奴隷は嫌だ
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第三章
「すぐにぶたれるしな」
「あれは痛いぞ」
「絶対に痛いぞ」
「それこそ骨まで達するぞ」
「しかも飯もな」
食べるものもというのだ。
「やっぱり粗末だしな」
「金で好きなもの食えないからな」
「色々制約受けるな」
「辛いぜ、それは」
「奴隷だけは困るな」
「ああ、じゃあもうな」
「選択は一つしかないな」
「そうだよな」
「それじゃあな」
「返事するか」
ギンガーザも他の者達もだった、それぞれ話して。
そのうえで船長に顔を戻して言った。
「法学者とかいう人連れて来てくれ」
「改宗するからな」
「俺達もムスリムになる」
「そうなっていいか」
「アッラーは来る者を拒まれない」
船長はギンガーザ達ににんまりと笑って答えた。
「そしてムスリムならな」
「奴隷にもならないか」
「絶対に」
「今言った通りにか」
「そうだ、そのことは約束する」
こう言ってだ、そしてだった。
ギンガーザ達は皆法学者に会って彼の言うままの改宗の理由を述べた。すると実に簡単に改宗出来た。すると。
善人改宗が終わった直後にだ、船長は彼等にこう言った。
「いいか、これでな」
「これで?」
「これでって何だ?」
「お前等は奴隷にならずに済んだ」
こう言うのだった。
「よかったな」
「いや、あんた奴隷にするつもりだったんだろ」
「俺達を売り飛ばしてな」
「それでそう言うか?」
「急にいい人になるか?」
「おいおい、俺は確かにあんた達を奴隷に売り飛ばすつもりだったぜ」
船長もこのことは否定しなかった。
「実際な」
「ほら見ろ、そうじゃないか」
「実際にそうするつもりだっただろ」
「俺達が改宗しないとな」
「そうだっただろ」
「そうだったけれどな」
それでもとだ、船長はギンガーザ達にさらに言った。
「それはムスリムじゃなかったらだ」
「あくまでそうなんだな」
「ムスリムだったら奴隷じゃないか」
「そうだっていうんだな」
「そうさ、それに金儲けはまだ出来る」
今もというのだ。
「お前等これからどうして暮らすんだ」
「奴隷にならずに済んでか」
「イスラムに改宗して」
「それでか」
「これからか」
「そうだ、金も家も何もないな」
このことを言うのだった。
「お前等な」
「それはあんたに捕まったからな」
「服以外全部あんたに取られてな」
「確かに奴隷にならずに済んだけれどな」
「文無し宿無しだぜ」
「何もないぜ」
「幸いお前等は船乗りだ」
船長はこのことも指摘した。
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