蒼と紅の雷霆
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蒼紅:第三十四話 敵地
ハイウェイからオウカの屋敷に戻ってきた2人を待っていたのは2人を認識した途端に頭を下げてきたシャオと混乱しているオウカの姿だった。
「ごめん、2人共…シアンが拐われてしまったんだ…」
「何だと?まさかエデンの連中にか?」
まさかシアンが再び拐われてしまったことにソウは思わずエデンが拐ったのかと尋ねる。
「多分ね…まさか二度もシアンを狙うなんて思っていなかったから…多分、あれはテセオの能力だと思う」
「テセオ…それにしても奴らは何故シアンを…?ミラーピースを奪うための人質…?」
「分からない…でも、もうシアンは狙わないと思っていた楽観していた自分に呆れるよ…多分シアンは敵の本拠地に連れていかれたんだ。場所はタシケント。そこに、エデンの本拠地…ベラデンと呼ばれる要塞がある。何を企んでいるのか…エデンは今、全ての構成員をベラデンへ引き上げているようなんだ。その帰還経路と時間を稼ぐため、交通機関を占拠していたようだね… 倒していないG7のメンバーもベラデンにいるはずだよ」
タシケント…確か、中央アジアにある国の都市だったはずだ。
「タシケント…大分距離があるな」
「そこまでどうやって?」
ソウがタシケントへの距離を考えて表情を顰め、GVがそこまでの移動はどうするのか尋ねる。
「現地まで、僕の知り合いに送ってもらえるよう、準備してもらってる。それで…急ではあるんだけど 今から出発してもらえないかな。奴らが何か企んでいる以上、一刻も早くこっちも行動しなきゃならない。いつも急かして、2人には本当に申し訳ないけど…」
「構わないよ…一刻も早くシアンを助けたい」
「…テーラ、一体何を考えているんだ?」
パンテーラの考えが分からないソウは眉間に皺を寄せるが、そこにオウカが歩み寄ってくる。
「私は何もしてあげられませんが、この家でお2人の無事を祈っています…どうかシアンさん達と一緒に」
「分かっているよ…必ずシアン達と一緒に君の元に帰るから」
オウカの言葉に2人は頷きながらタシケントに向かうのであった。
「GV…ソウさん…シャオさん…シアンさん…どうかご無事で…皆さんが、どうか無事にこの家に戻ってきてくれますように…」
そして、シャオの協力によってタシケントにあるベラデン付近に辿り着いた。
「ここがエデンの本拠地・タシケント要塞“ベラデン”…ミラーピースを持った能力者もここに集まっているはずだよ。もちろん、連中の親玉パンテーラも… GV、ソウ。気をつけて…」
「ああ、分かってるよ」
「言われるまでもない…俺は俺の戦いをするまでだ」
2人は何とかベラデン内部に潜入すると、シャオに通信を繋ぐ。
「こちらソウ。GVと共にベラデン内部への潜入に成功した」
『その施設のデータはないんだ…慎重にね』
シャオに注意をするように促され、ソウとGVは立ち塞がるエデンの兵士を返り討ちにしながら進む。
すると皇神の施設で良く見たシャッターがある。
「これなら、閉じる前にダッシュで駆け抜けられる!」
このタイプのシャッターはもう何度も見ているので、閉じるタイミングも把握しているためにダッシュでシャッターを駆け抜ける。
「ここに俺達が仕留め損ねたG7も集結している…気を付けろGV、俺達の対策をしていないとも限らないぞ?」
「分かってるよ兄さん」
ここにはGV達が仕留め損ねたテンジアン、テセオ、アスロックがいるはず。
自分達の手の内をある程度知られたために、最初の戦いより戦いにくくなるはずだ。
それは向こうも同じだろうが。
シャッターを潜って部屋に入ると、ロックと同時にエデンの兵士が姿を現す。
「「(これは…罠か!)」」
「全ては同志パンテーラの御心のままに…お前達はいずれ楽園へと至る我らの姿を、指を咥えて眺めていろ!」
武装を構えて襲ってくる兵士とメカ群だが、いくら不意を突かれたとは言え、今更ポーンとメカに遅れを取るはずもない。
GVが避雷針からの雷撃、ソウが距離を詰めて雷撃刃で斬り払いながら先に進んでいく。
『2人共、無事だね?まだ先は長そうだ…ピンチの時は回復スキルを忘れないようにね』
「回復スキル…リヴァイヴヴォルトがあるが…使うタイミングを考えないといかんな…」
ヒーリングヴォルトのように使い勝手の良いサポートスキルがないソウからすれば使うタイミングを考えなければならない。
だが、まだ体力には余裕があるので使う必要はないので途中のトゲが敷かれた地形を雷撃鱗のホバリングでかわしながら移動する。
「今の地形は…」
『流石、敵の本拠地…警備も厳重なようだね』
「この要塞のデザインをした奴の“悪意”が感じられるな…」
先に進んで行き止まりに差し掛かり、キッククライミングで壁を登っていき、次のトゲ地帯はリフターに乗って移動する。
『どこもかしこも罠だらけだ…』
「罠のない要塞などあるわけがないだろう」
「これくらいなら問題はないよ」
今はシアンとモルフォの歌の加護はなく、追い詰められた際に発動するソングオブディーヴァもあまり期待出来ない。
故にサポートスキルを上手く使うことが鍵となる。
再びリフターのあるトゲ地帯に出て、迎撃してくるメカを破壊しながらリフターに乗り込む。
「またこの仕掛けか…トゲを仕掛ければ良いと思っているのかこいつらは…」
「兄さん?」
「いや、何でもない…気にするな」
登り切り、先に進むと大型と小型のメカやエデンの兵士が立ち塞がるが、返り討ちにしながら先に進む。
奥にあるゲートモノリスを発見し、それを破壊して先に進んでいく。
2人の様子は当然エデン側も把握しており、パンテーラとテンジアンが2人の様子を見ていた。
「やはり来たようだね。ソウとその弟…ガンヴォルト…」
「彼らに奪われたミラーピース、必ず取り戻さなければいけません。彼らの手に掛かり、散っていった同志達のためにも…」
「………そうだね…アスロックとテセオがアレを送り出してくれた。流石の奴らもアレを相手にしてはただでは済まない」
アスロックとテセオの能力で強化されたあの兵器を相手にすれば流石の雷霆兄弟もただでは済まないはずだ。
「そう…ですね…これ以上の犠牲は出したくありません……出来ることならここで彼らを止められれば良いのですが…」
残ったG7であるアスロックとテセオ、テンジアンはG7の中でも上位に位置する実力者だが、相手がGVとソウでは勝てるかどうか分からない。
例えテンジアンやアスロック達が最初から全力で挑んだとしてもある程度、手の内が知られている状態なのだから。
複雑そうにパンテーラはこの場を後にした。
ジャンプで次の足場に移動しつつ、兵士やメカを撃破しながら進むとベルトコンベアの足場が奥に見える。
『足を取られて、穴底に落とされないよう気をつけてよ?一発アウトなんだからね?』
「分かっている…」
攻撃してくるメカにはアメノサカホコでも見た2人を強制的にオーバーヒートさせる厄介な物も存在する。
「あのメカの弾を受けるとEPエネルギーの残量に関わらずにオーバーヒートしてしまうことになる。気を付けろGV」
「了解」
メカの攻撃を回避しながら進んでコンベアエリアを抜ける。
「エデンはシアンの力を奪って、一体何を企んでいるんだ…?」
『どうせ奴らのことだから、ろくでもないことに決まっているよ』
「俺としてはシアンはまだ理解出来るが、あの無能力者の関係者の小娘を再び拐ったことが引っ掛かる。以前シアンがあの小娘に怯えていたことと言い…あの小娘は一体何だ…?アスロックが小娘を無能力者ではないと言っていたことが気になる…何かシアンと縁のある存在なのか?なら、何故奴は無能力者ではないあの小娘を守ろうとする?…分からんな…」
「………僕は……初めて彼女を見た時…どこかシアンに似ているような気がしたんだ…」
疑問に表情を顰めるソウに、GVは初めてミチルを見た時の印象を思い出す。
「シアンにか?…気のせいだろう?あの屑の関係者ならばあの小娘もどうせろくでもない奴に決まっている」
「…そういう決めつけは良くないと思うよ兄さん?」
「あれの印象が悪すぎるんでな。身の回りの奴らもそうだと思うのは当然だろう…まあ、これまで戦って、エデンの…特にシアン関連の目的が今でも分からんというのは不気味だ…だが、あまり良いことではないのは確かだろう。急ぐぞ」
「了解」
更に奥に進むとエデンの兵士が襲い掛かってくる。
「雷霆兄弟…能力者でありながら我らに仇なす背教の徒!同志から奪ったミラーピース…返してもらおうか!」
「あれはシアンの物だ!」
脳裏に浮かぶのは、オウカの姿…第七波動を持たない人でも自分達能力者を恐れずに隔てなく接してくれる人はいる。
「背教だって?武力(ちから)で他者を抑えつけることが、お前達が信じる“教え”だと言うのなら、そんな教え、背いて当然だ!」
そう切り捨ててGVは雷撃を見舞い、ソウは雷撃刃で斬り捨て、その奥のシャッターを潜ると見覚えのある巨体が突如現れ、2人の前に立ち塞がる。
「これは飛天にいたプラズマレギオンか?皇神の未完成兵器が何故ここに…」
『プラズマレギオンには違いないけど、飛天の中にあった物より強化されているようだ…いや、これが完成型?』
「途中でエネルギーの糸が見えた…第七波動で強化されているのかもしれないね」
「テセオという奴とアスロックの第七波動で…か…2人分の第七波動で完成・強化させたのか」
2人に向けてプラズマレギオンのドリル型ミサイルが発射された。
「くっ!」
GVとソウは即座に雷撃鱗で防御を試みるが、ミサイルは勢いが弱まっただけで破壊されない。
このままでは次の攻撃に対応出来ないと判断した2人は即座にダッシュで離脱する。
「喰らえ!!プラズマビット!!」
ソウが反撃でビットを召喚して雷撃弾を発射するが、シールドで攻撃が遮断される。
「攻撃が弾かれた!?」
『2人共、プラズマレギオンにダメージを与えるにはまずシールドを破壊しないと!』
攻撃が弾かれたことにGVは驚愕するが、シャオの指示によってまずはシールドを破壊する。
「当たれ!」
銃のカートリッジをテクノスに切り換え、避雷針をシールドに当てると雷撃を浴びせて破壊し、シールドが破壊された瞬間にソウが本体にチャージセイバーの斬擊を浴びせ、更にエレキブレードの雷刃波を斬撃と同時に喰らわせてダメージを蓄積させていく。
しかしプラズマレギオンもプラズマ弾による反撃をし、ソウとGVはジャンプとホバリングで回避し、かわせない方はソウはガードヴォルトによる防御で防ぐ。
更に斜め上にミサイルが発射され、軌道を変えて2人の真上から降り注ぐ。
雷撃鱗でミサイルの動きを抑え、そのミサイルとミサイルの間に入ることでやり過ごす。
「ミサイルが破壊できないのは辛いな…」
「それでもビームが内臓されたミサイルよりはマシだろう」
前回の皇神との戦いで戦ったマンティスレギオンのミサイルにはビームが内臓されており、雷撃鱗で防いでもビームは雷撃鱗を無効化してくるので厄介だったが、このプラズマレギオンのミサイルにはビームが内臓されていないために勢いを減衰させられるだけマシだろう。
もしビームが内蔵されていてもガードヴォルトで防げるのだが。
回避している間にシールドが再展開され、再びシールドを破壊しなければならなくなる。
「霆龍玉!!」
「メテオスパーク!!」
雷撃の玉と雷撃の雨がシールドを破砕する。
しかし、プラズマレギオンは既に次の攻撃に移行しており、2人にレーザーを放つ。
不意を突かれた2人はまともに受けてしまい、カゲロウを使わされる。
「なるほど…最新型だけあって火力は前世代型や未完成品とは桁が違うな」
レーザーの威力にソウは表情を歪めた。
カゲロウがあるからこそ攻撃は透かせたが、直撃を受ければかなりのダメージを受けただろう。
「だけど、これで大方の攻撃はしたはず。レーザーにさえ気を付ければどうと言うことはない!」
雷撃鱗を展開している間にレーザーが撃たれないように注意しながらGVは再び雷撃を繰り出す。
ソウも斬擊を浴びせてダメージを蓄積させていくと、プラズマレギオンの動きに変化が起こる。
『SET AR FORMATION.OPEN BODY CATCHER STANDBY…DONE. [DG RASER]』
機械音声が響き渡り、次の瞬間には上半身と下半身に相当する部分が分離して2人に襲い掛かる。
「「(速い…!)」」
高速で動き回る上半身と下半身のスピードにソウもGVもついていけずにカゲロウを使わされ、オーバーヒート中に上半身の突撃をまともに受けてしまい、吹き飛ばされてしまう。
そして合体し、とどめとばかりにレーザーが放たれ、レーザーが着弾するのと同時に砂埃が舞う。
レーザー発射後に再びシールドが展開されたが、砂埃から2人が飛び出した。
「くっ、まだ終わっていないぞ!迸れ!紅き雷霆よ!閃くは破滅の雷光!紅雷の刃よ、敵を斬り裂け!!ギガヴォルトセイバー!!」
「迸れ!蒼き雷霆よ!天体の如く揺蕩え雷!是に到る総てを打ち払わん!!ライトニングスフィア!!」
ソウが強烈な雷刃波を放ってシールドごとプラズマレギオンを斬り裂き、GVが残る力を使って蒼の雷球を直撃させる。
許容範囲を大きく超えたダメージによってプラズマレギオンの全体に亀裂が走り、直後に大爆発を起こす。
「撃破完了…」
『エデンの奴ら、こんな物を持ち出してくるなんて…』
GVの報告を聞きながら、シャオはプラズマレギオンの残骸を見て呟く。
「それだけ向こうも本気だと言うことだ…こんなガラクタでこれなら次はもっと厳しくなるだろう…力が戻るまで身を隠すぞ」
「そうだね」
これからの戦いを考慮して、ソウとGVは回復のスキルが使えるようになるまで身を隠し、休息を取るのであった。
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