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戦国異伝供書

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第六十話 死闘その十二

「急に攻められ多くの兵を失った」
「それ故にですな」
「ここは、ですな」
「退く」
「そうしますか」
「まだ息がある者は全員じゃ」
 それこそというのだ。
「背負ってでもじゃ」
「助け出し」
「そうしてですな」
「ここは下がりますな」
「そうすべきですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「ここは下がりましょう」
「致し方ありませぬ」
「ここまで倒されては」
「最早な」
 色部は歯噛みした、そうしてだった。
 傷付いた兵達を自らも背負ってそうして退いた、こうして信繁と彼の兵達は助かった。そして彼の前の前に。
 幸村が出て来てだ、こう彼に言った。
「お館様から言われました」
「兄上からか」
「それがしと十勇士が戦い」
 一騎当千と言われる自分達がというのだ。
「この度は軍の危機を救えと」
「そしてわしもか」
「二郎様は当家になくてはならぬ方です」
 それ故にというのだ。
「お館様もです」
「お主に言ったのか」
「はい、助けよと」
 まさにというのだ。
「言われまして」
「それでか」
「はい、参上しました」
「わしは討ち死に覚悟でな」
「援軍を断られていましたか」
「そうであったが」
 それがと言うのだった、信繁も。
「兄上が言われるとな」
「お館様はこの度何としてもです」
「わしに生きて欲しいのじゃな」
「当家の、そして二郎様のすべきことは今日で終わるか」
「それは違うとじゃな」
「お館様は思われ」
 そうしてというのだ。
「それがし達にです」
「今の様にか」
「戦えと言われてです」
「そうなのか」
「そうです、では」
「さらにか」
「戦っていきまする」
 こう言ってだ。そのうえでだった。
 幸村は次の場所に十勇士達と共に向かった、信繁はそのことも受けてそうしてだった。兵達に話した。
「それではな」
「さらにですな」
「戦っていきますな」
「これからも」
「それは同じじゃが」
 それでもとだ、信繁は言うのだった。
「先程までわしは死ぬつもりであった」
「しかしですな」
「今は違いますな」
「これからは」
「生きる為に戦われますな」
 兵達も次々に言った。 
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