曇天に哭く修羅
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序章
濁った白
前書き
_〆(。。)
《永遠レイア》と《エンド・プロヴィデンス》が黒鋼の屋敷に来て一年が過ぎた《黒鋼焔/くろがねほむら》六才の春。
「白鋼のことは覚えてるか黒鋼?」
ある日、少女が現れた。
焔より一つ年上。
髪が白く、肌が白く、服が白く、表情が白く、纏う雰囲気すらもが白い。
その身一つで『白』を表したような少女は焔を鏡写ししたように綺麗で同時に悍ましい。
「アタシ、親が居なくなってしまたネ。頼れる親戚オマエ等しか居ないから世話なるヨ。別にそこの二人が面倒見てくれても良いけど」
少女は《白鋼水命/しろがねすいめい》と言い、黒鋼と同じ祖を持つ一族の出身で『剛拳』の黒鋼と並ぶ『柔拳』の血脈らしい。
レイアとエンドは祖父母から黒鋼だけでなく白鋼の話も聞き及んでいる。
「永遠の所は別に水命さんが来てくれても構わないんだけど何でだろう。何か起きそうな気がしてならないのは」
「お兄ちゃんもそう思う? ボクもプロヴィデンスへ連れていく前に黒鋼で一緒に過ごしながら様子を見た方が良いと思うんだよね」
何も無かったら水命の身柄を永遠とプロヴィデンスで引き取っても構わないと伝える。
「約束ネ。アタシの黒鋼での生活に納得がいったなら二人の家に邪魔するヨ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
黒鋼の面々は水命に面白味を覚え、彼女と共に生活を送ることになった。
そして水命の力を表現するなら『バケモノ』という一言に尽きると結論付ける。
焔は一族史上有数の天才と言われてきたが、白鋼水命の天稟はそれを遥かに超え、[盲目]というハンデを物ともせず、桁外れの戦闘能力で焔に勝って勝って勝ち続けていく。
焔の両親《黒鋼燐/くろがねりん》と《黒鋼錬/くろがねれん》をして、自分達と同等かそれ以上かもしれないと言われるほど。
彼女が黒鋼の屋敷に来て半年経っても焔が自分の意思でまともに攻撃を当てたことは一度も無いという『卓越』どころか超えられない壁、『隔絶』と言って然るべき力量と技術の差。
あのレイアとエンドでやっと互角。
焔にとってはこれ以上ない闘技者としての好敵手がまたしても現れてくれたことになる。
「焔は僕達が教えた技を使ってないけど全部使えば水命と戦えるんじゃないかな?」
「まあボク達も【魔術師】としての『異能』を使わず【魔晄】だけを使った戦いに徹してるから今は使う気が無いんだけど」
「レイアとエンドが使わないならあたしもいざという時しか見せないよ。水命には魔術師と黒鋼流拳士としての力で勝ちたいからね」
焔にとって問題が有るとすれば、水命との戦いは楽しい反面、レイアやエンドと違って完全には満たされず、何かが足りない焦れったいものだということだが原因がはっきりしない。
焔はある時それを水命に伝えたのだが、水命は何処か妖しく微笑みながら言った。
「はっはっは、安心しろヨ。アタシとの戦いに足りないものは直ぐに埋まるからサ」
後書き
_〆(。。)
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