ある晴れた日に
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726部分:清き若者来るならばその十二
清き若者来るならばその十二
「クリスマスの花を見せたかった」
「成程な」
「それでだったんだ」
「ここまで」
「見えているな」
正道は今度は未晴に声をかけてきた。
「今この花が」
「間違いなく見えてるわ」
彼のその言葉に凛が応えた。
「だから安心して」
「わかった」
「動けるようになったし言葉も出せて」
凛の言葉が続く。
「だから見えてるわ。あんたのその心もね」
「俺の心もか」
「未晴って鋭いんだよ」
今度は春華が告げてきた。
「それこそうち等の考えてることなんてすぐにわかる位にな」
「だから安心していいわよ」
咲もそうだと話すのだった。
「絶対にあんたの考えてることもわかってるから」
「それならだ」
「このまま未晴に見せてあげて」
「このクリスマスローズな」
「是非ね」
五人で正道に話す。それぞれの顔に温かいものを見せてである。
そうしてだった。また未晴が。
ゆっくりであったがそれまで全く動くことのなかった。表情が動いた。
その顔が笑顔になっていった。微笑みにだ。それになったのである。
「笑ってる!?」
「あ、ああ」
「今度は笑ってる」
「間違いなく」
「しかも」
そしてさらにだった。見えていたのである。
その笑顔がだ。花を前にして。そうして。
また未晴の口からだ。こう言ってきたのである。
「ありがとう」
「また喋った・・・・・・」
「笑顔だけじゃなくて」
「また」
「ああ、喋ったんだ」
「また」
未晴のその言葉を聞いて確かに言い合う。そうして。
皆また言うのだった。彼女を見ながら。
「笑顔が戻って」
「また喋って」
「本当に戻ってきているんだ」
「間違いなく」
「今の有り難うは」
そしてだった。正道に顔を向けて言ったのである。その言葉は。
「あんたに向けてだし」
「わかってるよな」
「ああ」
そして正道もだ。皆のその言葉にこくりと頷くのだった。
そうしてだ。彼は言うのだった。
「そうか、本当に俺のことを」
「そうだよ、御前のやってることも気持ちもな」
「全部届いているからね」
「わかった。それならだ」
微笑んだ。彼にしては珍しいことにだ。
そうして微笑んだうえでだ。彼はさらに言葉を続けた。
「俺はこれからもだ」
「ええ、頑張ってね」
「このままな」
「こいつの為にやっていく」
そのことを言うのだった。彼はこのまま進むことをあらためて誓った。未晴は今は動かないし表情も消えた。しかしそれでも彼女は確かに笑い礼の言葉を述べたのである。
清き若者来るならば 完
2010・2・12
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