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異能バトルは日常系のなかで 真伝《the origin》

作者:獣の爪牙
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第一部
第二章 明かされる真実
  2-5




一さん達の異能所持、精霊の存在、そして異能バトルの真実。

そんな衝撃の事実が明かされてから一夜経った。
これだけの事件があっても世界はいつもと変わらず流れ続ける。

「寿来、いつまで寝てんだ遅刻すんぞ!……ってあれ」

眠れなかったわけじゃないが今日は早くに目が覚めた。

「もう起きてるよ、行ってきます」
いつもより余裕を持って学校に向かう。
「……あいつ最近起きるの早くね?」

これからどうすべきか。
頭の中ではそれのことばかり考えていた。

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そして放課後。
通常なら文芸部はその日は休みのはずがおれが部室に入った時にはもう全員揃っていた。
会釈はし合う、がやはりいつもの様な活気はない。
みんなの顔を見るとあまり顔色が優れなかった。
「……昨日の今日だけど、みんなは眠れた?」
「あんましかな。あれだけのことがあったしね」
「眠れなくはないですが、快眠とは言えませんね」
「私は、ぜんぜん寝れなかったよ……」
「千冬も。昨日は新しいまくらが合わなくて……」
「そうだよなぁ」

みんなもおれと同じで眠りが浅かったらしい。特に鳩子は目に隈ができていた。
千冬ちゃんだけちょっと違う気がするが誰もツッコむ気にはなれなかった。

「これからどうする?」
それはみんなが悩んでいることだったが明確な答えを返せる者はこの場にいなかった。
解決策のない問題に無言になるなか、不意に口から本音がこぼれた。

「……ちょっと関係無いけど、実はおれ、異能バトルに憧れてた」
なにを言い出すのかと、目線が集まるもおれは止めなかった。
「異能に目覚めてから最近まで、いつか敵が現れて学校を襲う。それをおれが異能で防いでクラスを救う。そんなことを妄想してた」
しらーっとした目線は今なお続く。
それでも止めない。
「余裕を持って敵を圧倒しておしゃれな決めゼリフ決めてかっこつけようとか考えてた。けど、実際は真逆だ。痛いし苦しいし、決めゼリフどころかいつ死ぬか分からない恐怖で身が竦む。おれの憧れてたバトルはそういうもんだった」
言葉に込められた感情のせいか、みんなが聞くのに真剣になる。

「正直もう、あんな思いはこりごりだ。出来るなら二度と闘いたくない」

頼りにしていた男の闘いたくない宣言に女子陣は同情した。

でもと彼は言葉を続けた。

「みんなとの楽しい毎日を失うのはもっとやだ。おれにとって大事な日常を殺し合いなんかにくれてやるもんか」

四人は顔を見合わせた。

彼は続ける。

「みんなの異能は強い。そこら辺のやつなんて目じゃない。おれ達には絆がある。利害だけでチーム組んでるやつに負けるはずがない。いきなり人と殺しあえなんて言われても無理だし、しなくていい。だっておれたちの目的は守る事だ。だから……」

その続きを四人は待った。

「おれはみんなを守るために戦う!」

この場の女子全員が彼を見直した瞬間、
「と思うんだけどみんなはどう?」
と恥ずかしがるようにみんなの様子を伺った。

「……はぁー。せっかくいい所であんたは」
「じゅーくん……」
「アンドー、なぜ」
「一瞬でも見直した自分が浅はかでした」
女子は幻滅を隠さず安藤を責めた。

「そんな言われる所か⁉︎」
身に覚えのない罵詈雑言。

しかし灯代が
「でも、いいこと言うわね。日常を守るためか」

すると今度は鳩子が
「わたしもじゅーくんの意見に賛成。じゅーくんやみんなが傷付くのはいやだけど、今の生活を失うのはもっといや」
と自分の意思を言うと、みんながうんうんと同意を示した。

「それにいざ戦うってなった時安藤一人じゃ心許ないしね」
「おい! 灯代!」
「千冬も心配」
「ちょっと! おれは弱くないし! ちょっと異能が特殊で? まだ覚醒からそんな経ってないし? ……えーと」
と言い訳を探してる内にみんなが笑っているのが見えた。
いつものらしいやり取りを久々にした気がする。
笑い声が止むと自然とみんなが判断を求めて部長である彩弓さんに目を向けた。
それを受けて、こほんと咳払いをし
「確かに戦うことは怖いです。ですが私も安藤くん一人に任せるのは不安なので……」
ちょっと! とツッコむとクスクスと笑いが聞こえる。
「なので、みなさんで安藤くんを手伝ってあげましょうか」
すると口々に
「しょうがないなあ」
「じゅーくんのお世話してあげよ〜」
「よろこべ。アンドー」
と好きなことを言い始める。

おれは、みんなして全く、と笑いを噛み締めながら
「行こうか、この戦争を終わらせに」
「「「「……」」」」


なっちまったもんはどうしようもねえし逃げ道も無いけど、おれたちには強い異能と絆がある。
このバトルを終わらせおれ達の日常を取り戻すために戦う。
襲撃に遭って以降初めて心から前を向けた気がした。








 
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