蒼と紅の雷霆
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蒼紅:第三十三話 水晶
前書き
ガウリってテンジアン以上に扱いが難しい
テンジアンとのリゾートホテルでの戦いが終わってからしばらくGV達は軽いミッションをこなしつつ、エデンの出方を待っていた。
オウカのお手製の食事を摂りながらGV達は雑談をしていたのだが、シャオが慌てた様子で入ってきた。
「2人共、大変だよ!」
「どうした?」
シアンとオウカは慌てた様子のシャオの様子に不安そうにしている。
TVモニタを指すシャオ。
そこには無残な姿となった高速道路が映し出されており、道は分断され、所々に水晶のような物が融合している。
「随分と現実離れした現象だな…これは水晶(プリズム)の第七波動か…宝剣を使ったとは言え、ここまでの規模は見たことがないな」
水晶の第七波動自体は珍しい能力ではないが、ここまでの規模の物はソウやGVも初めてだ。
「これだけの規模の第七波動。他には考えられないよ」
「ゆっくり休んでいる暇もないか…了解。すぐに現場に向かうよ」
シャオの言葉にGVは頷いて準備に向かう。
「ところで敵についての情報は他にないのか?」
「そうだね…ハイウェイを破壊しながら高速で移動しているらしいよ」
ソウの問いにシャオは情報を検索しながら答える。
「高速移動か…こちらも移動手段が必要になるか」
「そういうことなら僕に任せておいて、とっておきのマシンを用意しておくから」
「よし、先に現場に向かう…お前はマシンを」
「分かった…任せたよ兄さん」
ハイウェイはソウに任せてGVはマシンを取りに向かう。
「GV…ソウさん…お気をつけて」
「うん、行ってくるよオウカ」
「さっさと片付けてくる。心配するな」
シャオと共に2人が急いで出ていくのをオウカとシアンは見つめていた。
『…………』
「…?モルフォ、どうしたの?」
『…何でもないわ(何故かしら…?彼らと会うのが…これで最後になるかのような…この気持ちは…)』
ハイウェイに到着したソウはGVに通信を繋ぐ。
「ハイウェイに着いた…お前の方はどうだGV?」
『僕も今そっちに向かっているよ。合流地点で落ち合おう』
「ああ、それにしても随分と派手にやったものだな。このような水晶が突然現れたら交通機関が大打撃を受けるのも頷ける…急ぐか」
雷撃刃を展開し、道を塞ぐメカとエデンの兵士をチャージセイバーで薙ぎ倒していく。
途中で燃えている自動車が道を塞いでおり、どうやら燃料のガソリンが引火したのだろう。
「む、燃えているな」
『どうやらスプリンクラーが壊れているようだね…手荒だけどバルブを破壊して水を出すか…マッハダッシュかホバリングか空中ダッシュを利用して強引に突破してもいいかも』
「念のためにバルブを破壊するか」
バルブをチャージショットで破壊し、水を出させて自動車の火を鎮火させて先に進む。
「ここだけではなさそうだ。早くGVと合流しなくてはな」
敵を返り討ちにしながら進み、輸送車の積み荷らしきコンテナを足場にして進んでいると水晶によって破壊された建物が目に入る。
「このハイウェイは確か、この国の物資補給路としても使われていたな。エデンの奴等からすれば充分狙う価値のある場所のようだ」
『うん、このハイウェイが破壊されれば交通機関だけじゃなくて物資の補給もままならなくなる。あいつらは本当に見境のない…!』
「今はそんなことよりもミッションに集中しろシャオ。お前のミスで死ぬのは御免蒙る」
『あ、ごめん…』
雷撃では水晶は破壊出来ないために、水晶に身を潜ませた敵に気を付けながら慎重に進むとGVから通信が入った。
『ごめん、兄さん。道路が破壊されているからそっちに向かうのは少し遅くなりそうなんだ』
「分かった。敵の妨害はないか?」
『今のところはね』
「よし、なら気をつけて来い…いいな?」
『了解』
GVからの通信が切れると、奥から機械の駆動音が聞こえ、ソウは慎重に奥に見覚えのある兵器が待ち構えていた。
「こいつは確か皇神の無人戦車の試作機…確かスパイダーと言ったか?どうやらエデンに奪われたようだな…過去のデータはあるから大した相手ではないがな」
火力は相変わらず高いが、露出したコアが弱点と言う欠点は未だに解消されていないようだ。
「プラズマビット!!」
攻撃をかわしつつビットを召喚するのと同時に雷撃弾を発射し、ショットを併用して瓦礫を足場にしながらコアにダメージを与えていき、最後にエレキブレードの雷刃波を放つ。
「終わりだ!!」
ダメージが蓄積していたコアに雷刃波を受けたスパイダーはコアが破壊されたのと同時に機体も爆発した。
「破壊完了。所詮はガラクタだ」
『流石だね、ソウ…ゲートモノリスを破壊して先に進んでGVと合流しよう』
シャオに促されたソウはゲートモノリスを破壊してGVと合流するために先に進む。
「そろそろGVとの合流地点のはずだが…」
「兄さん!」
GVの声に振り返ると、バイクマシンに乗ったGVが向かってきた。
「よし、GV…発進だ」
「了解」
ソウもマシンに乗り込み、発進を促す。
『あ、そうだ。ソウ、分かっていると思うけど…マシンに乗っている最中にマッハダッシュはしないでね?流石のGVもソウの超高速移動に対応しながら操縦するのは厳しいだろうから』
「…するわけないだろう」
「このマシンなら水晶にぶつかっても問題ない。このまま行くよ」
「ああ、頼む…マシンが保つ程度に迅速かつ安全でな」
道を塞ぐ水晶をマシンで粉砕しながら進み、目の前のメカを雷撃刃で破壊していき、破壊しきれないメカはプラズマビットを併用して手数を増やして破壊していく。
しばらく突き進むと、変身したG7の1人であろう青年が水晶でコーティングした路面をまるでスケートのように滑走していた。
「奴が最後のG7か…!ターゲット捕捉…仕留める!」
「ようこそ地獄のGATE。逃げられない死のFATE。さよならここでCHECKMATE!」
「残念だが、終わるのはお前だ…!!」
敵の第七波動による攻撃を雷撃刃で粉砕すると、その破片が敵に直撃する。
更にショットとプラズマビットの雷撃弾を乱射し、敵にダメージを与えていく。
敵の攻撃と巨大な水晶の障害物を破壊し、ダメージを蓄積させていくと、GVがマシンを止めた。
「………兄さん、この先はどうやらこのマシンでは進めないみたいだ。」
道路の状態が酷く、これ以上進むのは不可能であった。
「そうか…帰りはこのマシンを使うことになるだろうから、お前はここで待っていろ」
「了解、マシンを壊されるわけにはいかないからね」
「奥のHALLにお前をCALL。すぐそこお前のDOWNFALL!」
敵は一気にスピードを上げて距離を離した。
「奥か…では行ってくる」
「分かった…気をつけて…」
マシンから降りたソウは敵を追い掛ける。
「…シャオ…敵の他の動きは…シャオ?通信が出来ない?」
残ったGVが通信を繋ごうとするが、エデンによって通信が妨害されてしまったのかシャオへの通信が出来ない……何故か嫌な予感がした。
ソウが敵を追い掛けていると、1人の青年とアスロックが立っていた。
「アスロック…それからお前は先程の能力者だな?わざわざ敵を前に変身を解くとは何の真似だ?」
「観客共(オーディエンス)が寄せる期待。顔見せぐらいはしておきたい。俺はガウリ、A.K.Aプリズムマスター!ここが舞踏会(ダンス)の会場(ステージ)だ」
再び変身現象を起こし、再び戦闘形態となる。
アスロックの後ろには新しく組み立てたらしいガレトクローネがある。
その腕には見覚えのある少女が捕らえられていた。
「そいつは…あの屑の関係者か?飛天の時といい、随分とエデンから気に入られているようだな?その小娘は無能力者だろう?」
「彼女は正確には旧人類(オールドマン)ではない…彼女は計画(ルセット)に必要な材料(コマ)だ。だから連れ出した」
「無能力者ではない…だと?ならば何故、奴はその小娘を守ろうとする?それに一体何の力があると言うんだ?」
「答える義理はない…ガウリ…この場は任せたぞ」
アスロックはガウリと言う青年にこの場を任せてミチルと共に立ち去る。
ソウとガウリのみが残り、互いに睨み合う。
「それじゃあさっきの続きと行こうかDEVIL(悪魔)?エスコート頼むぜ?」
「……良いだろう…時間も惜しい、すぐに終わらせてやろう!!メテオスパーク!!」
雷撃弾を発射し、上空に飛んでいった雷撃弾が分裂してガウリに降り注ぐ。
その降り注ぐ雷撃弾をガウリは回転しながらのジャンプでかわす。
「!?」
「無能力者(ワナピー)共に味方するお前の思想・理解不能。リズムを刻む俺のライム。プリズムで刻むお前の罪(クライム)!ド派手に昇天(果てな)!強引なダンスでGOINGDOWN!」
「俺は別に無能力者の味方をしているわけじゃないんだがな……しかし、罪か…確かにお前達からすれば俺のやっていることは滅茶苦茶だろう。だが、それでも俺は俺の守る物のために戦う。罪と呼びたければ呼べばいい!!」
ガウリが蹴り飛ばしてきた水晶を回避しながら斬擊を喰らわせてダメージを与えていく。
「時代は戦国。この世は地獄。エデンが目指す俺らの天国」
「地獄か…まあ、能力者からすれば生きにくい世界なのは認めよう。」
エレキブレードの雷刃波を放つが、ガウリは巨大な水晶を作り出し、それを蹴り飛ばして雷刃波を相殺する。
「無能力者(ワナビー)共はAIRHEAD(馬鹿)ばかり。出したくなるさ口から反吐。あんたもそうだろ?かつてのあんたは正にDEVIL(悪魔)なんだ」
「否定はしない。思い上がった馬鹿を見ると反吐が出る。少し前にその典型を潰し損ねたからな…」
リゾートホテルで再会し、潰し損ねたアキュラを思い出して不快な気分となる。
「だが、今はそんな過去のことはどうでもいい。今はお前を倒すことのみ考える。覚悟するんだな…!迸れ、紅き雷霆よ。お前の強固な水晶を俺の紅き刃で叩き斬る!」
攻撃の凄まじさが増していき、ガウリに斬擊が当たり始め、チャージセイバーと雷撃刃による猛連撃でガウリの体に裂傷が刻まれていく。
「PIMPな見掛けでJIGGYなリリックかましてくれるぜ
…!」
見た目に寄らないソウの激しい攻めにガウリは冷や汗を流しながらもソウの攻撃を回避し、水晶を飛ばしていく。
スケートのような動きに最初は対応出来ずに何度かガウリの攻撃を受けてしまうが、次第に対応出来るようになり、少しずつガウリのダメージが蓄積していく。
しかしガウリもこのまま簡単にやられるはずもなく、切り札を切る。
「UP YOURS……心躍らす煌めきのプリズム!聳え立つよう並ぶプリズマ!逃れ得ないインプリズン!PRISM PRISMA PRISON(プリズムプリズマプリズン)!!BLING BLING!!」
水晶の柱が降り注ぎ、スキル名の通りにソウの動きを止める檻となる。
そしてレーザーが放たれ、ソウはレーザーの射程外にいたために動かなかったが、レーザーは水晶によって屈折してソウに直撃する。
「屈折しただと?」
カゲロウによって無効化することは出来たが、このままではダメージを受けると判断して反撃のタイミングを伺う。
2回、3回のレーザーを辛くも避けきるが、ガウリは回転しながら突っ込んでくる。
「BREAK DOWN!BOMB OUT!!」
「そこだっ!迸れ、紅き雷霆よ!閃くは破滅の雷光!紅雷の刃よ、敵を斬り裂け!!ギガヴォルトセイバー!!」
回転しながら高速で突っ込んでくるガウリにカウンターでSPスキルの雷刃波を叩き込む。
「痛ッツ!魔法が……解ける……」
元々の防御力が低いガウリにとってソウのSPスキルの直撃は致命傷となり、ガウリは消滅寸前の状態となる。
「終わりだな…」
「っ…やっぱりあんたはREALDEVIL(本物の悪魔)…だが、俺のROLE(役目)は果たせたぜ…」
「何…?」
「後は俺のCREW(仲間)が何とかしてくれる…頼んだぜ俺達のHOPE(希望)…」
それだけ言うとガウリの肉体は消滅し、宝剣が砕け散り、ミラーピースがソウの手に。
「シャオ、ミッションは終了だ…シャオ?」
通信を繋げようとしても通じない。
ガウリを倒しても繋がらないことに違和感を感じたソウは急いでGVと合流してオウカの屋敷に戻るのであった。
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