ある晴れた日に
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78部分:優しい魂よその十三
優しい魂よその十三
「子供の頃からね。お掃除とかはしっかりしなさいって」
「いいご両親じゃねえか」
「そうね」
これには皆素直に驚くと共に賞賛した。
「そういうの教えるなんてな」
「お嬢様なのにな」
「それが女の子の仕事って言われたのよ」
咲は皆にまた言う。
「ずっとね。だからお家でも毎日やってるよ」
「ピンクハウスの服でか?」
野本が言わなくていい突込みを入れた。
「ひょっとしてエプロンもピンクハウスなのかよ」
「駄目?」
「駄目っていうかよ」
「っていうかそんなあったんだ」
加藤もこれには驚いていた。
「ピンクハウスのエプロンなんて」
「可愛いのが多いわよ」
加藤だけでなく皆驚いているが咲だけは平気であった。
「それ付けてお菓子作ったりお皿洗ったりするの好きなんだけれど」
「それでも何かな」
「想像するのが難しいぞ、おい」
「気持ちいいけれど?ピンクハウスって」
「ベイスターズのはっぴ着るよりも?」
明日夢も明日夢で相当な趣味であった。
「三浦選手のタオルで顔拭いたりするよりもいいの?」
「それ気持ちいいか?」
「負けそうだろ、幾ら何でも」
明日夢にも皆が容赦なく突っ込みを入れる。
「今日も負けてるし」
「うわ、カープに完封負け」
静華と凛が静華の腰にかけてあった携帯の試合結果を見つつ言う。それでも二人もちゃんと掃除はしていた。
「ピッチャーがあれなチームが打てなくなったら」
「やっぱり辛いわね」
「大丈夫よ、明日があるわよ」
明日夢もかなり開き直っていた。
「明日という日がね。あるから」
「あるからっていってもねえ」
「もう九連敗じゃない」
連敗する、弱いチームの常である。
「このままずるずるって」
「百敗?」
実に不吉な言葉であった。
「その浜番長も最近あれだし」
「冗談抜きで横浜ファンって茨の道じゃない」
「何言ってるのよ、極楽道よ」
明日夢はあくまでこう力説する。
「こんなに楽しいことはないわよ。横浜ファンはね」
「あれだけ負けてもかよ」
「こっちもこっちで本当にすげえな」
「はいはい、お話はここまで」
話が丁度終わったところで田淵先生が皆に言ってきた。
「お掃除終わらせなさい。先生もやってるんだから」
「はあい」
「わかってますって」
「わかってたらまず手を動かす」
掃除で言われる言葉の定番であった。
「いいわね」
「わかってますって」
「こっちもちゃんとやってますよ」
「じゃあ早く終わらせるわよ」
今度は江夏先生が皆に言ってきた。江夏先生は左手にバケツを持っている。田淵先生はホースだ。先生達もちゃんと掃除をしていた。
「手分けしてね」
「これ終わったらどうするんですか?」
「後は寝るだけよ」
それしかなかった。
「決まってるでしょ」
「ちぇっ、夜は長いのにな」
「何しろっていうのかしらね」
「怪談でもしたら?」
江夏先生は素っ気無く言う。
「毛布の中に頭突っ込みながらね」
「何か随分リアルなお話ですね」
「それって」
生徒達は江夏先生の今の言葉にまた突っ込みを入れる。
「まあそれしかねえか?」
「他にないものよね」
「猥談でもするか?」
野本がまた言わなくていいことを言った。
「特にこの連中の聞きたいんだけれどよ」
「手前マジでぶっ飛ばすぞ」
春華が半分暴行容疑者の目になって彼に言葉を返した。
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