蒼と紅の雷霆
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蒼紅:第二十二話 襲来
前書き
ストライクソウの詠唱を少し変えています。
今作ではアキュラはアシモフと対峙していないので
アキュラの拠点でもある研究施設にてヴァイスティーガーの調整をしていたアキュラに、突如現れたロボットにアキュラの病弱の妹であるミチルが誘拐されてしまうと言う報せを聞いたアキュラは飛び出そうとするが、メイドのノワに制止され、情報が来るまで歯痒い思いをしながら待機していた。
『アキュラ様、発信機からミチル様を連れ去った賊…その帰還場所が判明しました。皇神の大型自律飛空艇・飛天…その中に、ミチル様は居る模様です』
「また皇神の屑共か…奴ら、ミチルを攫ってどうするつもりだ?行くぞ、ロロっ!」
『冷静に。短気は損気だよ?アキュラ君。勿論、僕だってムカっ腹立ってるけどね!』
ノワの通信を聞いたアキュラが装備を携え、ロロと呼ばれた球体型のロボットを伴って施設を飛び出す。
これはアキュラによって開発された戦闘補助ポッドであり、独自の技術による超AIとヴァイスティーガーにも搭載した半永久機関・ABドライブによる高出力を持ち合わせたアキュラの戦闘を補助する存在である。
そして妹のミチルとノワとの長年の対人経験蓄積によって何処か人間らしささえ感じさせるほどに成長した信頼するパートナーである。
そしてビル街に到着し、ダッシュを駆使して突き進む。
「悪賊共が…!」
妹を拐った賊に怒りを露にしながらアキュラは妹は必ず救い出すことを誓いながらブロックを足場にして上空に浮かぶ飛天を見上げる。
突如暴走を始め、ミチルがいるらしい皇神の大型自律飛空艇・飛天。
「ミチルはあの中だな…ノワ、飛天に取りつくためにはどうすればいい?」
『そのままビルの上を渡っていきましょう。今そちらにルートデータを転送します』
そしてアキュラはルートデータが転送されたことを確認する。
「…受信完了。行動再開だ」
先に進もうとした瞬間、飛天から大型のメカが落下してきた。
「何だ?このメカニクス…皇神の物ではない?チッ…一体何が起こっている?」
皇神が関わっているかもしれない事態であるというのに皇神の物ではないメカが出てきたことにアキュラは舌打ちしながら銃を向ける。
この銃はかつてソウに破壊されたボーダーのパーツを組み込み、状況に応じて種々の弾丸を使い分けるスタイルを取っていたボーダーとは異なって、汎用性を重視しているため以前エクスギアで扱っていたEXウェポンのアロガントファングのオリジナルであるイオタの第七波動・残光を解析した高威力のフォトンレーザーを放つフォトンカートリッジ装填型のブラスターに改良されている。
レーザーを連射してロボットを破壊し、背部・両足のスラスターによる空中でのダッシュ…ブリッツダッシュを駆使して銃で浮遊ロボットを殴り付ける。
ブリッツダッシュもボーダーⅡのフォトンレーザー同様に残光の解析によって得られた機能である。
銃身下部に搭載されているマーキングユニットを押し当てるか、銃で敵を殴りつけることで対象へ攻撃を誘導させるコードを植え付けて誘導レーザーを連射することが出来るのだ。
ボーダーⅡとブリッツダッシュ同様、イオタの残光の解析によって得られた機能のホバリングを駆使して空中での誘導レーザーを連射して破壊し、次のロボットにもブリッツダッシュで突撃して誘導レーザーを当てていく。
ブリッツダッシュは壁や天井、障害物を利用することで縦横無尽に飛び回ることが可能だ。
これはソウが壁や障害物を利用し、マッハダッシュで高速で上昇、下降するところから着想を得ている。
ブリッツダッシュとホバリング、これらによってGVは当然として直線的な機動に限れば紅き雷霆の能力者であるソウのマッハダッシュにも匹敵する機動力を会得した。
『アキュラ君!こっちはバッチリ温まってるよ。そろそろ僕の出番じゃないかな?』
ABドライブが充分温まったことでロロも万全の状態となり、アキュラに話しかけてくる。
「フン、いいだろう。ロロ!汎用戦闘シフトっ!!モード“P-ビット”!!」
『了解!バトルポッド・RoRo(ロロ)展開!』
ロロが飛び出し、アキュラの戦闘補助を行える状態となり、複数のビット制御も担当する。
『よーし、やっと出番だ!おっとそうだ、アキュラ君。ブリッツの残量には気をつけてるかい?ブリッツダッシュやカゲロウを使うと消費されるブリッツ…地上にいれば自動で回復するけど、リロードすることで即回復出来るぜ?リロードは空中でも出来て地上への攻撃にも使えるけど、凄い勢いで着地しちゃうから足元には注意することだね』
「…要らん忠告だ」
このヴァイスティーガーとボーダーⅡの設計から製作は誰がやったのかを忘れてはいないだろうか?
エクスギアで培ったEXウェポンの蒼き雷霆を疑似再現したスパークステラーで破壊しながら進むと、皇神の能力者らしき人物がいた。
「おや?これはこれは…まさか生きていたとはね…」
変身現象を起こしている能力者は意外そうな物を見るような表情でアキュラを見つめていた。
「その姿…皇神の能力者か。答えろ、ミチルを攫ったのは貴様達か?」
「答えはYES。そして久しぶりだね少年?」
「俺に能力者の知り合いはいない… 大人しくミチルを返せ。そうすれば、比較的安らかに神の御許へと送ってやろう」
「ふむ、そう言えば彼との愛の逃避行の時は性別を超越していたからこの姿は初めてだったね…ならば見せよう。我が愛をっ!!」
鏡が現れ、反転するとアキュラからすれば見覚えのある姿となる。
「私の愛は変幻自在。性(ジェンダー)の壁をも乗り越えて全てを包み込む…究極の愛・体現者なのっ!!」
「パンテーラ?貴様はかつて、俺が倒したはずだ」
「君が倒したのは、我が愛の断片…ちっぽけな鏡の欠片に過ぎないの…これがあなたが武器で申し訳程度に再現した疑似第七波動とは違う…オリジナルの“夢幻鏡”の力の一端!!我が愛の第七波動っ!!儚き夢は見られたかしら、少年?」
パンテーラが不敵な笑みを浮かべながらアキュラに説明する。
「下らん、貴様が鏡だというのなら…この俺が、全てを摧破(さいは)し、骨身ごと砕くまでだ」
「まあ、怖い…愛憎(あいにく)、今より私はあまねく世界に我が愛を広めねばならないの。それに飛天にはソウがいるもの…私が永遠に語り愛たいのは君ではなく…彼…」
「何?ソウだと?奴も飛天にいると言うのか?」
この世で最も憎い第七波動能力者の名前が出たことにアキュラは過剰に反応する。
「YES、弟のGV…ガンヴォルトも一緒よ。電子の謡精を助けるために飛天に乗り込んでいるわ…もし、ソウに復讐するつもりなら…止めておくことね?あなたではソウには勝てない…アメノウキハシで力の差を思い知らされたはずだけど?短い命を更に縮めるのは愚か者のすることよ」
不敵な、相手を小馬鹿にしたような態度を消して鋭い表情でアキュラに忠告する。
それを聞いたアキュラは憤慨する。
「…俺はもうあの時の俺じゃない!!今の俺なら奴にも勝てる!!」
ブリッツダッシュでパンテーラに銃で殴りかかるが、パンテーラの体が砕け…いや、鏡が砕けた。
そしてアキュラの背後に鏡が出現し、そこから尻尾の鋭利な先端を喉元の押し当てる。
「っ!?」
「これで1回死んだわね?少年?」
「……どうだろうな」
「あら?」
尾の先端がアキュラの首を切り落とそうと動いたが、先端が素通りする。
「なるほど…カゲロウを再現したのね…」
そして発射されたレーザーを鏡によって繋げた別の場所に移動することでかわす。
「カゲロウ…雷撃の能力因子を回収出来そうな場所は…アメノサカホコね…アシモフかソウの血液をいつの間に回収したのかしら?」
「アシモフだと?」
「その態度からするとアシモフが蒼き雷霆の能力者であることを知らないようね少年…と言うことはそのカゲロウの能力はソウの血液から得られた物ね…前の戦いの時といい、片付いた頃に現れて能力因子を持ち去っていく…まるで死体を漁るハイエナだわ」
「黙れ化け物!!」
スパークステラーでパンテーラを狙うが、パンテーラはそれを悉くかわしていく。
「私が化け物ならあなたは獣(けだもの)よ。無能力者を憎む私が言えたことではないけど、相手が能力者であるだけで相手の善悪に構わず力を振りかざすあなたは正に理性のない獣…私はそろそろソウに愛(あい)たいの。さようなら少年」
「逃がすか!!舞い踊るのは我が所従!討滅せしは異類異形!因果断ち切る無尽の絶爪!!ストライクソウ!!!」
展開したビットが“爪”の字を描くような斬撃の嵐。
エネルギーを供給され、活性化したそれらはロロによって統制され、エネルギーを纏ったビットによって瞬く間に敵を斬り裂くSPスキル。
「愛(あ)デュー♪」
鏡による移動でビットの斬擊を回避、そして自身の目的地に移動する。
「くそっ!!」
『あの人…変態さんかと思ったら結構シリアスな人だったね…と言うより急ごうアキュラ君!!結構時間食っちゃったよ!!』
「…ああ」
苛立ちながらもアキュラはダッシュとブリッツダッシュを駆使して遅れた分を取り戻そうとする。
貯水槽付近のバリアを展開するロボットを発見する。
「(ダッシュの加速を利用すれば奴の防御の隙間を縫ってロックオン出来る…)」
『行けー!!ぶつかれー!!アキュラ君!!』
「言い方は気に食わないが、言っていることは正しいな…」
『その気に食わない物言いするAI。プログラムしたのは、君自身だけどね…あ、あそこの敵はブリッツダッシュならロックオンしやすそうだよ!!』
パンテーラにはソウには勝てないと言われたが、紅き雷霆の完全制御こそは出来ずに蒼き雷霆の力で妥協したものの、高速戦闘を得意とするソウとの戦闘を意識したヴァイスティーガーと、父の形見であるボーダーのパーツを使って製作したボーダーⅡの連携ならソウにも勝てると言う自負がアキュラにはあった。
実際にソウのマッハダッシュに匹敵する速度と飛距離を持ち、更に発動に僅かな溜めが必要なマッハダッシュとは違い、ブリッツダッシュは溜めもなく縦横無尽に飛べる利点がある。
勿論ソウには雷撃鱗のホバリングによる一定時間の滞空移動とマッハダッシュを合わせて使えたりするので総合的な機動力は互角だろう。
そして進んでいると、GVとソウが発見した飛行兵器がアキュラの真上を通過していった。
「あれは…皇神の無人戦闘機・フェイザント?完成にはまだ程遠いと聞いていたが…」
『ええ、あれはエンジンの問題が未解決で、とても飛行出来る代物ではないはず…』
完成には程遠いはずのフェイザントが飛行していることにアキュラ達は疑問を抱くが、フェイザントが此方にミサイルによる攻撃を仕掛けてきた。
しかしビットがアキュラを守るように動き出し、バリアを展開して攻撃を防いだが、攻撃によって建物内部に落ちてしまうものの、ホバリングで落下速度を緩やかにしながら着地する。
『ご無事ですか?アキュラ様』
「無傷だ。“フラッシュフィールド”、あの悪魔由来の力だけあって中々の使い勝手だな」
雷撃鱗を再現したフラッシュフィールドはウェポンエネルギーがMAX時のみだが、ビットによるバリアを展開して実体弾を防ぐことが出来る。
『とはいえ、本当にあのフェイザントが起動したとあらば…未知の相手です。しばらくはその建物を盾にして進むのがよろしいかと』
「ああ、そうさせてもらう」
先に進むとロロがアドバイスをしてくる。
『そうそう、狭い場所で斜めのブリッツダッシュを使えば天井や壁、床を使ったバウンド移動で進むことが出来るよ。勿論ダッシュや普通のブリッツダッシュ、キッククライミングの方が速いこともあるからそこはアキュラ君の判断に任せるよ』
とにかく今回はブリッツダッシュでのバウンド移動が速いために早速使っていく。
そして登り切ると、フェイザントが此方にガトリングによる射撃攻撃を仕掛けてきた。
『ガトリング(あれ)はフラッシュフィールドでも防げないよ!』
「(転機はいずれ来る…今は先に進む…ブリッツダッシュを使えば一気に奥まで行けるはずだ)」
早速ブリッツダッシュを連続で使うと、エレベーターのある場所の近くまで行く。
ブリッツを使い切った後はダッシュで到達するが、フェイザントの攻撃でエレベーターに電力が来ておらず、リロード直後に再びブリッツダッシュのバウンド移動を駆使して登る。
『アキュラ様、その先の窓から外に出られそうです』
「よし、脱出する」
あのフェイザントの火力を考えると建物を盾にするにも限界があるのでブリッツダッシュで窓を突き破って脱出する。
次の瞬間、ミサイルがアキュラに降り注ぐものの、フラッシュフィールドで防ぐ。
「無駄だ、フラッシュフィールドがある限り俺に攻撃は届かん」
途中で拡張メモリを回収すると、フラッシュフィールドで攻撃を無力化して突き進む。
『でもスパークステラーとかのサブウェポンを使っちゃうと…ウェポンエネルギーが減って、バリアも張れなくなっちゃうんだから、気をつけてよ?』
因みに紅き雷霆ではなく出力を低下させて蒼き雷霆を採用した理由の1つに紅き雷霆のスパークステラーは威力は絶大だが、ウェポンエネルギーを1回で殆ど使い切ってしまう欠点があるからである。
そして奥に進むと、フェイザントが待ち構えていた。
「良いだろう。ここで決着をつける」
『フェイザント…開発当初のデータが正しければ、下半身に強力な武器を搭載していると聞いています。安全を考えるならば、先に下半身を狙うと良いでしょう』
『逆に、速攻撃破したいなら上半身(ボディ)を狙うべきだね。』
「急拵えのガラクタで、俺を遮ることは出来ん…その驕り…俺が討滅する!」
ブリッツダッシュを駆使してフェイザントの上半身と下半身に一定のダメージを与えて再びSPスキル発動の詠唱をする。
「舞い踊るのは我が所従!討滅せしは異類異形!因果断ち切る無尽の絶爪!!天魔覆滅!ストライクソウ!!!」
エネルギーを纏ったビットによる斬擊によってフェイザントの上半身と下半身を同時に破壊する。
「討滅完了。つまらん玩具だ」
『これは…?アキュラ様、大変です。飛天が落下を始めています。このまま落下した場合、超高層ビルに衝突。中にいるミチル様も…』
「何だと…?」
フェイザントを破壊しても飛天の落下と言う問題が発生し、アキュラは妹のミチルがいる飛天を見上げるのであった。
後書き
紅き雷霆スパークステラーはプリズムブレイクとかより燃費悪いです…もし、アクセルヴォルトを疑似再現するなら全身サイボーグにする必要があります。
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