蒼と紅の雷霆
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蒼紅:第十話 深淵
前書き
無印の初見殺しステージ
オリ主はフェザーの環境のおかげで、無能力者への嫌悪感は完全に拭いきれてはいないものの、余程の相手でない限りはきちんと礼はします。
本気で潰すとなるとアキュラクラスになるだろうなぁ
あの日から数日後、ソウはテーラと話していた。
「おい、テーラ…お前は欲しい物とかはないのか?この隠れ家のことやシアンのことを任せているからな……」
自分とGVがミッションで不在の時はテーラに隠れ家とシアンのことを任せっぱなしなので、プレゼントを贈ろうとしたのだが、この手のことはさっぱりなのでテーラに聞いてみたのだ。
「欲しい物…ですか…?そう…ですね…(今、私が欲しい物…と言えば…)」
欲しい物は目の前にいるのだが。
「おい、何故俺を凝視している?まさか俺が欲しいと言うんじゃないだろうな?」
「ふふふ、そうですと言ったらどうします?」
「人をからかうな」
顰め面をするソウだが、テーラは真面目な表情で見つめる。
「からかってなどいません…私は本気です…」
「テーラ…お前…」
こういう時、どう言えば良いのか分からない。
馴れ合いを好まず、最近まで女性に対して関心を持たなかった性格はこういうところで災いする。
『ソウ、GV。あなた達に…依頼…が…』
モニカが依頼を持ってきたが、見つめ合う2人を見て沈黙してしまう。
「ん?お前かシープス3」
「………(何てタイミングの悪い…)」
『その…ごめんなさい…ソウにテーラちゃん。お邪魔だったみたいで』
「邪魔?何のことだ?」
『き、気にしなくて良いのよ!?別にソウがこんな可愛い女の子といい雰囲気なのが羨ましくて私もあの人となんて欠片も思ってないわ!!』
疑問符を浮かべるソウ。
赤面しながら慌てるモニカだが、朴念仁なところがあるソウは理解出来ない。
「安心しろ、俺はお前のことは一切何も気にしていない。」
『それはそれで傷付くわね…』
「それより依頼があるんだろう?早く言え(テーラに渡す物は後で考えるとしよう)」
「…………」
冷たい目でモニカを見つめるテーラにばつが悪そうな表情をモニカは浮かべた。
『ほ、本当にごめんなさい。この埋め合わせは必ずするから』
「結構です。次からタイミングさえ考えてくれれば充分ですので」
『そ、そう…コホン…諜報班からの情報によると…皇神の第三海底基地に、多数の物資が搬入されているらしいの。搬入されている物資の内容や、その基地には潜水艦用のドックがあることから見て…どうも大型の武装潜水艦を建造しているのではないか、と言われているわ』
「言われているだと?はっきりしないな…」
『ええ、あくまで噂話でしかないから。あなた達に調査を依頼したいの』
「……少し待て…おい、テーラ…皇神のスパイをしていた時にそんな話はあったのか?」
「…いいえ、そんな話は一度もありませんでした。そんな規模の話ならもっと前に噂が流れていたはずです」
小声で会話をすると、モニカに向き直る。
「今回はGVは待機させる。そこには俺1人で行くとしよう…もしこの海底基地が罠ならGVには危険だからな」
蒼き雷霆にとって水…特に電解質を多く含んだ海水は天敵とも言える物だ。
しかし、蒼き雷霆より出力が高い自身の紅き雷霆なら、海水の中でも消耗は激しくなるものの、即オーバーヒートはしない。
『分かったわ、お願いねソウ。テーラちゃん、本当にごめんなさいね』
「…別に謝るようなことはしてはいないのに何故謝っているんだあいつは?」
「充分謝ることです」
可愛らしく膨れるテーラにソウは頭に手を優しく置くと、ミッションの準備を進めた。
そしてGVに隠れ家とシアン達のことを任せると、海底基地に潜入した。
「簡単に潜入出来たと言うことはやはり罠の可能性が高くなってきたかもしれんな…」
皇神第三海底基地…。
まだ皇神の次世代発電が実用化される以前…皇神が海底資源採掘のために建造したのがこの基地だ。
だが、この海底基地の完成目前に皇神の次世代発電が実用化…現在は多目的実験施設として再利用されている…というのがこの基地の表向きの“設定(プロフィール)”だった。
「そう言えば、シープス3…テーラくらいの女と言うのは何を渡せば喜ぶんだ?」
『へ!?』
マッハダッシュとダッシュを駆使し、高速で移動しながら敵を蹴散らして進むソウがモニカに尋ねる。
尋ねられたモニカは間の抜けた声を出す。
「何だその間の抜けた声は?」
『あ、あなた…本当にソウ?あの何時も無愛想なソウなの?』
「…とうとう頭が使い物にならなくなったのかシープス3」
『ああ、その言い方はやっぱりソウなのね……普段のあなたを知ってれば誰でも驚くわよ。』
「そうか?…まあ、そうだな…」
モニカの言葉に対して自分でも思い当たる節があったので、思わず同意した。
『と、とにかく…テーラちゃんにプレゼントを贈りたいのよね?』
「ああ、隠れ家のことやシアンのことも、色々と任せきりだからな。あいつに…礼がしたいんだ」
『(シアンちゃんやテーラちゃんとの生活のおかげかしら…フェザーにいた時より雰囲気がずっと柔らかくなっている気がするわね…悪魔とか狂犬とか言われていてもやっぱりソウは“お兄さん”なんだわ…年下の子に弱いのね)』
フェザーにいた時は常に神経を張り詰めていて、眉間に皺が寄っているのが常であったが、弟と年下の少女2人との生活は思わぬ効果を発揮しているようだ。
「おい?」
『ああ、ごめんなさい。そうね…アクセサリーとか色々あるけれど、重要なのはあなたがテーラちゃんのために考えて選ぶことだと思うわ。どんなに高価なプレゼントよりもあなたが悩んで決めてくれたプレゼントの方が良いと思うの。それで失敗したなら次の時にその経験を活かせるでしょう?』
「…確かにな…情報の提供に感謝する。この借りは後で返すぞ」
『あなたが私にお礼を言うなんて…』
「俺は無能力者にも借りがあれば最低限のことはする…それにしても内部は思っていたよりも警備が厚いな…(罠でもない可能性も浮上してきたな。まあ、それなら殲滅すれば済む話なんだが…)」
進んでいる途中で視界に浮いているマシンが入る。
「何だあのマシンは?」
『バリケードマシンね。あなたの雷撃でも破壊出来ないから回避して』
「こんなガラクタにいちいち付き合っていられるか」
マシンを回避して先に進むと、突如空間が捻じ曲がり、別の場所に放り出される。
「これは敵の第七波動か」
『何が起こったの…?』
「待っていたぞソウ!飛んで火に入る夏の虫!いや、“水に入る”か…?戦闘部隊、集中砲火だ!」
「黙れ」
即座にチャージショットで一網打尽にすると奥に進む。
「ば、馬鹿な…これだけの数を…」
「皇神の無能力者は特に愚かだな。相手との実力差を理解出来ないとは」
行き止まりに差し掛かると、再び空間が捻じ曲がって別の場所に。
「どうやら基地内の空間が捻じ曲がっているか…さしずめ“亜空孔(ワームホール)”の第七波動か…。今のように突然ワープさせられては、対処のしようがない…面倒な能力だ…」
舌打ちしそうになるが、先に進んで何度か亜空孔によって別の場所に移動させられるが、皇神兵程度ではソウは止められない。
「戦ってみて分かったが、ここの皇神兵は人数の割に質が他より悪いな…(罠の可能性も高まってきたな…さて、罠なのかそれとも真実なのか…)」
ゲートモノリスを発見し、先に進むと広い場所に出たが、周囲には何もない。
「何もないな…どうやらフェザーを誘き寄せる罠か…さて…次はどう来るのか…」
ソウが先に進むと、足元から大量の水が迫り、辺りに潮の匂いが立ち込める。
「海水か、GVを置いてきて正解だったな」
偽情報でソウとGVを誘き寄せ、基地諸共沈めるのが敵の作戦なのだろう。
ここは海底深くに建設された基地…一度海水に飲まれれば脱出は絶望的だ。
『そんな…!その基地には皇神の人間も大勢いるのよ?』
「だが、合理的でもある。数の割にここの兵士の質が微妙なのもこれで頷ける。戦闘で役に立たない兵士を切り捨てることがフェザーの主力である俺達の始末と同時に出来る。役に立たない兵士は管理は面倒で無駄飯食らいということなんだろう。」
溺れたくはないので、一気に駆け抜けるソウ。
マッハダッシュを駆使しているために凄まじい勢いで移動していくが、切り捨てられた皇神兵からの悲鳴が聞こえる。
「なっ…何だよこれ!聞いてないぞっ!?ええい、こうなりゃ死なば諸共だっ!!」
「邪魔だ!死ぬのなら貴様らだけで死ね!!」
チャージショットとチャージセイバー、ショット連射、雷撃刃を駆使して目の前の敵やシャッターを蹴散らしながら突き進む。
紅き雷霆は水中でもオーバーロードは起こさないが、EPエネルギーの消耗が激しくなるので急ぐに越したことはない。
「何をしている!排水急げっ!」
「しかし…メラク様からの指示にはそんなこと…」
「馬鹿か!?そのメラクに、我々は捨て駒にされたんだぞっ!」
「……くっ…排水開始します!」
「そうだ…それでいい…私はごめんだぞ…!テロリストと仲良く海の藻屑になるなんてな…!」
排水されたことにより、浸水が止まる。
因みに途中で宝石も発見し、回収していたりする。
「ん?浸水が止まった…どうやら皇神の連中が止めたようだな…」
『よかった…ソウ。あなたが無事で…』
「………(しかし、ここの司令官は何を考えている?俺達を仕留めたいにしては部下への指示が甘すぎる…)」
あのまま浸水されていれば自分は間違いなく溺れ死んでいた可能性が高い。
「(余程、自分の力に自信があるのか…それともただの馬鹿なのか…)」
セキュリティシステムのある部屋に入り、警報装置を破壊して部屋にいる皇神兵を仕留めると、ゲートモノリスを発見する。
『ゲートモノリスね…その先は海底トンネルに繋がっているわ!脱出出来るはずよ!』
ゲートモノリスをチャージセイバーで破壊して先に進み、海底トンネルに向かって降りるが、途中で亜空孔によって別の場所に移動させられる。
着地した場所にはソウと同い年くらいの少年がいた。
「何だ…来ちゃったの?溺れ死んでてくれれば楽だったのに…。ねえ、これってさ―…もしかしなくても、僕が戦わなきゃならない流れ?」
「貴様がここの司令官のメラクか?さっきの溺れ死んだ皇神兵から名前が出ていたが…まあ、そうだろう。死にたくないのなら俺と戦い、勝つしかない。俺は貴様をさっさと始末して報酬を得た後に店に寄って買うものを買って帰りたいんでな」
「うへえ…買い物の資金のために殺されるの嫌なんだけど…まあ、僕もさっさと君を倒して有給貰ってネトゲしたいから、サクっとやっちゃおうか 」
メラクが宝剣を取り出して変身現象を起こすと亜空孔から専用の腕の付いた椅子に座りながら面倒臭そうにソウを見下ろしていた。
「…随分と便利そうな椅子だな…そいつを奪って渡すのも良さそうだな」
「もしかしてプレゼント?これは僕専用だからあげられないんだよねぇ…そんじゃ、ま、やりますか。ユルユル~っとね?」
ソウとメラクの戦闘が始まる。
メラクの能力の亜空孔は攻撃能力は持たないが、椅子型の武装で攻撃力の無さを補っており、亜空孔によって何処から攻撃が飛んでくるのか分からないと言う厄介さがある。
「なるほど、戦闘向けではない能力も使い方次第か…やる気がなさそうな顔をしている癖にやるな」
「だって僕って天才だし、それにマジでやるのってダルくない?わざわざ自分で何かするとか、嫌いなんだよね」
亜空孔を複数展開して椅子の武装腕のミサイルを放ってきたので雷撃鱗で防ぐ。
「ならばさっさと帰って大人しく寝ているんだな」
反撃でショットを放つものの、メラクは亜空孔を使ってショットを別の場所に飛ばす。
「僕だってそうしたいよ。でも、働かないと食べられないんだよね…現実ってクソゲーは、今回の作戦もさー、君達兄弟を倒せば、弟のガンヴォルトは3年、兄の君は4年くらいは有給くれるって言われたから…わざわざ考えたんだよ…?…ネトゲの合間に適当に。しかも、今回の作戦、僕の第七波動まで使ったのに…馬鹿な部下のせいでぜーんぶパー!なーんで排水スイッチとか押しちゃうかなー。本当、困っちゃうよねー。これだから雑魚キャラは使い辛いんだよ…後でお仕置きするのも結構めんどいのにさー」
亜空孔から巨大化した武装腕によるパンチを放ってきた。
ソウは回避しきれずに何度かカゲロウを使わされる。
「いきなり何の指示もなしに浸水されればそうなるだろう。貴様は何故奴らに水中用の装備を与えなかったんだ?まあ、司令官の貴様が雑魚キャラと言うくらいだから大体の予想はつくがな」
「君の予想通りだよ。あいつら皇神の中でも低レベルな奴らなんだよ、そんな奴らの為に装備を揃えるのとかめんどいし…お金の無駄遣いだよ。」
「役立たずには用はないと言うことか…迸れ、紅き雷霆よ…貴様の小細工を俺の紅き雷刃で叩き斬る!」
椅子での突撃攻撃をかわしてチャージセイバーを当てるとメラクが仰け反る。
「痛たたた…帰りたくなってきたよ…でもこのまま帰ったらお仕置きだろうし、めんどいけどこれ使おうかなー。やれやれ…森羅万象に穴穿つ…縦横無尽変幻自在…世界を貫く破滅の光柱…レイジーレーザー!消えなよ?」
亜空孔を使い、本体より発射する巨大なレーザーを次々と転移させながらソウを追い詰める。
「(このままでは直撃を受けるな…しかし、奴のいる位置ではチャージショットが当てられん…ギガヴォルトセイバーでも倒しきれるか分からん…仕方がない…あれを使うしかない…消耗が激しいからあまり使いたくはなかったが…)」
「君のSPスキルは直線的だからこうして離れてればかわせるから、さっさと喰らって死んでくれる?」
事前にソウのデータを見ていたのか、SPスキルを放たれても回避出来る距離を保っていた。
「残念だが、死ぬのは貴様だ…アクセルヴォルト」
ソウが雷撃鱗とは違う紅い雷撃の膜を全身に纏わせながら構えた瞬間、ソウがメラクの視界から消えた。
「え…?消え…」
次の瞬間、ソウはメラクの背後に現れ、メラクの体が細切れになっていた。
細切れにされたメラクの体の欠片は膨張・爆発すると残った宝剣に亀裂が入って、今までの能力者のように何処かへと転移された。
「ふう…まさかこのスキルを使わされるとはな…」
先程使用したスキルは消耗が激しい欠点がある。
おまけに10秒間しか使えないため、使うタイミングを考えなくてはならない。
しかし、消耗と使用時間のことを考えても強力なスキルなのは確かなのだが。
『お疲れ様、ソウ。報酬は用意しておくからプレゼント選び、頑張って』
「…了解だ」
海底トンネルを出た後に、フェザーからの報酬を受け取るとソウはどんなミッションよりも高難度なことに挑むことになる。
そしてプレゼントを吟味している時、この時のソウはテーラに対しての礼の品を探すのに夢中で物陰から見つめる影に気付かなかった。
「おお…マジでソウがプレゼント選んでやがるぜ…」
「ね?嘘じゃないでしょう?」
「あんなに女の子に興味関心を示さなかったソウがなぁ…」
物陰から覗いていたのはモニカとジーノであった。
ソウが女の子へのプレゼントを選ぶと聞いてジーノは半信半疑ながらもソウを追跡していたのだが、それが真実であることに驚愕する。
「通りかかる女の子がソウをチラチラ見てやがる…あいつは性格に難があるけど容姿は良いからなぁ…」
何せ兄弟揃って容姿端麗だ。
特にソウは長い銀髪に色白の肌、そして鋭い目付きも相俟って非常に目立つ。
「ジーノ?嫉妬は醜いわよ?」
「分かってるって…はあ、俺だって顔は悪くないはずなのによぉ…やっぱり女の子はああいうのに惹かれるのかねぇ…それにしてもテーラちゃんはマジで凄ぇな…あんな枯れていた堅物に興味を持たせるなんてよ」
「そうよねぇ…ソウが女の子にプレゼントなんて昔の私達に言っても絶対に信じないわ」
「だよなぁ!!」
「おい」
「「あ」」
「お前達はここで何をしている?」
冷たい目でこちらを見るソウにモニカとジーノは身の危険を感じた。
「ま、待て待て…落ち着けソウ…話せば…」
この後の2人がどうなったのかは想像にお任せする。
因みにジーノの隣に倒れていたモニカの頭に高級菓子の詰め合わせが置かれていた。
後書き
アクセルヴォルトはロックマン11のスピードギアと仮面ライダー555のアクセルフォームが元ネタ。
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