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ある晴れた日に

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97部分:小さな橋の上でその十三


小さな橋の上でその十三

「とにかくだよ。渡れよ」
「わかったわよ。それじゃあ」
「先に行くわね」
「ああ。早く行け」
 こう言って今度は二人を渡らせた。二人も何なく橋を渡る。やはりそれなりの運動神経がありアスレチック用の橋も問題なく渡り終えた。
 そして次は。未晴だった。
「じゃあ次は私ね」
「あっ、ちょっと待てよ」
 だがここで正道は渡ろうとする未晴を呼び止めるのだった。
「そのまま行ったらよくないな」
「よくないって?」
「荷物。貸せよ」 
 こう未晴に言うのである。
「荷物。持ってやるよ」
「荷物?」
「そうだよ。ほら、そのリュック」
 具体的には彼女が今背負っているリュックサックだった。それを指差して言ったのだ。
「貸せよ。重いだろ」
「別に。それは」
「だからよ。危ないだろ」
 断ろうとする未晴に言葉を返した。
「重いもの背負ってそんな橋渡ったらな」
「橋を・・・・・・」
「そうだよ。だからな」
 言われて端を見た彼女にまた言う。
「貸せよ。落ちたら危ないしな」
「持ってくれるの」
「そうだよ」
 このことをまた未晴に告げた。
「駄目か?」
「それじゃあ」
 少し考えたがそれでもここは彼の行為を受けることにしたのだった。それは彼の気遣いがわかったからだ。だから断らなかったのだ。
「御願い」
「ああ、じゃあほら」
 正道は自分の左手を差し出してきた。
「渡せよ」
「うん」
 背中からリュックを取ってそれを正道に差し出す。こうして正道が未晴の荷物を持った。未晴は軽いままで橋を渡ることができたのだった。
 そして最後に正道が橋を渡り終えると。まず明日夢と奈々瀬がその彼に対して声をかけてきた。
「どういう風の吹き回しなの?」
「気紛れってやつ?」
「何がだよ」
 その二人に対して言う。
「何かおかしいか?」
「おかしいも何も」
「今日の音橋」
 正道を見ながらその口元に微かな綻びを見せての言葉だった。
「随分と未晴に優しいじゃない」
「そうよね。どうしたのよ」
「そうか?」
 しかし当の正道はこのことをあまり実感してはいないようである。その証拠に今かえした言葉は要領を得ないぼんやりとしたものだった。
「俺は別に」
「そうじゃないっていうのね」
「ああ、俺は変わってないぜ」
 こう言うのである。
「別にな。誰でもな」
「けれど私達にはねえ」
「そうよねえ」
 明日夢と奈々瀬はお互い顔を見合わせてまた言う。見れば髪型がどちらも同じ短いものである為に外見も結構似ているように見える。ただし奈々瀬の方が背は高いが。
「全然そんなことないし」
「っていうかさっき随分言ってくれたじゃない」
「御前等はそれでいいんだよ」
 正道はその二人に対して悪びれずに返した。
「それでな」
「どういうことよ、それって」
「だからよ。体力も運動神経もあるだろ?」
 明日夢に顔を向けての言葉だった。
「ちゃんと。だからな」
「リュック持つなんて考えなかったの」
「発想すらなかったな」
 こうまで言う。
「全くな」
「それで未晴は」
「持ったの」
「竹林は御前等と違うだろ?」
 このことをあえて強調してきた。
「全然な。無理はさせられないんだよ」
「何か私達サイボーグみたいに扱われてるけれど」
「どうなのよ、それって」
「そんなに嫌だったらもう少し大人しくなればいいだろうがよ」
 正道の今の言葉は少し逆キレめいたものになっていた。しかしそれでも言うのだった。
 
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