出征兵士を送る歌
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第五章
「ソ連とだろ」
「つながってたんだよな」
「コミンテルンってあっただろ」
「ソ連のな」
「そこの指示で動いていてな」
そうしてだったというのだ。
「日本で革命もな」
「起こそうとしていたよな」
「それで日本もソ連みたいにしようって考えていたんだよ」
その様にというのだ。
「そうなってみろ、ソ連の粛清がな」
「日本でも行われてたよな」
「そうなったしな」
絶対にだ、そうなっていたというのだ。
「問題外だろ」
「だよな」
「そうした連中以外はな」
「戦争を支持していたよな」
「戦争しないといけない時もあるんだよ」
好機は難しい顔で語った。
「あの時はそうだったんだ」
「それで戦争したんだよな」
「そうだ、確かに沢山の人が死んださ」
このことは事実だとだ、好機も言った。
「そして負けたさ」
「負けたから言ってるだけかもな」
「そうだ、勝って言う奴がいるか」
後でどうこうというのだ。
「本当にな」
「そんなものか」
「ああ、あの時戦争に行って戦った人達は立派にな」
子供の頃に見たものをだ、好機は孫に話した。
「戦争に行って務めを果たしてくれたんだ」
「そうした人達か」
「そんな人達を馬鹿にするとかもな」
「悪いことだよな」
「そうだ、ましてや死んだ人達が祀られている神社に参拝するな」
「そんなことを言うこともだよな」
「いい筈ないだろ」
それこそと言うのだった。
「絶対に」
「そうだよな」
「人間としてな」
「やっちゃいけないことか」
「そんなことを言う奴は死んでからな」
その後でどうなるかというと。
「地獄に堕ちるに決まってる」
「新聞社の連中とかか」
「そうだ、そんな連中の言うことなんか聞くな」
最初からというのだ。
「そのうえであの戦争のことは考えないといけないんだ」
「だよな、それで祖父ちゃんこの街の駅から戦争に行く人も見送ったよな」
孫は祖父にこのことも尋ねた。
「そうだよな」
「ああ、何度も見たよ」
祖父はその孫の問いに微笑んで答えた。
「それはな」
「その人達も立派だったんだな」
「ああ、皆な。あんな立派な人達はいなかった」
微笑んだままでの返事だった。
「本当にな」
「そうだったんだな」
「帰ってこなかった人もいるさ、けれどどの人もな」
「立派だったんだな」
「そうじゃない人は一人もいなかった」
「その言葉覚えておくな」
「ああ、絶対にそうしろ」
祖父はこの時も微笑んでいた、そのうえで孫と一緒に梅酒を飲んだ。あの時のことを思い出しながら。
出征兵士を送る歌 完
2019・10・23
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