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ある晴れた日に

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73部分:優しい魂よその八


優しい魂よその八

「ったくよお。何でそうなるんだよ」
「山猫じゃなかったらオオヤマネコだよな」
「そんなとこだよな」
 さらにグレードアップしていた。
「御前六人の中で一番粗いからな」
「マジで家で鶏肉とか魚とか丸かじりしてねえか?」
「鶏も魚も好きさ」
 春華はそれは認めた。
「けれどな。幾ら何でも丸かじりはねえぞ」
「まあそうだよな」
「考えなくてもな」
 その通りだった。本当の猫ではあるまいしだ。しかし春華にそういった雰囲気があるのは確かだった。男組が言うのはこのことなのだ。
「けれど犬よりは猫だよな」
「そうだよな。こいつはな」
「あたしが猫かよ。じゃあこの花火を追いかけるんだな」
 また野本が投げた鼠花火を見る。
「鼠花火も嫌いじぇねえけれどな」
「やっぱり猫かよ」
「動くもの好きっぽいしな」
「動くものもなあ」 
 まんざらではない調子であった。
「まっ、嫌いじゃないさ」
「やっぱそうじゃねえか」
「猫だな、本当に」
「あたしが猫だったらあんた等は何なんだよ」
 逆に男達に返してきた。
「こいつはどう見ても猿だけれどな」
「ああ、どうせ俺は猿だよ」
 指差された野本は開き直ってきた。
「昔から言われてたさ。悪いか」
「僕を豚だって言うしね」
「御前マジで豚じゃねえかよ」
 親戚に対して言い返す。
「猿に豚かよ。何なんだよ」
「あたし竹山には何も言ってねえけれどな」
 野本にだけ突っかかる春華だった。
「おめえだけでな」
「けっ、頭に来たぜ」
「じゃあ何するんだよ」
「何本かくれ」
 こう言って右手を前に出してきた。
「ロケット花火な。いいか?」
「ああ、ほらよ」
 彼女もそれを受けて花火を彼に渡した。
「使えよ。けれどどうするんだ?」
「これをな。こうしてな」
 野本は鼠花火をロケット花火に付けた。そのうえで地面に刺して両方に火を点ける。すると勢いよく空を飛んでそこから空中で鼠花火が騒がしく爆発した。
「どうだよ、これ」
「ああ、そういうやり方もあるのね」
「中々面白いじゃない」
 静華と凛が空中で爆発する鼠花火を見て言う。
「お空にそのまま投げても危ないからね」
「そういう方法やれば別にね」
「そういうことさ。あとこれでな」
 野本は調子に乗ってさらに言いだした。
「これを空じゃなくてもっとすげえ場所に撃ち込むんだよ」
「凄い場所って?」
「ヤクザ屋さんの事務所だよ」
 笑って皆に話す。
「それやってから一目散に逃げるんだよ。ベンツでもいいけれどな」
「御前それ博打よりやばいぞ」
「っていうか死ぬだろ、下手したら」
 坪本と坂上が冷めた目と声で告げる。
「捕まったら南港行きだろ、それは」
「神戸港か?空港の側のな」
「だからよ。俺もやったことはねえんだよ」
 流石にこれはしなかったようだ。
「ツレがやったけれどな。中学校の時のな」
「そいつ生きてるか?今」
「マジで真冬の寒中水泳とかになってねえか?」
「とりあえず生きてるぜ」 
 それは大丈夫だと言う。
「流石に今はやってねえけれどな」
「まあそうだろうな」
「っていうか止めろよ」
 皆でこう言う。
「そんなことよ」
「洒落にならねえだろうがよ」
「花火って危ないものだけれどね」
 桐生は静かに線香花火をやっていた。屈んでそれを一人見ている。
「それでも。流石にそれはね」
「ああ。俺もあれには引いたぜ」
 語る野本の額には実際汗が流れていた。
「死にたいのかよって思ったな」
「怖いな。全くよ」
「絶対にしたかねえな」
「そういえばさ」
 明日夢は爆竹を持っていた。
「この爆竹でもさ」
「どうしたよ少年」
「ただやるだけじゃ変化が欲しい場合あるじゃない」
「ああ」
「それでも蛙とかに仕掛けるのは駄目だけれど」
 実際にそうした遊びもある。お世辞にもいいものではない。
「けれど普通じゃ面白くないって言い出して」
「何かあったの?」
「小学校の時男の子が犬のうんこに爆竹仕掛けたのよ」
 皆にこのことを話す。
「そうしたらどうなったと思う?」
「うんこが爆発?」
「まさかと思うけれど」
「そのまさかよ」
 かなり暗鬱な顔で皆の問いに答えた。
「本当にね。大変なことになってたわ」
「そうだろうな」
「爆発して周りに飛び散ったでしょ」
「ええ」
 その顔のまま皆に答える。
 
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