な事やってる連中がやりそうな事でしょ?」
「ほら!リュカさんもウルフも…喋ってないで走るわよ!」
アルルが皆に走る事を指示する。

「えぇ…走るのぉ…めんど「は・や・く・す・る!!」
人命救助という使命を前に、妙に迫力を増したアルルに逆らえず、みんな大人しく走り出す。
「いい、正面に立ちはだかる敵だけを相手にして!他は無視よ…そうすれば追いつけるはず…彼はモンスターを避けながら進むはず…馬を使ってもモンスターを避けてじゃ、そんなに早くは進めないはずよ!私達は最短距離を突っ走るわよ!!」
そしてアルル達は走り続ける…
若者を救う為…
恋人達を助ける為…
そして、黒胡椒の為…(リュカのみ)



 
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