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ある晴れた日に

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87部分:小さな橋の上でその三


小さな橋の上でその三

「味でお米がわかるなんて」
「ちょっとしたコツさ」
 こう答える佐々だった。
「米の味を確かめるのにもな。コツがあるんだよ」
「コツ!?」
「飯屋だろ?俺の家」
「うん」
 もうこれは誰も知っていることなのであえてここで言っても何にもなりはしない。
「だからな。昔から親父とかお袋に教えられてな」
「わかるようになったんだ」
「そういうことさ。コシヒカリは香りも独特なんだよ」
 香りにまで言及してきた。
「その米にはその米の香りがあってな」
「成程」
「わかるようになれば違うんだよ」
「味もわかるようになるってことだね」
「そういうことさ。卵もいいしな」
 彼は目玉焼きを食べていた。カリカリに焼かれておりそこにベーコンもある。見ればベーコンもまたカリカリに焼かれ黒い焦げ目が見える。
「卵もな」
「ここって食べ物いいんだ」
「選んでいる人がセンスいいんだろ」
 佐々はこう予測してみせた。
「素材をな」
「選んでいる人がそういうのわかる人ってことだね」
「そういうことだよな。うちの学校だってな」
 話は彼等が通っている学校に関するものにもなる。
「食堂の素材はいいぜ」
「味付けは?」
「そっちもいいな」
 自分の学校の料理も褒める。
「いい腕してるよ」
「そうか」
「ああ。やっぱり飯が美味くないとな」
 そしてこうも言うのである。
「どうしようもないからな」
「まあそれはな」
「飯って大事だしな」
 皆これには賛成して頷くのだった。
「今だってな。楽しくやってるしな」
「そうそう」
「それでだよ」
 ここで正道が言った。彼は納豆とめざしだ。
「あの二人だけれどよ」
「あの二人?」
「そうだよ、あの二人」
 ここで話が戻ってきていた。
「あの連中な。どうする?」
「ああ、高山と柳本な」
「そういやまだやってるな」
 皆二人に目を戻せばその通りだった。相変わらず言い争っている。そのテーマもまた変わってはいない。本当に相変わらずであった。
「どうしたものかね」
「全くな」
「じゃがいもはね。壊血病にもいいしね」
「薩摩芋は栄養の塊よ」
 平行線そのものの話が続いていた。
「ドイツを救ったのはじゃがいもなんだから」
「薩摩芋でどれだけの人が助かったか」
「何であんなに芋にこだわるんだよ」
「しかも二人共な」
 皆二人の話を聞いてこう言わざるを得なかった。
「もう何が何だか」
「理解不能なんだけれど」
「茜は北海道に親戚がいたわよね」
 ところがここで未晴が皆に尋ねてきた。
「確か」
「ええ、そうよ」
 恵美がその質問に答える。
「北海道にね。それに日本ハムファンだし」
「だからよ。それだからね」
「ああ、北海道っていったらな」
「じゃがいもだからな」
 皆これでどうして茜がじゃがいもにこだわるかわかった。そこにあったのはただ味がいいとか栄養があるとかだけではなかったのである。
「だからか。あいつ」
「じゃがいもにこだわるのかよ」
「成程な」
 わかってしまえばどうということはない話であった。
「それでね。咲はね」
「親父さんが熊本出身だったよな」
 正道が未晴に対して述べた。
「確か。そうだったよな」
「お母さんは鹿児島でね」
「鹿児島か」
「ああ、そうか」
 ここでまた一つ答えが出された。
 
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