恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第七十六話 群雄、一同に集うのことその十
劉備のところにそっと寄ってだ。こんなことを囁くのだった。
「まだ出陣までに時間がありますね」
「ええ、ちょっとだけれど」
「どうでしょうか。これから水浴びに」
それに誘うのだった。
「近くに泉がありますし」
「そこでなのね」
「はい、滝になっています」
そこに行こうというのである。
「如何でしょうか、今から」
「そうね。それじゃあ」
「はい、ではご一緒に」
「あの、それはちょっと」
ところがだ。ここでだった。
孔明が困った顔をしてその魏延に言うのだった。
「御二人だけで行かれるのは」
「駄目だというのか?」
「何時董卓さんの刺客が来るかわかりません」
「桃香様は私が御護りしているのだぞ」
「それでもです」
慎重に言う孔明だった。
「今は焔耶さんだけではです」
「危険だというのか」
「別の意味でも危険だし」
馬岱はこんなことを呟いた。
「桃香様も」
「えっ、私が?」
「だから焔耶と二人きりっていうのは」
「馬鹿な、私は桃香様をあくまで御護りするだけだ」
それはムキになって力説する魏延だった。
「そんなことはだ」
「けれど桃香様の裸は見たいのよね」
「そうだ、その下着姿もだ」
ついつい本音を言ってしまう魏延だった。
「今日は桃だな。昨日の白もその前の薄い青もいいが桃香様はやはりだ」
「何でそこまで知ってるのよ」
「当然だ。私は桃香様の護衛役だ」
つまり親衛隊なのだ。劉備の近衛は実際に彼女が務めている。
「その着替えの時もだ」
「護ってるってのね」
「うむ、御傍でな」
「まじまじと見てるのね」
「何時見ても素晴らしい」
魏延の言葉が恍惚としたものになっている。
「やはり桃香様は最高の美女だ」
「そんなあ、言い過ぎよ」
劉備だけが気付かずに能天気に笑って言う。
「私そんなに可愛くないわよ」
「しかしあの張角にそっくりだしな」
「違うのは声だけで」
こう話すリョウとテリーだった。
「そう簡単には見分けられないな」
「声を聞かないとな」
「あのトップアイドルとだからな」
「つまりは」
可愛いというのだ。それが結論であった。
しかし当人だけはだ。こう言うのだった。
「焔耶ちゃん褒め過ぎよ」
「いえ、それは違います」
魏延は顔を真っ赤にさせた真剣な顔で言い切った。
「桃香様はです。天下一の方です」
「そうかなあ」
「私が言うのですから間違いありません」
「確かに桃香さんは可愛いけれど」
それはだ。馬岱が見ても言えることだった。
しかし彼女はだ。このこともわかっていた。それでこうも言うのだった。
「ただ。焔耶はね」
「私は。何だ」
「少し入れあげ過ぎよ」
そうだというのだ。
「もう桃香様にお熱なんだから」
「だから私にあるのは忠義だけだ」
「忠義以外にもあるでしょ」
「では何があるというのだ」
「さあ。自分が一番わかってることじゃないの?」
「だから何が言いたいのだ御前は」
「さてね」
こんなやり取りをしながらだった。彼等はリラックスして先陣としての出陣を待っていた。連合軍がだ。いよいよ始動しようとしていた。
そのことはだ。闇の中にも伝わっていた。その中でだ。
姿を消している筈の彼女がだ。こう言うのだった。
「さて、それでだけれど」
「はい、これからですね」
于吉がだ。彼女に応える。彼もまた闇の中にいるのだ。
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