戦国異伝供書
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第五十六話 高僧の言葉その十一
「酒もです」
「つまりどちらもか」
「好きでありまして」
それでというのだ。
「これはそれがしもですが」
「酒も飲んでじゃな」
「楽しんでおりまする」
日々そうしているというのだ。
「ですからあの者達もです」
「喜んでくれるか」
「お館様の今のお言葉に」
「ではな」
「十人共ですな」
「呼ぶのじゃ」
あらためて言った。
「わかったな」
「それでは」
こうしてだった、晴信は信繁と共に飲む場に幸村だけでなく十勇士達も呼んだ。そうして彼等にそれぞれ好きなだけ飲む様に言うと。
十人共よく飲んだ、無論幸村もだ。特に幸村が言う通り清海と伊佐はよく飲み晴信もこんなことを言った。
「源次郎の言う通りじゃな」
「我等の飲みっぷりはですな」
「中々と言われるのですか」
「中々どころではない」
晴信は笑ってこう二人に返した。
「底なしではないか」
「いや、我等はこの身体なので」
「飲むとです」
二人は兄弟で晴信に答えた。
「水もそうですが」
「これだけ飲まずにいられませぬ」
「樽一つは開けられます」
「一回飲む時に」
「それは凄いのう」
「拙者も負けておりませぬぞ」
猿飛も笑って晴信に言ってきた。
「飲むとなればです」
「二人に負けぬか」
「祖父様に随分と仕込まれました」
「忍術のこと以外にか」
「はい、伊予で生まれてから国を出るまで」
まさにそれまでというのだ。
「祖父様には忍術を仕込まれ」
「酒もか」
「この通りでありまする」
「確かそなたの祖父殿は」
晴信は猿飛の話を聞いて彼にこう述べた。
「猿飛大助殿といったのう」
「左様です、代々伊予で忍の者を務め」
「今は隠居してじゃな」
「山奥で静かに暮らしておりますが」
「隠居した時にお主をか」
「親父殿とお袋殿から譲り受け」
即ち自分の子からというのだ。
「天下一の忍にしてやろうと言われ」
「そうしてお主を育ててか」
「はい」
そしてというのだ。
「そうして下さいました」
「そうであったか」
「残念ながら隠居して」
「誰にも仕えるつもりはないか」
「左様です」
「そうか、しかしお主がおる」
このことについてだ、晴信はよしとした。
「そして他の者達もな」
「我等全員がですか」
「そうじゃ」
晴信は今度は幸村に笑って答えた。
「十一人おるからのう」
「よいとですな」
「心から思っておる、だからこれからもな」
「我等にですか」
「働いてもらう、わしは二十四将と呼ばれる者達がおり」
武田の優れた家臣達のことだ、今晴信と共にいる信繁もそのうちの一人として数えられている。二十四将の中でも晴信を支える筆頭の様に言われている。
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