ある晴れた日に
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80部分:優しい魂よその十五
優しい魂よその十五
「自衛隊って?」
「ああ。陸上自衛隊は野営が多いんだよ」
こう桐生にも話す。
「そういう時にはな。やっぱりな」
「ああ、テントなんだね」
「そういうこと。わかったな」
「うん。それならね」
「テント作るのかなり上手いらしいしな」
「それは当たり前だろ?」
正道は坂上の今の言葉に頷いた。彼も流石に寝る時はギターを持ってはおらず手元に立たせて置いているだけだ。しかしそれは常に持てるようにはしている。
「何せそれが専門職の人達だからな」
「それもそうか」
「自衛隊の人達はな」
「あとあの人達の仕事つったらよ」
男組はそれぞれ話をはじめる。
「災害救助か」
「あとは映画への協力だよな」
何故か皆戦争について話さないのが自衛隊だった。
「他にあるっていえば」
「ゴジラに負けることだよな」
これは流石に格好いい仕事ではなかった。
「それも盛大にな」
「っていうかそれって仕事か?」
「違うんじゃねえのか?」
「ああ、違うか」
言い出した人間が毛布の中で頭を掻いている。それで反省した様子は全くない。
「これは仕事じゃねえか」
「映画の協力はともかくな」
やはりこれが仕事なのだった。
「だったら呼んでくれてもいいのにな」
「陸自の人達をか?」
「ああ、ここにな」
今言っているのは坪本である。
「それでテントを作ってもらってよ。国民が困ってるっていう理由でな」
「幾ら何でもそれは駄目だよ」
加藤が坪本のその言葉に真面目に突っ込みを入れた。
「これも勉強のうちらしいしね」
「テント作るのがか?」
「何でもそうらしいよ」
坪本だけでなく皆にも言っている言葉だった。
「これってね」
「そうだったのか」
「まあテント作るのも面白かったでしょ」
「まあそれはな」
坪本もまんざらではないようだった。
「結構な。楽しかったぜ」
「そうでしょ」
「ああ。さて、と」
ここで坪本は話を変えてきた。
「これからどうするんだ?」
「どうするって?」
「だからな。話だよ」
「話って何がだよ」
「怪談するか?」
野本に対して言うのはこれだった。
「怪談。どうする?」
「あっ?じゃあそうするか」
「怪談か」
野本だけでなく皆もそれに乗ってきた。
「おい親戚」
「何かな」
竹山に声をかけるとすぐに返事が返って来た。
「適当なの話してみろよ、とりあえずな」
「適当なのって?」
「だからな。知ってるだろ」
また親戚に対して言う。
「ネットで調べてな」
「まあね。それじゃあ」
「さて、と」
竹山が話そうとしたところで正道はふと毛布から起き上がってきた。
「ちょっと悪いな」
「んっ!?何処に行くんだよ」
「トイレか?」
「そうだよ、それだよ」
こう皆に言うのだった。
「少し行って来るな」
「そうか。それじゃあな」
「すぐ帰れよ」
「わかってるさ」
皆に返す言葉は少し苦笑いになっていた。
「別に何処かに行くこともないしな」
「女子のテントに潜り込むとかはしねえのかよ」
「馬鹿、そんなことするか」
こう佐々に返す。
「そもそも誰にそんなことするんだよ」
「まあそうだよな」
「それにクラスの女子全員一つのテントか」
「俺達と同じだからな」
見れば随分と大きいテントである。確かに全員入られるものだった。
「それはそれでやらしいけれどな」
「そういえばよ。少年と中森」
「ああ、あの二人か」
「やばい位に仲良くねえか?」
誰かが言い出してきた。
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