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肉女の正体

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第一章

                肉女の正体
 八条学園高等部商業科の一年生高橋安奈は自称肉のサラブレッドである、何故こう自称しているかというと。
「何しろお父さんは八条ステーキの支店長さん、お母さんは八条フーズ食肉部門の牛肉部門にいるのよ」
「自分で言うかよ」
「事実だからね」
 安奈はクラスメイトの広澤周五郎に余裕の笑顔で返した、細い眉に気の強そうな顔に薄いが大きめの唇にやや面長の五角形の顔、長い髪の毛は少し茶色がかった黒で端のところをセットして縮れている。一五二センチ位で幼児体形と言われているが本人は気にしていない。
「それで私は八条バーガーのアルバイト店員」
「まさに肉の申し子かよ」
「そうよ、それでこのままね」
「将来もだな」
「お肉を扱う仕事にね」 
 それにというのだ。
「就くわよ」
「そのままハンバーガーの店員さんになるか?」
「それ考えてるわ」
 周五郎の朴訥な顔を見つつ言った、背は自分より二十三センチ高く筋肉質だが臆したところは全くない。
「何ていうか天職ってね」
「そう思うんならな」
「目指せばいいわよね」
「何で俺が言うんだよ」
 周五郎は安奈にこう返した。
「高橋の人生だからな」
「私が選んで私が決めろって言うのね」
「それが天職っていうんならな」
「ハンバーガーショップの店員さんも」
「いいだろ、というか肉好きだな」
「好物はそのハンバーガーにね」
 笑ってだ、安奈は周五郎に話した。
「ステーキ、焼き肉、すき焼き、牛丼よ」
「本当に肉ばっかだな」
「やっぱり人間お肉食べないとね」
 安奈は周五郎に勝ち誇る様に返した。
「駄目よ」
「肉かよ」
「酒池肉林っていうでしょ」
「お姉ちゃん達とうはうはか」
「それ違うから」
 即座にだ、安奈は周五郎の今の言葉を否定した。
「実は」
「ああ、実はだよな」
「そう、あれは本来はね」
「文字通りの意味だよな」
「キャバレーとかでお姉ちゃんに囲まれてじゃないの」
 安奈はこのことは真面目に話した。
「お酒の池で林の木という木にね」
「お肉吊るしてな」
「パーティーやったから」
「そうしたことでだよな」
「そうよ、贅沢な遊びってことで」
「うはうはじゃないんだな」
「そうしたこともしていたみたいだけれど」
 その本来の意味はというのだ。
「お酒にお肉よ」
「そっちだな」
「そうよ、それで私の趣味も」
「お酒にお肉か」
「その二つを食べることよ、それで今度ね」
 安奈は周五郎にさらに言った、二人で教室の中でお互いの席に座って休み時間の一時を過ごしながら。
「八条バーガー新商品出すけれど」
「食えっていうんだな」
「宣伝よ」
 それだというのだ。
「無理にとは言わないわよ」
「それでも宣伝するんだな」
「お店の宣伝も店員のお仕事よ」
 それでというのだ。 
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