戦国異伝供書
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第五十八話 出家その十二
「そこまでになられ都にまでです」
「強い力を及ぼしているでおじゃるな」
「そこまで見ますと」
「確かに優れているでおじゃるな」
「ですがその心が」
それがというのだ。
「あまりにも剣呑です」
「では麿はでおじゃるな」
「拙僧が思うに」
「将軍となっても」
「用いてはなりませぬ」
決してという言葉だった。
「むしろです」
「除くべきでおじゃるな」
「斎藤殿、宇喜多殿と違い」
松永と同じく悪人と言われ忌まれている彼等とも、というのだ。雪斎は松永にさらに言うのだった。
「魔性も感じまする」
「和上は」
「何か得体の知れぬ」
「だからでおじゃるな」
「あの御仁が殿に近付いてきたならば」
その時はというのだ。
「そして近寄らずとも」
「天下の為にでおじゃるな」
「除くべきです」
「わかったでおじゃる」
「毛利殿はそこまでせずによいかと」
彼についてはこう述べた。
「確かに奸悪恐ろしいですが」
「それは戦国の世だからでおじゃるな」
「多分にそうしたとこともありますので」
だからだというのだ。
「ですから」
「用いることもでおじゃるな」
「あの方は天下を望まずそれなりの立場で、です」
「満足するでおじゃるか」
「足るを知る御仁かと」
「では山陽と山陰で、でおじゃるか」
「満足されるかと」
それが元就だというのだ。
「ですから」
「さしてでおじゃるな」
「危険でありませぬ」
義元、彼にとってはというのだ。
「あの様に天下を望まず足るを知る御仁は」
「用いていいでおじゃるな」
「左様です、それでは拙僧はです」
「尾張攻めひいては上洛のでおじゃるな」
「策を練ります、そして竹千代と共に」
「先陣を務めてくれるでおじゃるな」
「はい、竹千代は采配もよいので」
それ故にというのだ。
「先陣を務めてもです」
「存分に働いてくれるでおじゃるな」
「間違いなく」
「だからでおじゃるな」
「ここはです」
是非にと言うのだった。
「竹千代を先陣にしましょう」
「わかったでおじゃる」
「そして兵の数は」
雪斎はこちらの話もした。
「二万五千をです」
「出すでおじゃるな」
「当家は実質百六十万石です」
駿河、遠江、三河の三国を合わせてだ。
「それならばです」
「四万の兵を出せるでおじゃるな」
「ですが流石にそれだけの兵は出せませぬ」
「守りに置く兵を遺しておくでおじゃる」
「一万五千の兵を遺しておき」
三国の守りにというのだ。
「二万五千の兵で、です」
「尾張からでおじゃるな」
「美濃、近江とです」
「進んでいくでおじゃるな」
「そう致しましょう」
「和上が言うなら」
それならという返事だった。
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