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ある晴れた日に

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85部分:小さな橋の上でその一


小さな橋の上でその一

                   小さな橋の上で
 花火の次の日。一年G組の面々は相変わらず騒がしい調子で朝食を採っていた。
「お醤油何処だよ」
「ほらよ」
 野本に佐々が醤油の入った容器を差し出す。皆木の厚いテーブルに座しでそれぞれ食べていた。一応男組と女組に分かれているがそれでもかなりぐちゃぐちゃな様子であった。
 そして食べているのも。皆御飯だがそのおかずはそれぞれ違っていた。野本は御飯の上に卵をかけそのうえでめざしを食べているのであった。そして今御飯と卵の上に醤油をかけた。そのうえでその御飯を掻き混ぜる。オレンジがかった黄色に醤油の黒が混ざりそれが米を彩っていく。
 その御飯を口の中に入れ噛む。そのうえでまた言う野本だった。
「醤油濃いな」
「かけ過ぎじゃねえのか?」
「飯真っ黒じゃねえか」
「まずったな。まあいいか」
 だがそれで強引に納得する野本だった。
「やっちまったもんは仕方ねえしな」
「仕方ねえのかよ」
「これはこれで美味いさ」
 自分で自分に言っていた。
「味もな」
「そんなもんかね」
「じゃあよ、野本」
 坂上が野本に声をかけてきた。
「その醤油くれよ」
「ああ、これか」
「こっちはちょっと足りないんだよ」
 見れば坂上の席には菜っ葉の漬物がある。それにはもう醤油がかけられているがそれを足りないというのである。
「醤油がな」
「ああ、ほらよ」
「サンキュ」
 その醤油を受け取る。そうして早速漬物にかけてそれを箸に取って食べはじめるのだった。そのうえで彼は御飯も食べて言う。
「やっぱりあれだよな」
「あれって?」
「どうしたんだ?」
「飯には醤油だよ」
 こう言うのだった。
「やっぱりな」
「まあな。確かにな」
「飯には醤油だよ」
 皆彼の言葉に頷く。見れば皆おかずはそれぞれだがどれも和食系統である。めざしに玉子焼きに漬物、後は納豆、それに皆味噌汁も飲んでいた。
「あとやっぱりこれだよな」
「そうそう、これこれ」
 その味噌汁も飲む。豆腐と揚げ、それにもやしの味噌汁である。それを飲んでいた。
「味噌汁だよな、やっぱり」
「これが最強の組み合わせだよな」
「朝はな」
 そう言い合って話をしている。だがここで話は思わぬ方向に進むのだった。
「もやしもいいけれどな」
「どうしたの、恵美」
「あれね。お芋もいいのよね」
 恵美は味噌汁をすすった後で隣にいる明日夢に述べた。
「じゃがいもとか薩摩芋ね」
「薩摩芋!?」
 それを聞いて顔を顰めさせたのは茜だった。
「お味噌汁に薩摩芋なの!?」
「駄目かしら」
「じゃがいもでしょ」
 彼女が言うのは前者だった。
「やっぱり。お味噌汁にはね」
「あれっ、薩摩芋じゃないの?」
 ところが薩摩芋派も出て来た。それは咲だった。
「お味噌汁には。うちじゃそうよ」
「じゃがいもでしょ」
 しかし茜も引かない。
「薩摩芋はやっぱり天麩羅とかで」
「じゃがいもはコロッケよ」
 二人共何か芋にこだわる。
「お味噌汁にはやっぱりじゃがいもよ」
「薩摩芋って身体にもいいのよ」
「おい、どっちでもいいんじゃねえのか?」
「だよなあ」
 しかし周りにとってはこうであった。皆どちらにもつかない。結局のところじゃがいもでも薩摩芋でもどちらも美味いということには変わりないからだ。
「どっちも美味いしな」
「妙なこだわりだよな。正直言って」
 しかしそれでも二人は言い合いを続けていた。
「じゃがいもはあれよ。マッシュポテトにしてもいいし」
「薩摩芋はおやつにも最高よ」
 今度はこんな話になっていた。
 
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