魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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Duel:17 帰宅路、スカリエッティ家のお母さん
――sideはやて――
震離が運転する中で、その助手席に座って二人で他愛もない会話をしてる。
ふと、後ろに視線を向けて、そういえばと。
「中島家はホンマに子供が多くて凄いなぁ」
「えぇ、ただまぁ中島家と言うより、スカリエッティ家の血が凄いんでしょうけどねーこの場合は」
後ろに小さい私とアインス、ヴィータが3列目、2列目には、この世界のギンガ達中島家のお姉ちゃんズが眠ってる。
視線を前に向ければ、前方を走るワゴン車の中には、クイントさんが運転をして、魔法を知っているスバルやギンガ、そして中島家のちびっ子ズと、七緒が乗ってる……んやけど。
「やっぱり旅行疲れが出るんやねぇ。走り始めは皆起きとったのに、今ではグッスリや」
「ブレイブデュエル以外でも沢山、それこそ目一杯遊んでましたからねぇ」
せやな、と返しながら旅行の空き時間の時の皆の行動を思い返すと、年相応に全力全開で遊び通してたしなぁ。
年相応なヴィータは勿論、アインスも皆の面倒を見てくれてたし、何よりも驚いたんは。
「……小さい自分が元気に走り回ってるのは、ちょっぴり羨ましかった」
「……そうですか」
震離も深くは追求してこおへんけど。それでも私の言いたい事は伝わっとるはずや。
「あ、大丈夫ですよ。薄く防音壁を張ってますんで、内容が漏れる事はありませんよ」
「手早いなぁ、でもまぁ安心して話せるわぁ……闇の書事件のこと、何処まで知ってるん?」
「ある程度、としか」
「そか。まぁ、そんな重い話がしたい訳や無いんやけど、後ろの私と同じくらいの頃って、まだ脚がうまく動かへん頃やったんよ。
そりゃ勿論リハビリもして、歩けるようになったんやけど……もう少し後のことや」
嘗ての私を思い返す。闇の書の効果で、私の体……その端の方から徐々に動かしにくくなってきて、闇の書から夜天の書に変わってからは石田先生も驚く程に回復していった。
でも、本音を言えばもっと早くに治ってほしかったというのもあった。
今でこそ、嘗て願ったみんなと一緒に散歩に行くとかを叶えることは出来ても、あの時、初代リインフォースと一緒に歩くというんは叶わなかったことや。
だけどこの世界では。
「皆が変わらず家族をしている。その中にはリイン……ツヴァイも、アインスも居る。そして、一緒に散歩して買い物して、走り回れるんはやっぱりええなぁって」
当たり前の日常がそこに在るということ、そして、それが当たり前に過ぎていく事の尊さそれを考えると、今の私も十分恵まれてて、比べることやないと分かってるけれど。
あかん、目の前が滲んでくる。
「……この世界って、凄いんですよね」
ふと、震離が呟く。
「当たり前の日常が全部そこに在るっていう、それこそ昔望んだIFのような世界。
分かっていても……羨ましいって思っちゃいますよね」
「うん。私ですらこれやからなぁ」
後の二組はきっと難しいことになってるんやろうなぁ。
私はまだ、こんなに違うんやねって笑っていられる。だけど……。
「……難しいですよねぇ。だけどまぁ、まだ時間はありますから、ゆっくり整理して下さいな」
「せやんなぁ……目処は立ってるん?」
「……目処ではなくて、聞いた話的に安定しているらしいので、そっから計算やらなんやかんやで、4日位ですかねぇ。勿論把握したら早めることも遅くすることも可能です」
「……そっか」
……あぁ、楽しい時間っていうんはあっという間やねぇ。
さて。
「なぁ、なんで私には男が来ないと思う?」
「高嶺の花、騎士たちの主、トライアングルエースの一角、理由なんて上げればキリがないですよ。特にはやてさんを上から物言える同世代ってなかなか居ないでしょうに」
「……やっぱりかぁ」
ブワッと涙が出てきました。
――sideギンガ――
「……ぁ」
キッカケは七緒のつぶやきからだった。あまり感情を出さない……わけではないけど、表現の薄い子が、わかりやすく嬉しそうな表情をしたこと。
「どーしたの七? なんかいいことでもあった?」
運転席の母さんが真っ先に気づいて、ニヤリと笑みを浮かべながらバックミラー越しに七と目を合わせる。
「……うん、一日だけだけど、お母さんが帰ってくるって」
「え、本当! お義姉さんってば何時も忙しいもんねぇ。良かったじゃない」
「……うん」
……不味い。
そう考えると同時に後部座席で、小さい自分を膝枕してるスバルから念話が飛んできて。
(ギン姉、七達のお母さんって誰か聞いてない!?)
(ゴメンねスバル。私も全く聞いてない)
サーッと冷や汗が流れるのが分かる。誰が来ても驚かない、とは言い切れないんだ。私もスバルも。
だって、母さんの実の兄がジェイル・スカリエッティだという事。そして、その奥さんが誰であっても……正直驚き以外の感情はでないと思う。
だけど、何よりも不味いのが……。
「もう少しで家に着くから待ってね七?」
「うん、お願いします」
もう間もなく到着してしまうという事。
いや、でも待って。誰であっても驚くというのはよくよく考えたら誇張しすぎたわ。私達が知ってる人とは限らないもの。知らない人であれば、ある程度衝撃も軽減出来るはず。
そうよ! 多分、きっと大丈夫、なはず!
――――――
「七緒~!」
「お母さーん」
……嘘ぉ。
素直な感想がそれでした。この世界の実家の隣に立つスカリエッティ家の玄関に立つ茶色の髪の女性。私も元の世界で何度か顔を見たことの在るその人は……。
「オーリス義姉さん。お久しぶりです」
「クイントさんも久しぶり。七も温泉に連れてってくれたみたいで、本当にありがとう。あの人から聞いたわ」
「あ、兄さんが来なかったのは、義姉さんが帰ってくるって知ってたからですか?」
「まさか。明日にはまた海外よ。今日は出張に行く前にせっかくだから可愛い娘たちの顔を見に来たの。勿論クイントさんの娘たちも……ってあら?」
オーリスさんの視線が私とスバルを捉えた。小さなスバル達を連れて行く途中だったとはいえ、脚を止めてしまったのが間違いだった。
(ど、どどどどどうしようギン姉!?)
(お、おおおおおちついて、スバル。大丈夫、ボロを出さなければ問題ないはず、多分!)
お互い念話の中で慌ててる中で、こちらに近づくオーリスさん。
そして……。
「クイントさんに似て美人に育ってるのねぇ。流石だわ」
「でしょう? びっくりするくらい元気で美人に育ってるのよ。私も初めて見た時驚いたわー」
……うん!?
「ごめんなさいね。うちの人がもー……なんだかこの前も装置暴走させて未来から二人飛ばしたって聞いてたけど本当にもー」
七緒がオーリスさんの腰に抱きついているのが浮いているような、やけにピッタリのような……。
「ギンガちゃ……さんは、三月と同じくらいで、スバルちゃんは四菜位かしらねー」
「えぇ、ちょうどその位です。でもよくよく考えると成長期って凄いわぁって考えちゃうんですよねぇ」
「成長期って凄いわよぉ。うちは上二人が普通の食欲だったけれど、三月の時は、中島家に匹敵する位食べてたし、空手してるのもあって凄くてねぇ。
……一度うちの食料が底をついたときには、泣いてたわぁ……三月が」
「フッ……クッ」
……不味い。情報量が多すぎる。ミツキさん、シイナさん……? あ、トーレとクアットロの事かしら?
え、じゃあ、待って……オーリスさんがお母さんって事は。
「レジアス学園長は元気?」
「元気すぎて大変よ。ブレイブデュエルの噂こっちまで届いてるわ。安定出来るようになったら全国展開も出来るだろうって嬉しそうにしてたわよ」
……頭痛くなってきた。やっぱり、というか……居るんだね。本当に。
本当、この世界って凄いんだね……。
「あ、あの人から聞いたけれど、はやてさん……も未来から来たって聞いたけれど?」
「そうですねー、後はテスタロッサ家のフェイトさんって言う女性と……天雅奏さん、緋凰響ちゃん、緋凰はなちゃんっていう三人も居ますね」
「あー……違う未来からとは言え皆に会ってみたいけど。時間的に八神堂にしか寄れないわねー。大きいはやてさんも其処に?」
「はやてさんからしたら驚きますよ、きっと?」
「久しぶりにはやてさんの顔も見たいし、一足先に未来のはやてさんの姿も見たいし明日会いに行くわ。
それじゃあクイントさん、ギンガさんにスバルちゃんも、またね」
ひらひらと手を振って、スカリエッティ研究所へと入ってくオーリスさんを見送りながら、スバルと二人で唖然としっぱなしだ。
「……今日お母さんとお風呂入りたい」
「温泉に沢山入ったんじゃないのー? お母さんとしては嬉しいけどねー」
だけど、そんな二人の様子を見ていると。本当に親子なんだなぁっていうのがよくよく伝わってきた。
……元の世界と比べると、本当に不思議な縁というかなんというか……イケナイ、頭痛が酷くなってきたわ。
「さぁ二人共。悪いんだけどチビ達連れてきて貰っていいかしら? お母さんは今から晩御飯を作ります! こっちのギンガや、チンクたちは母さんの手伝いを。大きいギンガたちはチビ達連れてきたら手伝ってほしいわ」
パンと両手を合わせて、母さんが言うのを聞いて。
「はーい。ギン姉やろっかー」
「うん。じゃあ、ギンガもお願いね?」
「はい。大きい私もお願いします!」
それぞれのやることをするためにパラパラと散って行く。
形は違えど、本当に……本当に。
――sideサト――
「もう良いですよ。王様達も今日は疲れてここまで来ないでしょうし、一応探知も掛けてるので……気を抜いても平気ですよー」
震離や流の住んでいる部屋についた辺りで、流がそう声を掛けられた瞬間。
「……疲れたわぁ……ほんと、もーいやだー」
響が膝から崩れ落ちました。
……気持ちは分かる。何処行っても女児扱いで、子供扱いはしんどい物があるし。
こちらも、何処行ってもなんか慣れない扱い受けるしよく分かる。
「お疲れ様です主。サト様も流様も本当に助かりました」
「いえいえ、奏さんは震離さんも、もう間もなくとのことなので。それまでゆっくりしててくださいねー。私は晩御飯の仕込みをしますので」
「……手伝うことは?」
「平気ですよ。ゆっくりしてて下さいな」
何処からか取り出した黒いエプロンを着けながら台所に入ってくのを見送って……。
残ったのはこの三人。
一瞬だけ静寂が包んで……。
「……将棋でもやる?」
「……ハイパーミラーマッチだな。やろうか」
「ダブル主の試合、見てみたいです!」
居間に向かって勝負するための用意を初めて。
――――――
「ただいまぁー。疲れたわー」
「おじゃましまーす。最後の最後まで先輩がクヨクヨしてて大変だったー」
「あ、おかえりなさいお二方。もう少しで晩ごはんできるのでもう少し待ってくださいねー」
おや、震離と奏が戻ってきた。思ってた以上に早かったが……。
「……三手位戻そうか?」
「……いや、待って、まだ手は有る……有るはずなんだ、頑張れ俺……!」
小さい俺、というか見た目相応まで劣化というか、退化してるせいで細かい所まで考えが回っていないんだろうなぁと。
せめて同じくらいならば、良い勝負だが……あちらからしたら、分かってるのに止めきれないというジレンマに陥って、なんというか可哀想。
「え、流が御飯作って……え、嘘ぉ!?」
「ふふふ、そのリアクションも懐かしいですね。お疲れの所ごめんなさい震離さん。ご飯よそってもらっても?」
「はいはい。その前に手ぇ洗うねー。すぐ済むから待ってね」
「勿論。今日は唐揚げと出汁巻玉子、味噌汁ですよー」
「へー……うわすご、美味しそう。すぐ手洗いして来るね。震離何処?」
「こっちこっち~」
母親役に収まってる流と、純粋な女性二人が揃ったおかげで、一気に騒がしくなる。
「……勝負はまた後でやるか。私と響はここで片付けてるからはなは……あ、流の所からおかず運んでもらっても良い?」
「わかりました。流様ー、運びますよー」
「あ、お願いね。少し重いから気を付けて」
唐揚げの乗った大皿を居間のテーブルまで運んでるその間に。
「響や。夜になったら一旦戻るんだ。その時再戦しようか」
「……あ、そうか。よっしゃ片付けるわ」
直ぐに盤面崩して片付ける。コイツ自分のことだから気づいて無いだろうけど。
自然と涙目になってたって分かってないんだろうな。
「よーし、手洗い終わったー。各々どれくらい米食べるかおせーてー」
「私多めが良いなー……」
「知ってる。奏は大盛りって……中島家クラス?」
「其処までじゃないかなぁ。普通の大盛りかなぁ!」
「はな、今度は卵焼き運んでくれる?」
「了解しましたー」
……すげぇ、女三人寄れば姦しいって言うけど、本当だった。
いやまぁ、うん。1人女性カウントしていいかわからないけれど。あんまり性別に拘ってないから良いか。
お盆を持った震離が机を見て、御飯を並べながら。
「響とはなが一辺に。私と流が一辺に、サトと奏がそれぞれ座れば問題ないかなー」
「あいよ。はな、隣においで」
「お隣失礼しますねー」
それぞれが席についたのを確認して。流が周りを確認してから手を合わせ。
「それでは、いただきます」
……結論から言うと、唐揚げも卵焼きも凄い争奪戦が始まってました。
――――――
「……で、マジな話をしたいんだけど。良い?」
ご飯を食べて、はなが奏と震離から大いに可愛がられたせいか、疲れて眠った所で。
少し真面目な雰囲気を纏った響の一言から始まった。
そして、それはおそらく……。
「……帰る目処は立ってる、と考えても良いの?」
しん、と静寂が包む。響の視線はただ真っ直ぐ流と震離の座る席を見つめている。
その流はと言うと、静かに瞳を閉じたと思えば、灰色の光が流を包んで……収まる頃には本来の流の姿に戻る。
「厳密に言うと、立ってる。というより、条件さえ揃えば返すことは可能です。
おそらく今回の件は、サトさんが響さんを……限りなく自分に近い、自分とほぼ同じ道を辿ってかつ、最悪な結果にならなかった緋凰響を夢で繋がってしまい、無意識に呼び出したと推測されます」
申し訳なさそうにこちらを見るけど、小さく首を振って気にするなと伝える。
そのまま流から引き継いで。
「……俺が、呼び出したのはおそらく4人。響と奏、フェイトさんとギンガだったはず。
前者二人は言うまでもなく、後者二人は、私が意識を取り戻してから、あの二人がよく見舞いに来てくれていたのに、私は何も返せてないし、どっかで謝りたかったんだと思う」
これに嘘は無い。そして、奏を無意識に呼んだのはおそらく、この体のレリック。私の世界の奏の色に染まって、中に意識が残っていたから……。
「……確かに、スバルがついてきたのは、きっとギンガと一緒に休憩入ったからだろうし、私ははやてさんと休憩……っていうより、仮眠に入ったからだと思う。そのタイミングで呼び出されたのなら色々納得できるね」
この世界に飛ばされる前を思い返して奏が言う。
響も少し考えて。
「俺はフェイトを看病しながら眠って、それでかな。隣にはなも眠ってたからね。そうすると、タイミングが合えば高町親子も入ってた可能性も合ったのか。やばかったな……いや、やばくは……あれどっちだ?」
「なのはさんまで来たら、バランスブレイカーどころの騒ぎじゃないから良かったよ。うん」
響が戸惑っている間に、震離が助け舟を出す。
コホン、と流が咳払いをして視線を集めて。
「話を戻して、条件さえ揃えばということについてお話を。本来なら来た時点で還せたのですが、それが出来なかった理由も。
震離さんと協力して還すための術式を使うはずだったのですが、震離さんは満月が近い関係で下手なことは出来ない上に、旅行の時には完全な満月だったためあまり魔法を使えなかったのと、私がまだまだ不安定でして……お恥ずかしい」
……?
自然と首を傾げる。それは響も奏も同じらしくよく分かっていない様子だ。
どういうことだ?
「あれ? サトはともかく、響の方じゃ私人外になってた……よね?」
……ぎこちなく響が頷いて、奏は驚いた様子で目を丸くしてる。
「まぁ、うん。私人外……吸血鬼になっててぇ。うん。それで満月の状態で魔力使ってると下手すりゃバーサクモード入るのよね。だから響とサトの相対には流が乱入したんだけど、流は流でまだ通常状態には程遠いわ、武装は完成してないわの二重苦。
それは一旦置いといて、帰るための手段としては、私が魔力を流に供給して」
「その魔力を使って、私が枠超えの魔法を展開と、一瞬理を書き換えて、事象を超越します」
イエーイと二人で手を合わせて、さも当然のように言うけど……あれ?
「……すまん。君ら二人と1年一緒に住んでて言うことじゃないと思うし、震離が吸血鬼になってるのも教えてもらってるから知ってるんだけど。
平行世界渡航ってそんな難しいと言うか、超越とかしなきゃいかんの……?」
思わず声が震えてしまったが、言いたいことは全部言えた。
「え、んなわけ無いじゃん。私と流はタイミングで、サトはレリックで。だけど、それ以外で安全に且つ無傷で、誰も欠けること無く、ピンポイントで元に戻そうと思ったらこれくらいしなきゃ」
「この世界に影響を残さないで行こうと思ったらこれですかねぇ。一応ジェネレーター動かして、ヴィヴィオ達が来たときと条件を近づけますけど、やっぱり魔法関係ならこれかな、と」
……要するに。
「流よりも、震離が安定しなきゃいかんってことで、良い?」
「「はい」」
……ガクン、と私も響も奏も肩を落とす。
なんか、身内がすごい遠くに行ったんだなぁと。
「まぁ、一番はサトさんの力もあれば完璧なんでしょうが……贅沢はいいません。二人で何とかします」
……ん!?
「そう言えば、レリックで跳べるって言ってたけど、将来的に自由に引き出せるの?」
「うん。私達の世界に来てたサトは。今より明るくて、もっと洗練されて、空間転移で攻撃躱すっていう凄いことしてたよ」
未来の俺は何してんだろう……嘘だろ。
「そのためにサトさんのデバイスを作っていたんですが……ねー。この前の戦闘で一部破損しましたし、お守り代わりに渡してたのが仇となった最悪な結果になりましたし、ねぇー?」
「……ゴメンて」
ねーというタイミングで語尾を強める流の視線がいたたまれなくて、つい視線を反らしてしまう。
「……と、言っても。これは避けられないことだったんじゃないかなぁ。まぁ、しゃーないよ」
……ほんと、未来のヒタチサトさんは何をしてらっしゃるんでしょうね。
「まぁ、サトの話は置いといて」
響が物を横に置くようなジェスチャーをしてから。
「後何日で帰れるのかということと、それは誰か知っているの?」
響の問に流と震離は顔を見合わせて。
「それには私が。帰りの途中ではやてさんに言ったよ。ここまでぶっ込んだことは言ってないけど、それでも4日と。
一応一日程度早めることは出来るし、一週間に伸ばすことも出来る。だけど、それは……」
震離の懸念材料に皆の表情が沈んで。深い溜め息と共に。
「……あの4人に里心がつくかも知れないんだよなぁ」
「ううん響。3人だよ。はやてさんは……唯一違う視点からアインスを見てる。だから、あの3人だよ。良くも悪くもね」
はーっと、全員でため息が。
「……まぁ、暫く残り時間は少ないけど。様子見だな。俺は心配してんのは……」
そう言って響の視線は、こちらに向けられる。
言いたいことは分かるからこそ。
「心配するな、とは言えないけど。平気だよ。そのために俺は私に変わるのだから」
……不味い。皆の視線が妙に温かくて、こそばゆい。
「そっか。ならいい」
そこに居る響も、満足そうに笑って……。
あぁ、そっか。
もう、こんなにも……違うんだなぁ。
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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