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戦国異伝供書

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第五十九話 死地へその六

「策を出してもらうぞ」
「さすれば」
「戦じゃ」
「だから何かあるかわからぬ」
「それでじゃ」
「何かあればですな」
「策を出してもらてな」
 そのうえでというのだ。
「わしを助けてもらう」
「さすればです」
「早速策を出してくれるか」
「はい、おこに源四郎殿を置き」
 山縣を見ての言葉だ。
「そしてです」
「源四郎にいざという時にか」
「長尾殿と戦う時に」
 まさにその時にというのだ。
「力を出してもらいます」
「そうか、ではな」
「はい、そしてもう一つ策がありますが」
「その策は何じゃ」
「源次郎です」
 今度は幸村を見て言うのだった。
「この者と十勇士をここに置きましょう」
「源次郎達をか」
「若し長尾殿との戦に押されても」
 そうした事態になろうともというのだ。
「源次郎と十勇士達がいれば」
「それを押し返せるか」
「そうなりますので」
 だからだというのだ。
「ここはです」
「源次郎と十勇士をじゃな」
「ここに置きましょう」
「わかった、ではな」
「はい、いざという時は」
「源次郎と十勇士達に働いてもらう」
「この者達は皆一騎当千です」
 山本は幸村だけでなく彼の後ろに控えている傾奇者と言っても遜色ない忍と呼ぶにはあまりにも目立つ者達を見つつ述べた。
「簡単な計算ですが」
「十一人全員でじゃな」
「一万一千の軍勢に匹敵します」 
 そこまでの強さがあるというのだ。
「ですから」
「いざという時はじゃな」
「はい、例え長尾殿でも」
「遅れを取らぬか」
「左様です、では」
「うむ、ここに源四郎を置き」 
 信玄はあらためて言った。
「そしてじゃ」
「源次郎と十勇士もですな」
「皆置く」
「その様に」
「さて、では夜になるとな」
 この時にというのだ。
「動くとしよう」
「源助殿の軍勢をですな」
「妻女山の後ろに向かわせよう」
「その様に」
 こうしてだった、信玄は他の将帥達のそれぞれの役割も定め兵達の割り当ても決めた。そうしてだった。
 早いうちに飯とした、だが。
 謙信は妻女山にいて飯を炊く煙を見て言った。
「今夜動きますね」
「武田軍は、ですぁ」
「そうきますか」
「左様ですか」
「はい」
 まさにというのだ。
「今夜です、そしておそらく明日の朝にです」
「まさかと思いますが」
「この妻女山に来ますか」
「敵が」
「軍勢を二手に分け」
 直感でだ、謙信は武田軍の動きを読んで述べた。 
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