銀河酔人伝説
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酔っ払い、バカを病院送りにする
前書き
ようやく暁でも更新が可能となりました。遅くなって申し訳ありません。
グレゴリーの仲介(懇願)により、ホアン・レベロ・トリューニヒトの盟約が成されてから数ヶ月の宇宙歴796年2月、フェザーンからの情報で再び帝国軍が同盟侵攻を察知したトリューニヒト国防委員長は、迎撃作戦の作成を統合作戦本部に命じた。
後日、統合作戦本部より作戦案が提示され、その可否を決める国防委員会が開かれた。普段なら緊急性の強い迎撃作戦の場合、決断の速さが求められるため、あまり紛糾せずに可決されるのだが、今回は珍しく国防委員であるグレゴリーが作戦案に対して異議を申したのである。
「統合作戦本部長であるシトレ元帥と宇宙艦隊司令長官のロボス元帥にお聞きしたい!あなた方はこの作戦案で本当に帝国軍を撃退できると思っているのですか!」
「と言いますと?」
ロボス元帥がグレゴリーに問いかけた。
「総数2万隻の帝国軍に対し第2艦隊・第4艦隊・第6艦隊の3個艦隊からなる計4万隻を動員しアスターテ星域にて迎撃する。これは国防委員会の指令通りなので問題はないです。しかし!この三方から同速度で帝国軍艦隊に迫り、防御戦を選択し密集隊形をとるであろう帝国軍を厳重な包囲下においてその交戦能力を削り取り、かつてのダゴン星域会戦の再現を目指すとありますが、こんなお粗末な作戦が本当に通用すると思っているのかと聞いているのです!」
グレゴリーの追及の声にシトレとロボスが沈黙していると別の席から声を上げた人物がいた。
「ほう!お粗末な作戦とは随分な言いがかりですな!いったいどこがお粗末なのか是非とも小官にご教授願いたい!」
「君は確か・・・アンドリュー・フォーク准将だったね。今私はシトレ元帥とロボス元帥に聞いているのだが。」
「本作戦案を作成したのは小官です。国防委員殿の疑問に最も適切な回答が出来ると思い発言をいたしました。」
「なるほど、ならば聞こうか准将。この作戦を本当に実行する場合、味方との連携が重要になるという事は分かっていると思うが、敵が同盟軍を攪乱させるためにジャミング工作を実施した場合、どのように対策が行われるかが書かれていない。これはどういうことなのだ?」
「これは不思議なことを言われますな!同盟軍の通信技術が帝国軍のジャミング如きに劣るわけがないのです!」
周りはざわついた。
「・・・質問を変えよう。次に帝国軍が防御戦を選択肢し密集陣形を取るであろうとあるが、いったい何を根拠に帝国軍はその戦術を取るであろうと考えたのか?また、帝国軍がこちらの思惑に乗らず想定外の行動をとって場合の対応はどうするのか?」
「文民である国防委員殿には想像つかないでしょうが、地の利と数の利はこちらにあります。帝国軍もそれを悟るでしょう。軍事的常識を考えるならば防御戦か撤退のどちらかになりますが、奴らも軍人である以上、撤退はあり得ません。ならばとれる方法はただ一つ!防御戦を選択し密集隊形以外ありえないのです!」
周りは更にざわついた。
「いったい何時の時代の話をしているんだ?経過したと思ってるんだ?回廊出入口の星域など帝国軍も把握しているに決まっている。」
「そもそもイゼルローン要塞が帝国に存在している時点で回廊出入口の地の利なんてあってないようなものだ。」
周りがフォークの説明でざわついてる中、グレゴリーが口を開いた。
「最後の質問だ・・・准将は本当にこの作戦案で帝国軍を撃退できると考えているのか?」
「無論です!これはダゴン星域会戦の再現であり、必ずや同盟軍に勝利をもたらしてくれるでしょう!」
フォークがそう断言するとグレゴリーは溜息をついた。
「もういいよお前・・・帰れ。」
「は?」
「聞こえなかったか?帰れと言っているんだ。君の戯言には聞き飽きた。」
「っ!?しょっ・・・小官を侮辱なさるのですか!?」
「侮辱?むしろこんな作戦案を平気で出せる君の方が国防委員会、いや同盟軍を侮辱していると思うがね。いいか、同盟軍と帝国軍は貴様の玩具じゃない!何もかもが思い通りに事が運んでいくなら同盟はこんな屈強に陥っていない!軍事の素人である私ですらダメ出しできる作戦で帝国軍が撃退できるわけないだろう!そんなことも理解できないのか!」
グレゴリーがそう怒鳴りつけるとフォークはプルプルと震えだし倒れた。
「おっ・・・おい!?直ぐに医務室に運ぶんだ!」
フォークは職員達によって運び出され医務室へ連れていかれた。
騒ぎが落ち着き、中断されていた会議が再開されるとグレゴリーはシトレとロボスに噛みついた。
「シトレ元帥、ロボス元帥もう一度お聞きします。あなた方は本当にこの作戦案を了承されていたのですか?」
シトレとロボスは沈黙したまま答えようとしなかった。
するといままで沈黙を貫いていたトリューニヒトが、
「まあまあグレゴリー君、彼らも不本意だったんだ。ここからは私から説明しようじゃないか。」
と落ち着いた口調で宥めた。
「兄貴・・・いや委員長。それはいったいどういう事で?」
グレゴリーが催促するとトリューニヒトは今回の顛末を語り始めた。
後書き
連続で投稿します
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